旅×自転車 記事

【大阪府】初秋の大阪港で異国情緒を探すライド

夏の暑さも少しずつ和らぎ、気づけば秋の空に。自転車で走るのに気持ち良いシーズンがまたやってきました。
まずは近場で足慣らしということで、大阪・梅田発着 大阪港エリアを中心にした約30kmのライドのレポートをお届けします。水都大阪の歴史にふれつつ、なかなか海外に出られない今だからこそ、海外の趣を身近に感じられるスポットを探してみました。

梅田発、安治川隧道経由でベイエリアを目指す

曽根崎新地のサイクルアパレルブランドのショップ、Rapha Osakaからスタート。
ベリエリアを目指すのには、大通りの2号線からなにわ筋(府道41号線)に入り、堂島川沿いを行くのがおすすめです。大阪国際美術館、リーガロイヤルホテルなど堂島エリアらしい建物の景色を楽しみながら、2.5kmほど走れば大阪市中央卸売場です。
この日は日曜日だったので物静かでしたが、川沿いに立ち並ぶ広々とした市場に「天下の台所」大阪を感じます。

市場から1.2kmほど進むと、ビルの1階の大型エレベーターの入り口から、人々が自転車ごと乗り降りしている景色に出会いました。
「安治川隧道(あじがわずいどう)」、大阪市西区と此花区を結ぶ日本初の沈埋トンネルの入り口です。川底に埋められたトンネルが完成したのは昭和19年(1944年)のこと。
戦時下の被災を免れたトンネルは、自転車・歩行者通行可で、令和の現在も地元の人々の生活道路として活躍しています。
大型のエレベーターで地下約3〜4階の深さまで自転車と共に降りると、そこは川底。幅約2.4mの至近距離で対向の人とすれ違いながら歩く全長約80mの川底のトンネルは、どこかひんやりとしてまるで秘密の通路を通っているかのような探検感を味わえます。

レトロなアメリカへタイムリップ:大阪築港・赤レンガ倉庫

安治川隧道を越え、阪神なんば線沿いに1.7kmほど漕ぎ進めれば巨大なUFOのような屋根が目印の京セラドームです。

ドームをぐるっと周回してその大きさを実感したら、さらにそこから5kmほど、みなと通(国道172号線)沿いを大阪港・天保山方面に向かったところにあるのが大阪築港・赤レンガ倉庫です。

大正12年(1923年)築の住友倉庫をリノベーションし、アメリカのクラシックカーを中心に展示した「GLION MUSEUM」が2015年にオープン。
映画『ゴッドファーザー』でおなじみのキャデラックや、堺市のコレクションであるBMWヒストリックカーなども見ることができます。

施設内にはステーキハウスやフレンチレストランもあり、シックで大人な雰囲気。ぜひライド以外でも、おしゃれをしてゆったりと訪れたいスポットです。
神奈川県出身の私は「赤レンガ倉庫」というと横浜が真っ先に思い浮かびますが、雑貨やカフェ、シアターが入る横浜のそれとはまた一味違う、大阪の港の倉庫は新鮮でした。


住宅街の可愛いトラットリアで味わう窯焼きピザ

赤レンガ倉庫でレトロなアメリカの雰囲気に浸ったら、お待ちかねのランチに向かいます。

大阪港よりも手前の朝潮橋エリアまで1.5kmほど戻り、八幡屋商店街脇の住宅街の間にある Pizzeria e Trattoria Ciao! でランチです。
お店の入り口には薪窯付きのカラフルなキッチントラック、高く積まれた薪。その奥に民家の1階を改装したトラットリア(軽食屋)という店構え。
このこじんまりとした感じが、隠れ家的な雰囲気を出していてそそられます。色とりどりのエスプレッソカップが飾られた店内は本場イタリアの街角に来たかのような雰囲気。

この日はピッツァマルゲリータとチーズソースのペンネを注文しました。
ナポリ風の薄い生地は耳まで美味しい!少し汗ばんだ体に、トマトの酸味とチーズの塩気は格別で、どちらも美味しく平らげました。

「日本一低い山」天保山と渡舟

お腹を満たしたら、午後は再び大阪港方面へ。
お目当ては対岸の桜島(岸壁間400m)を結ぶ天保山渡船です。天保山は山といっても標高4.53mで「日本一低い山」の一つとして知られているのですが、これも実は水都大阪と関係があります。
江戸時代、安治川の開削で堆積し、航路に支障を与えていた土砂を整備するために、幕府が延べ10万1,200人を動員し「御救大浚」と呼ばれる大工事を行いました。その時に土を盛り上げたものが出船と入船の目標となり、幕府が「目標(めじるし)山」と命名、それがのちに「天保山」と呼ばれるようになったそうです。整備された公園の一角には、当時の様子を描いた浮世絵の壁画に説明が添えられています。

そして、この壁画に描かれているのが、大阪市の市章のもとになった「澪標(みおつくし)」。
水路の標識を表す杭で、大阪府の繁栄は「水運と出船入船に負うところが多い」ということから、港にゆかりの深いこの澪標が、明治27年(1894年)、大阪市の市章になったのだそう。

そして、この渡船は大阪港の繁栄を目指し、大阪市により港湾振興策の一環として明治38年(1905年)に開設されたもの。
現在は市の建設局が運営しており、無料で乗船できます。運行ルートは開設当時とは異なるものの、自転車もそのまま積み込むことができ、現在でも一日約600人が利用する市民の足です。

大阪港エリアから桜島のユニバーサルスタジオジャパン(USJ)に出勤する外国人スタッフの方の姿も見られ、船内は多国籍な雰囲気です。
船上で風を感じながら、自転車と共に望む梅田方面のビル群は、陸上でサドルの上から見るのとはまた一味違います。

江戸時代から続く水都大阪の歴史を感じつつ、約3分間のショートトリップでUSJのある桜島へと渡っていきます。

気分はハリウッド!? 桜島でUSJの雰囲気を味わう

渡船を下船したらそこは桜島、ユニバーサルスタジオジャパンでお馴染みのエリアです。

広々とした道路の両脇には椰子の木々と大きなホテルが立ち並び、水都大阪の雰囲気から一転、海外リゾートのムードに。ユニバーサルシティ駅付近ではハードロックカフェも見え、気分だけでもハリウッド!? USJのモニュメントの前で撮影をしているとサイクルジャージ姿なのにもかかわらず、クルーの方が「よろしければお撮りしましょうか?」とにこやかに声をかけてくださり感激でした。

野田エリアで思いがけず「経営の神様」に遭遇

桜島エリアでハリウッド気分を味わったら、そのまま陸路で梅田へと戻っていきます。

途中、野田阪神駅前付近の信号待ちでふと見上げたら「松下幸之助創業の地記念碑の公園→」と書かれた看板が。
自転車での信号待ちには思いがけない発見と寄り道のヒントが待っているものです。
これは寄らねばと思い、脇道へ入り住宅街を進むこと約300m、「大開公園」と書かれた公園に行き当たりました。
公園の角には藤棚があり、その下で「松下幸之助創業の地」と掘られた記念碑がどっしりと佇んでいます。

学校や住宅街の中にある一見普通の公園になぜ?と思いきや、大正7年(1918年)に松下幸之助が東成区猪飼野から引っ越し、松下電気器具製作所を創立したのがここ、大開だからなのだそうです。
近くには松下電器製作所工場跡や創業の家などもあるので、「経営の神様」の足跡を辿る散策もまた楽しそうですね。

ライドのシメはオセアニアスタイルのコーヒーで

野田阪神駅前を越えて2号線沿いに2kmほど走り、スタート地点のRapha Osakaに戻ってきました。

サイクルアパレルがメインのお店ですが1階部分にはカフェも併設。ここに来るといつも「フラットホワイト」を頼まずにはいられません。
フラットホワイトとは、エスプレッソにきめ細やかに泡立てたスチームミルクを注いだもので、オーストラリアやニュージーランドでポピュラーなコーヒー。
エスプレッソとミルクがよく混ざり合ったまろやかな味が、オーストラリア留学中、ライド後に仲間とカフェで自転車談義をよくした思い出を蘇らせてくれます。スタッフの方曰く、自転車には乗らないけれど、ここのコーヒー目当ての常連客の方もいらっしゃるのだとか。

ぜひライドでも、お買い物でも、味わって欲しい一杯です。

コース紹介

まとめ

「大阪らしい景色」というと、通天閣や道頓堀を想像しがちかもしれませんが、大阪は「水都」としての顔も昔から持っています。今回のルートで通った安治川隧道や天保山の渡舟も水運が発達した大阪ならではのインフラでしょう。

また、今回はアメリカ、イタリア、オセアニアと、目で見て、舌で味わって、異国情緒にもふれるライドになりました。この秋はぜひ、身近な外国を探してライドに出てみてはいかがでしょうか。きっとあなたの五感に新鮮な非日常の刺激を与えてくれるはずです。

記事内情報

安治川隧道
https://www.city.osaka.lg.jp/konohana/page/0000001459.html

天保山渡船場
https://www.city.osaka.lg.jp/kensetsu/page/0000011249.html

「松下幸之助創業の地記念碑」
https://www.city.osaka.lg.jp/fukushima/page/0000000858.html

執筆:Ayaka

2011年に社会人になると同時に始めた自転車で「自転車×旅」の魅力にハマる。
ニュージーランドでのワイナリーロードレース、タイの寺院巡り、ドイツ古城巡り、インドネシアでの遺跡巡りなど世界各地で自転車旅を催行し、その様子を雑誌『Cycle Sports』に寄稿。
2017年には自転車ツーリズムを探究しにオーストラリアへ留学。現地の様子を『Cycle Sports.jp』にて『G’day, Australia! 〜ブリスベンからの自転車だより』として1年間連載。帰国後は英語教材編集者の傍ら、自転車イベントで通訳・MC・PR担当等を務める。
座右の銘は「好きにまみれろ、夢中で生きろ」。

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