旅×自転車 記事

【石川県】シェアサイクル「まちのり」で秋の金沢周遊

初めての街を旅する時、レンタカーやバスでももちろんよいのですが、自転車を使ってみるとその街の作りがわかり、親しみがいっそう湧くものです。
最近では世界各国の観光地で主要なスポットに自転車ポートを設置し、ポートごとに貸出・返却可能なシェアサイクルが広がって来ました。

石川県金沢市もその一つ。今回は金沢市の公共シェアサイクル「まちのり」と徒歩を組み合わせ、市内の主要観光スポットをぐるっと回る1日コース(自転車走行距離:約7km)のレポートをお届けします。
東京からは北陸新幹線、大阪からは特急サンダーバードで各約2時間半と、非常にアクセスのよい金沢。この記事でぜひ金沢旅行の予習をしてみてくださいね。

アプリで簡単!シェアサイクル「まちのり」で金沢駅から出発

「まちのり」は、「ドコモシェアサイクル」の仕組みを活用しており、金沢中心市街地・郊外と合わせて69のポート(2021年9月現在)を備え、全てのバイクが電動アシスト付き。

1回ごとに利用する「1回会員」(会費無料)は最初の30分が165円(税込)、以降30分を超えるごとに110円(税込)ずつ追加で利用できます。今回は施設の見学時間が多めなので「1回会員」の仕組みで目的地ごとにポートで貸出・返却利用をしました。

利用方法はいたってシンプルです。自転車本体に記載されたIDをスマートフォンアプリ「ドコモ・バイクシェア」に入力すると、アプリ画面で4桁のパスコードが表示されます。そのパスコードを、自転車本体付属の液晶画面に入力すれば解錠完了です。支払いはアプリ経由でクレジットカードもしくはドコモ払いで行います(1回会員の場合)

この他に、1日借りっぱなしの「1日パス」でも利用可能です。(Web:1,430円・窓口1,650円(いずれも税込))年齢制限はなし・身長145cm以上であれば誰でも利用できるので、家族旅行にもよいですね。ルートや移動時間に合わせて「1回会員」か「1日パス」かを選ぶとよいでしょう。

金沢の観光の起点となる金沢駅の観光案内所で地図やパンフレットを手に入れたら、兼六園口(東口)の並びにある金沢駅東の「まちのりポート」で自転車をレンタルをして、いざ金沢散策へ出発。

まずは最初の目的地、野町・広小路エリアにある妙立寺(みょうりゅうじ)へと向かいます。

武家屋敷を通り、からくり満載の「妙立寺」・にし茶屋街へ

金沢駅から妙立寺へ向かう道中で見学したいのが長町武家屋敷跡界隈。繁華街エリアの香林坊から西へ向かうと入り組んだ路地に入ります。加賀藩の重職を歴任した野村家の邸跡をはじめ、江戸時代の面影を垣間見ることができます。

武家屋敷跡から約1km、犀川大橋を渡り妙立寺近くのローソン金沢野町1丁目店ポートで一旦自転車を返却します。
レンタルの課金は30分ごとなので、お寺や街の見学時間が長くなりそうな時は一時駐輪ではなく、目的地近くのポートで一旦返却する方がお得です。

妙立寺は「忍者寺」の異名をもつ独特な建築で有名なお寺です。外見は2階建てですが、実は内部は4階7層建て、部屋は23室、階段は29もあります。敵が攻め入って来た有事の際は、地下道が金沢城へと続く非常用通路になっているという伝説のある井戸をはじめ、隠し階段や落とし穴にもなる畳に埋め込まれた賽銭箱などのからくりが盛りだくさんです。
所要時間40分でお寺の方が丁寧に案内してくれます(電話にて要事前予約)。

お寺の拝観後は徒歩で「にし茶屋街」へ。
「ひがし茶屋街」「主計町茶屋町」と並ぶ金沢三茶屋街の一つで、加賀藩の武士も通ったという街並みが今でも残っています。

茶屋街の造りを無料で見学できる資料館や、甘納豆や最中、らくがんといった和菓子のお店が立ち並んでいます。
カフェ「MAMEノマノマ」でテイクアウトした最中は、「賞味期限6分」のキャッチコピーがふさわしいサクサクの最中に、甘さ控えめのあんことマスカルポーネチーズが組み合わさった新感覚の和菓子でした。

ランチは正統派の海鮮丼 or B級グルメ「ハントンライス」で

にし茶屋街のポートで自転車をレンタルし、ランチへ向かいます。金沢は正統派の和食や海鮮から、B級グルメまで新旧さまざま揃い、美味しいものには事欠きません。

海鮮を選ぶならいったん金沢駅方面へと戻り、近江町市場(おうみちょういちば)へ。2021年で開設300年を迎えた北陸の老舗市場で、魚介、青果、お惣菜など約180店がひしめき、まさに金沢の台所です。

近江町市場には飲食店も多数あり、中でもむさし口そばの「いきいき亭近江町店」は特に人気店。
甘エビ、ブリ、ヒラマサ、ノドグロといった北陸の新鮮な魚介類がたっぷり乗った「いきいき亭丼」は満足間違いなしの一皿。
朝7時から営業しており、休日は営業開始と同時に行列ができるほど。前泊しているならぜひ早起きして、比較的待ち時間の少ない朝がおすすめです。
生牡蠣やホタテを店先で購入しその場で食べられる鮮魚店も多数あり、地元市場ならではのフレッシュな味わいを堪能できますよ。

B級グルメを選ぶなら、香林坊エリアの片町にある1957年から続く老舗洋食店「グリルオーツカ」の「ハントンライス」がおすすめ。

「ハントン」とは「ハンガリー」の「ハン」に、フランス語でマグロを表す「トン」が組み合わせったもので、オムライスの上にきゃチャップと自家製タルタルソースをかけ、上にカジキマグロのフライ、小エビフライを乗せたもの。

ケチャップライスの上にさらにケチャップがかかっており、クリーミーなタルタルソースと絡み、濃厚な味わい。味もボリュームも満点な一皿なローカルフードです。

金沢21世紀美術館でアートな午後のひととき

ランチでお腹を満たしたら、再び自転車に乗って、広坂エリアへと向かいます。百万石通りには「石川四高記念文化交流館」などレトロな建築物が並び目を引きます。

広坂エリアの目玉はなんと言っても「金沢21世紀美術館」です。

2021年で開館16周年、毎年250万人前後が訪れる金沢を代表する人気スポットです。無料で楽しめる常設の屋外作品に、館内では年間を通じさまざまな企画展が催されています。
水中にいる感覚が味わえる人気作品「スイミング・プール」の内部見学は、美術館のWebサイトから事前予約をしておくとスムーズです。
自転車で街並みを楽しみ、非日常のアート空間に浸ることでリフレッシュすることができるでしょう。

兼六園・金沢城公園で秋を満喫

「金沢21世紀美術館」から兼六園・金沢城公園はすぐ。
ほとんどの主要観光スポットには「まちのり」のポートがあり、アプリを通じ貸出・返却可能台数も確認することができるので困ることはありません。
兼六園のポートで返却したら、兼六園〜金沢城公園内を徒歩で散策します。

兼六園は岡山の後楽園、水戸の偕楽園と並ぶ、日本三名園の一つ。前田藩の歴代藩主たちが長い年月をかけて丁寧にしつらえた庭園で、「宏大(こうだい)・幽邃(ゆうすい)・人力(じんりょく)・蒼古(そうこ)・水泉(すいせん)・眺望(ちょうぼう)」の六勝を兼ね備えていることことが名前の由来と言われています。

11万4000㎡もの広さがありぐるっと歩いて約90分。冬の風物詩「雪吊り」はもちろんですが、季節ごとに異なる花々を楽しめ、秋はモミジの紅葉が楽しめます。

隣接する「成巽閣(せいそんかく)」も時間が許せばぜひ立ち寄りたいスポット。
書院造り・数寄屋造りの2つの様式を組み合わせた前田家の奥方御殿は国の重要文化財にもなっており、群青の間、格子天井やドイツ製のガラス、アメリカのシャンデリアなど優美な装飾は見ものです。
鶯張の縁側と庭園も美しく心洗われる空間です。

兼六園の桂坂口からつながる金沢城公園では、2001年に古文書や古絵図をもとに復元された菱櫓・五十間長谷・橋爪門・続櫓の内部を有料で見学できます。
当時の技術を用いて忠実に復元した過程を紹介するビデオを見ていると、その気の遠くなるような作業工程に敬服するばかりです。

歩き疲れたら、園内の玉泉院丸庭園を望む茶室、玉泉庵で一服。上生菓とお抹茶をいただくことができます。
この日は、九谷焼のお皿にに乗った秋らしい栗を使ったねりきり「峰の秋」をいただきました。

前田利家ゆかりの尾山神社へお参り

最後の目的地は前田家ゆかりの尾山神社です。玉泉庵横の「鼠多門(ねずみたもん)」からつながる橋を徒歩渡って直接行くことができます。

尾山神社は、前田利家と正室お松の方を祀った神社で、五色のステンドグラスに彩られた和洋折衷の神門は異国情緒が漂います。上部に取り付けられた避雷針は日本最古のものと言われているそう。

長らく徒歩が続きましたが、ここで最後の自転車レンタル。尾山神社のポートで借りて金沢駅へと戻ります(約1.6km)。

金沢駅でゴール!駅中はご当地グルメも充実

尾山神社から金沢駅までの道中、近江町市場に立ち寄って海産物のお土産を買うのもおすすめです。
名物のノドクロや、シーズン中は香箱ガニを全国発送してくれる鮮魚店も多くあります。

時間に余裕があれば、夕暮れ時の主計町(かずえまち)茶屋街・ひがし茶屋街エリアに立ち寄ってみるのもよいでしょう。

出発点と同じ金沢駅東のポートで自転車を返却したらゴールです。
金沢市内の主要スポットをぐるっと一日自転車で回ることで、金沢の地理もだいぶ掴めたはずです。

金沢駅構内では、石川県観光PRキャラクターであるだるま人形風の「ひゃくまんさん」が愛嬌のある顔でお出迎え。

駅ビル「金沢百番街あんと」では地元銘菓や海産物土産が豊富に揃い、電車に乗る直前までお土産選びを楽しめます。
また、同じビル内には金沢の練り物を使った「金沢おでん」を楽しめるカウンターおでんのお店「かなえきのちくわ」、地元食材の甘海老をふんだんに使った「甘えび香味ラーメン」を食べられるラーメン店「らうめん侍」などもご当地グルメも充実。
徒歩&ライドでの空腹をぞんぶんに満たしてくれるでしょう。


まとめ

金沢を訪れるのも、ドコモシェアサイクルを使うのも初めての旅でした。
行く前はガイドブックを読み込んでも今ひとつ地理感覚が掴めなかったものの、現地で自転車を使い1日走る中で徐々に街の顔が見えて来ました。
「ここは地元の人たちの買い物エリアなんだな」「ここの路地はおしゃれな雑貨屋さんが多いな」「こっちは昔ながらの民家が並んでいるな」など、街のさまざまな表情を垣間見ることができた気がします。

シェアサイクルを利用していた観光客は、20代の若者グループから60代と見られるご夫婦まで非常に幅広かったのが印象的でした。
お天気さえ良ければ自分の好きなコースとペースで自由に回れ、その街の日常風景にもふれられるシェアサイクルの旅。

次の旅の目的地でぜひ、みなさんも利用してみてはいかがでしょうか。

コース紹介

執筆:Ayaka

2011年に社会人になると同時に始めた自転車で「自転車×旅」の魅力にハマる。
ニュージーランドでのワイナリーロードレース、タイの寺院巡り、ドイツ古城巡り、インドネシアでの遺跡巡りなど世界各地で自転車旅を催行し、その様子を雑誌『Cycle Sports』に寄稿。
2017年には自転車ツーリズムを探究しにオーストラリアへ留学。現地の様子を『Cycle Sports.jp』にて『G’day, Australia! 〜ブリスベンからの自転車だより』として1年間連載。帰国後は英語教材編集者の傍ら、自転車イベントで通訳・MC・PR担当等を務める。
座右の銘は「好きにまみれろ、夢中で生きろ」。

記事内情報

金沢市公共シェアサイクル まちのり

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