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【オーストラリア】真夏のクリスマスマーケット散策ライド

日本のクリスマスと言えば寒い冬のイメージですが、南半球のオーストラリアではクリスマスは真夏のシーズンです。
サーフィンやビーチで日光浴と海辺で過ごすのはもちろん、街中・郊外問わずランニングやサイクリングなど、人々がアクティブに過ごす様子が見受けられます。
そして、クリスマスの風物詩であるクリスマスマーケットも、12月になると毎週末のように各地で開催されています。
ブリスベン市の南に隣接するローガン市にある Kingston Butter Factory Cultral Precinct のクリスマスマーケットを訪ね、30kmほど緩やかに走ってきました。

スタートはショッピングセンターから


ブリスベンの市内中央から南へ約30km、ローガンの Parkridge Shopping Centre からスタートします。
日本と違いコンビニの少ないオーストラリア。街中では駅構内やバス停の付近にありますが、郊外では独立型店舗はほとんどなく、ガソリンスタンドと併設していることが大半です。
反対に郊外に多いのは大きな駐車場や駐輪スペースを備えたショッピングセンターです。
郊外を中心にライドをする場合は、スーパーマーケットで水や補給食を購入するのがおすすめです。

オーストラリアの大手ショッピングセンターの一つ Woolworths(ウールワース)では、ナッツやシリアルバーなどライドの補給食も充実しています。
Park Ridege Shopping Centre の近くには州立高校も併設しています。
School Zone の表記を見たら、注意して走行しましょう。
この標識の場合は「学校がある日は午前7-9時及び午後2-4時、車両は時速40km制限」の意を表しています。

オーストラリアならでは!?目印となるスポットを頼りに走る

オーストラリアでの道路標識は、ランドアバウト(ロータリー)や、大きな分岐点にこそ方面を表す標識はあるものの、日本のように信号ごとに名称・標識は付いていません。
「〇〇ストリート」「〇〇ドライブ」「〇〇ロード」といった道の名称や「〇号線」といった道路番号が目安になります。

とはいえ道幅も標識の間隔も広いのがオーストラリアの道路。
自転車で走る時は、分岐となる通りの名前はもちろんですが、分岐点にある施設などを目印に辿って行くと初めてのルートでも迷うことが少ないでしょう。

Park Ridge Shopping Centre から64号線を真っ直ぐ西に進み、最初の目印となるのは5.3km先の216 Coffee。個人経営でやっているドライブスルーのカフェです。

のぼりの「CUPPA」は 英・豪の口語で「1杯の紅茶・コーヒー」のこと。 a cup of tea の音が縮まったものだそう。コーヒーが人気のオーストラリアでは非常によく使う英単語です。
216 Coffee の先にある突き当たりのガソリンスタンドを左折し、59号線に入ります。

オーストラリアのガソリンスタンドでよく見かけるのがパイ専門店の Pie Face です。2003年にシドニーで創業し、日本でも浅草や京都駅構内に店舗があります。
小腹が空いたら立ち寄ってみるのもよいでしょう。
59号線を5km北上すると次の分岐点に到着です。
ここでの目印はビビッドな黄色の蛍光色が目を引くペットショップ Marsden Pet & Produceです。

ちなみにブリスベン・ローガンのあるクイーンズランド州では犬・猫の店頭販売が州法で禁止されています。(シェルター等動物保護施設で保護された動物の販売は除く。)
そのため「ペットショップ」と名の付くお店でも、金魚・熱帯魚やハムスターといった小動物は売られていますが、犬・猫については餌やケア商品のみの取り扱いとなります。
ペットショップの向かい側の一角には Lancaster Park があります。

12月初旬には白いバラが一斉に開花していました。

要所要所に自転車・歩行者専用道の標識も。ブリスベンだけでなくローガンでも自転車専用道や車道での自転車レーンの拡充が進められています。

Marsden Pet & Produce と Lancaster Park の分岐点を左折し95号線を3kmほど走り、電車のKingston駅方面を目指します。
道沿いにある黄色に赤字の「XXXX」看板が目を引きます。これは Four X(フォーエックス)と呼ばれるブリスベン発祥のビールブランドで、オーストラリア全土でもポピュラーなビールです。

Kingston駅から東へ300m行けば、目的地である Kingston Butter Factory Cultural Precinct に到着です。

真夏のクリスマスマーケットを散策

Cultural Precinct は「文化地区」の意味合いですが、なぜここが Butter Factory なのかと言うと、かつてこの地にバター工場があったからです。
1930年代の最盛期には週に40〜50トンのバターを製造していました。ここで生産されたバターが、近くの Kingston駅からクイーンズランド全土に出荷されていた、というわけですね。

1988年に市の200周年記念事業として選ばれ、コミュニティアートセンターに改築、2022年に再整備され、公園やカフェも併設する現在の Cultrual Precinct となりました。

施設の入口には駐車場に加え駐輪スタンドも設けられています。自転車を停めて散策してみましょう。

12月の週末のこの日はクリスマスマーケットが開かれていました。
ヨーロッパのクリスマスマーケットでは小さなロッジ風の建物のお店が並ぶイメージですが、オーストラリアのマーケットは自前の簡易テントを立て、手作り商品を売っているお店が一般的です。

庭に飾るオーナメントや、手作りのバッグ、アート作品など、個性的なお店が並びます。


奥の芝生エリアには、ドイツソーセージのホットドッグ、オランダ風パンケーキなどを売るフードトラックも並んでいます。

クリスマスマーケットの定番と言えばスパイスを効かせたホットワインですが、12月のオーストラリアはなにぶん真夏。売られているドリンクもフルーツジュースなど冷たい爽やかなものが多いです。 

オーストラリアの多様性を表す Butter Factory Museum

マーケットを一通り見たら、赤煉瓦の建物に入ってみましょう。

これがかつてバター工場だった建物で、現在は Butter Factory Museum として展示やミニシアターを備えた文化施設(入場無料)になっています。
入口にはオーストラリア国旗の他、オーストラリア原住民であるアボリジニの民族旗も掲げられています。日本語を含む各国の言語で Welcome の文字が並びます。

ミュージアムのテーマは “Nourish: Food Stories Connecting People, Cultures and Contries”(育む~人・文化・国をつなぐ食にまつわる物語)。

アジア食料品店やローカルなカフェなど「食」をテーマに、現在この地域で働き、暮らす人々の背景に焦点を当てたエピソードが紹介されています。
また、「ファッション」をテーマにした地域の人々のスナップ写真から見える、民族的背景や個人の趣味趣向の多様性を象徴する展示もあります。

自分達が暮らす場所にどのような歴史があるのか、そして現在どのような姿になっているのか、その変遷や「今」を伝える “Living Muesum” という市の取り組みになっています。

個性的な壁紙はよく見るとバター工場が描かれています。地元のアーティストによりデザインされたそう。

 バター工場の歴史がわかる Heritage Museum

同じ敷地内には Heritage Museum という博物館もあります。
入口にはクリスマスツリーとレトロな自転車が飾られていました。

市のボランティアスタッフにより運営されていて、Gold coin donation(硬貨の寄付。通常2ドル程度)をして見学します。

サイクルジャージ姿の私が、受付のオージーの年配男性に I came here by bike.(自転車で来たんです。)と伝えると、 Did you come here by motorbike, or push-bike? と聞かれました。
motorbike はオートバイのこと。push-bike はあまり日本では聞き慣れない単語ですが、イギリス系の会話表現で「自転車」を指します。自動ではなく自分で漕ぐ(push)するから、と言うことでしょう。

さて、先の Butter Factory Museum が「今」を伝える展示ならば、こちらは言わば歴史展示です。

バター工場時代の写真、実際に使われていた道具、当時の車、おもちゃ、タイプライターからウエディングドレスまで幅広く揃えられています。
当時の人々の生活や流行に想像が膨らみます。

この時季ならではのオーナメントの展示も。トナカイもどこかレトロですね。

スタッフの方と談笑を楽しんだ後、向かいのカフェのテラス席で一休みしました。

黒板の手描きのメニューが可愛らしいですね。

オーストラリアのライドではやはりコーヒーは欠かせません。
カフェの定番はバナナブレッドやアーモンドクロワッサンですが、珍しくスコーンがあったのでチョイス。

往路と同じルートで帰路に就きました。

なお、観光地や文化施設のパンフレットは英語の勉強にもなるので、ぜひサイクルジャージのポケットに入れて持ち帰るのをおすすめします。

ブリスベン市内のクリスマス模様

ローガンと同じく、ブリスベン市内も11月末から一気にクリスマス色が強まります。
【オーストラリア】e-bikeシティサイクル Beam でブリスベンをポタリング
でご紹介した、ブリスベンシティの目抜き通りクイーンストリートモールには、サンタクロースやトナカイなどのさまざまな巨大オーナメントが登場。


装飾は毎年変わるので、観光客はもちろん住民も楽しみにしています。
シティホールの時計台の前には22mの大きなツリーが登場します。
クリスマスの期間は毎晩プロジェクションマッピングが投影され、誰でも無料で楽しむことができます。

ツリーの前にはサンタクロース宛の専用郵便ポストもあります。
投函するとサンタクロースから返事が届くかも…!?

川沿いのサウスバンクエリアは、ビビッドなピンク色が美しいブーゲンビリアのトンネルにイルミネーションが施されています。
公園内のステージではサンタクロースやエルフが登場する子ども向けのクリスマスショー(有料)も上演されます。

無料の人工ビーチにはスクリーンが掲げられ、プールに入りながらのクリスマス映画の上映会もあります。
まさに夏のクリスマスならではの催しですね。

コース紹介

距離:約30km

まとめ

北半球の日本とはまた一味違う、南半球オーストラリアの真夏のクリスマス。
北半球出身の人間には少し不思議な感じもしますが、夏ならではで人々がアクティブになり、どこも活気に溢れていています。
「恋人」や「ロマンチック」よりも「家族」「友達」「アットホーム」といった言葉がどこか似合う印象です。
ぜひ一度、オーストラリアでのクリスマス散策ライドも体験してみてはいかがでしょうか。

執筆:Ayaka

2011年に社会人になると同時に始めた自転車で「自転車×旅」の魅力にハマる。
ニュージーランドでのワイナリーロードレース、タイの寺院巡り、ドイツ古城巡り、インドネシアでの遺跡巡りなど世界各地で自転車旅を催行し、その様子を雑誌『Cycle Sports』に寄稿。
2017年には自転車ツーリズムを探究しにオーストラリアへ留学。現地の様子を『Cycle Sports.jp』にて『G’day, Australia! 〜ブリスベンからの自転車だより』として1年間連載。帰国後は英語教材編集者の傍ら、自転車イベントで通訳・MC・PR担当等を務める。
2022年4月、オーストラリア クイーンズランド州ブリスベンへ移住。
座右の銘は「好きにまみれろ、夢中で生きろ」。

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