旅×自転車 記事

【和歌山】城ありヨーロッパの街並みあり 秋の和歌山〜海南ライド

熊野古道、白浜、アドベンチャーワールドのパンダなどで有名な和歌山ですが、大阪から日帰り輪行で行ける西海岸側の和歌山市〜海南市エリアにも、史跡や海の景色を楽しめるスポットがたくさんあります。
大阪からJR紀州路快速で輪行し、JR和歌山駅スタート、JR海南駅ゴールで走った約25km(獲得標高165m)のライドレポートをお届けします。

JR和歌山駅からスタート

大阪から和歌山の西海岸側へのアクセスには、JR紀州路快速を使うと便利です。JR京橋駅からだと直通で約1時間40分です。

JR和歌山駅を降りてすぐの、駅地下の観光交流センターには「わかちかレンタサイクル」もあります。今回は海南市まで南下するので輪行で持参しましたが、和歌山城周辺の市内観光だけならレンタサイクルもよいですね。シティサイクルタイプの他、クロスバイクのレンタルもあり、いずれも1日600円でレンタル可能です。

史跡 和歌山城へ登城

和歌山駅前からけやき大通りを通り約2.2km先の和歌山城を目指します。

和歌山城は1585年(天正13年)、羽柴(豊臣)秀吉が紀州を平定し、弟の秀長に命じて岡山(虎伏山)の峰に建立したもの。以降、桑山氏、浅野氏、紀州徳川家の手で整備が進められました。お堀から見える天守閣は、今でも高台から街を見守っているようで、その気品漂う姿にほれぼれします。

お堀沿いにあるわかやま歴史館近くの駐輪場に自転車を止め、紅葉渓庭園から城内へと入っていきます。
中でも印象的なのがお堀に斜めにかけられた「御橋廊下(おんはしろうか)」。二の丸と西の丸を、お殿様と付き人、奥女中が行き来するための廊下で、現在は復元されたものを実際に渡ることができます。
外から見えないよう壁と屋根が設けられた部屋のような造りでありながらも、斜めになっているという不思議な空間です。廊下橋としては全国的に珍しいものだそう。

自転車よりずっと脚に来そうな、長い長い石段を登りいざ天守閣へ。
木造の3階からは、連なる山にきらめく海、両方の魅力を備えた和歌山ならではの眺望を楽しめます。

時間があれば、お城の南側、三年坂通りを挟んで向かいにある和歌山県立美術館、県立博物館に立ち寄るのもよいでしょう。和歌山ゆかりの名宝や美術作品に出会えます。

ランチは和歌山名物 天かす入りラーメン&早すし

お城散策でお腹が空いたら、三年坂通りを和歌山港方面へと走ること約1.3km、和歌山ラーメンを求めて玉林園グリーンコーナー築地橋店へ。

店内に入るといきなり入り口で「グリーンソフト」なる抹茶ソフトクリームの冷凍庫が。
「ラーメン店なのになぜ?」と思いきや、実はグリーンコーナーは1854年(安政元年)創業の老舗茶店・玉林園が展開するラーメン店。
お茶屋さんだから「グリーン」なんですね。和歌山市内のショッピングモールなどにも展開している、和歌山県民の味として60年以上愛される名店です。この日は名物の天かす入りの「天かけラーメン」、一口サイズの押し寿司「早すし」をいただきました。なんでも和歌山では、さっぱりとした押し寿司が、醤油ラーメンに合うとのことで、ラーメン店では定番の食べ合わせだそう。たしかに、ラーメンのお供にはチャーハンももちろんよいけれど、酢飯なら胃が重たくなりすぎずによいかも…!

メインのラーメンは澄んだ醤油スープがまろやかで、素朴な味わいでした。シンプルだからこそ飽きが来ず、地元の人たちの定番になっているのでしょう。

そしてシメはグリーンソフトです。良質な国産抹茶を使いながらもサラッとした味わいで、醤油スープのあとの口直しにピッタリでした。オリーブオイルをたっぷり使ったイタリアンのデザートにジェラートを食べるような感覚…に近いでしょうか。新たな食べ合わせの発見でした。

雑賀崎で和歌山の絶景に出会う

グリーンコーナーのある築地橋からは、国道15号線沿いに和歌の浦方面へと進みます。

和歌の浦は、「絶景の宝庫 和歌の浦」として日本遺産にも認定されており、遠浅のビーチ、日本庭園、寺社仏閣などの史跡が詰まったエリアです。

まずは築地橋から約5.6km先の雑賀崎(さいかざき)を目指します。海岸線に近づくに連れてアップダウンが多くなり、早すし、ラーメン、ソフトクリームをたっぷりと堪能したお腹には、食後のよい運動になります。

雑賀崎は、瀬戸内海国立公園の指定特別地域で、雑賀崎漁港周囲の丘陵部に家々が建ち並ぶ風景から「日本のアマルフィ」とも呼ばれています。

見どころは多々ありますが、この日立ち寄ったのは番所(ばんどこ)庭園。和歌山城から最も近い紀州藩の海の見張り番所で、岬になった地形から「番所の鼻」とも呼ばれています。高台から行き交う漁船を眺めながら、風光明媚な景色を楽しめます。 脚に自信がある方は、番所庭園からすぐの激坂を登り雑賀崎灯台に立ち寄ってもよいでしょう。水平線を望み、地球の丸さを実感できるスポットです。

またまだある史跡 紀州東照宮、不老橋

雑賀崎からは、車道上に青い三角矢印で示された和歌山サイクリングロードをたどりながら和歌浦港へと向かいます。分岐点でも「40m先→」(右折を示す右矢印)のように前もって示してくれているので都度立ち止まってスマホで地図アプリを確認せずとも、安心してペダルを漕ぎ続けることができます。

雑賀崎と同様、和歌浦エリアにもまた、玉津島神社、和歌浦天満宮など由緒ある寺社が多く立ち寄りたいスポットは多々。この日は「関西の日光」とも呼ばれる紀州東照宮にお参りし、江戸時代のアーチ型石橋として珍しい不老橋に立ち寄りました。 ちなみに、和歌山城の石段もなかなかですが、紀州東照宮も急勾配の石段の上に社殿があります。
今回のコースを観光メインで走りたい方は、スニーカー、もしくはビンディングシューズならMTB用のSPDタイプをおすすめします。

夕陽に照らされたヨーロッパの街並みへ 和歌山マリーナシティ

不老橋から再びサイクリングロードをたどり、約5km先の和歌山マリーナシティを目指します。
海沿いを走る国道42号線沿には、車道とは別に自転車歩行者専用道が設けられ、環太平洋自転車道の一部にもなり走りやすい道です。浜の宮ビーチから望むサンブリッジと、その向こうの色とりどりのマリーナシティの建物群の景色はまるで海外のリゾートのよう。
さっきまで純和風の史跡を巡っていただけにそのギャップを新鮮に感じます。午後の西陽を受けながらサンブリッジを渡れば、クルーザーやヨットが所狭しと並ぶマリーナの景色が広がります。
以前、社会人留学をしていたオーストラリアの東海岸、ゴールドコーストでよくライドしながら見た景色を思い出しました。複合リゾート施設である和歌山マリーナシティには、ヨーロッパの街並みを再現したポルトヨーロッパと呼ばれるエリアがあります。
ジェットコースターなどのアトラクションは有料ですがエリア自体は入場無料です。写真映えするスポットがたくさんあります。 ポルトヨーロッパのすぐ隣には昭和30年代の商店街をイメージした黒潮市場があります。自転車をサイクルラックに止めて、カフェで一息ついたり、お土産を買ったりするのにちょうどよいスポットです。 和歌山マリーナシティをあとにし、今度はサンブリッジと反対側にかかるムーンブリッジを渡り、約5km先のJR海南駅でゴールです。
和歌山駅まではJRきのくに線、和歌山駅で紀州路快速に乗り換え、大阪への帰路につきました。

コース紹介

▼わかちかレンタサイクル
https://www.wakayamakanko.com/topics/?p=6753

まとめ

今回は約25kmという一日かけて走るにはけっして長くはない距離でしたが、お城、庭園、神社、地元グルメ、海の絶景、ヨーロッパの街並み、市場…と見どころが盛りだくさんの旅になり、自分で企画しておきながらも想像以上に満足度の高いライドになりました。
歴史好きにも地理好きにもグルメ好きにも楽しめる和歌山。ぜひ輪行を活用して走りに出かけてみてはいかがでしょうか。

執筆:Ayaka

2011年に社会人になると同時に始めた自転車で「自転車×旅」の魅力にハマる。
ニュージーランドでのワイナリーロードレース、タイの寺院巡り、ドイツ古城巡り、インドネシアでの遺跡巡りなど世界各地で自転車旅を催行し、その様子を雑誌『Cycle Sports』に寄稿。
2017年には自転車ツーリズムを探究しにオーストラリアへ留学。現地の様子を『Cycle Sports.jp』にて『G’day, Australia! 〜ブリスベンからの自転車だより』として1年間連載。帰国後は英語教材編集者の傍ら、自転車イベントで通訳・MC・PR担当等を務める。
座右の銘は「好きにまみれろ、夢中で生きろ」。

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