【インドネシア】ジャカルタの「カーフリー」から見えた、自転車のマナーと国民性
2018年で日本との国交樹立60周年を迎えたインドネシア。
世界4位(2億5000万人)の人口を有し、東西は3タイムゾーンでアメリカ大陸ほどの国土をもつ島国です。世界有数の親日国としても知られていますが、日本ではまだまだ知られていない国かもしれません。
そんなインドネシアの首都ジャカルタでは、毎週日曜の朝「カーフリー」が行われ、多くの人や自転車で賑わっています。
この「カーフリー」を交えて、自転車が人気のインドネシア(ジャカルタ)をご紹介します。
目次
インドネシアの首都ジャカルタとは
ジャカルタはインドネシアの首都であり、同国最大の都市。ひとつの市単独でジャカルタ首都特別州を構成する特別市です。
人口は約1000万人。近郊を含めた都市圏人口は約3000万人と、東京都に次いで都市圏人口は世界第2位になっています。
都市圏人口から見て分かる通り、ジャカルタは世界屈指のメガシティであり、東南アジア有数の世界都市なのです。
平均年齢も若く、経済成長も著しいので、とても活気が溢れるジャカルタ。
そんなジャカルタは、世界有数の渋滞が起きる街としても知られています。
現在、鉄道は地方から都心に乗り入れる路線のみ。
東京都市圏から、山手線と私鉄と地下鉄を無くしたような都市と想像すれば、渋滞の凄さが分かるかと思います。
2007年カーフリーの導入~毎週日曜実施へ
2007年に政府が、ジャカルタの目抜き通りであるタムリン通り・スディルマン通り(片道約7.5km/往復約15km、東京で言えば東京駅~新宿くらいの距離)を通行止めにして「市民が路上を活用して活動できる場所の提供」を不定期に行ったのがカーフリーデー(Car Free Day)です。
その後カーフリーデーは人気となり、2012年には毎週日曜6時~11時に実施されています。
2012年ごろのカーフリー風景と自転車ブーム
日頃車道はクルマとオートバイで埋め尽くされ、歩道はボコボコなので、普段街中で自転車を目にすることはほとんどありません。そのため自転車は主に週末、山でマウンテンバイクを楽しむレジャーツールでした。
しかしカーフリーの導入によって首都のど真ん中の舗装路を快適に走れるようになったことで、富裕層がロードバイクでカーフリーを楽しむようになりました。
その後カーフリーでサイクリングを楽しむのがトレンドとなり、一気に自転車ブーム到来となったのです。
またインドネシアには「POLYGON」というメーカーが自転車を国内生産しており、比較的安価に自転車が買えるのも人気の要因の1つにもなったようです。
ジャカルタでは年間を通じて気温は28~32度なので、当時マラソンなどは人気がなく、お洒落でカッコいい自転車がカーフリーに集まるようになりました。
自転車が多く集まるようになったことで、ロードバイクのサイクリストは郊外で楽しむようになり、主にクロスバイク(インドネシアではハイブリッドバイクと言います)やマウンテンバイクが多く集まるようになります。
カーフリーが毎週開催されていた2012年頃はまさに自転車天国ですね。
マラソンブームが来たカーフリー
2013年頃から、マラソンや駅伝イベントが行われ、徐々にマラソンが人気となってきます。地下鉄工事も始まり、通りは工事で車線が狭くなることろも増える中、人も増え、自転車も走る…。そして毎週が何かのイベントのようになってきました。
通りにはこんな光景も…。
2018年のカーフリー風景
そして2018年、カーフリーはこんな風景になっています。
人も自転車もスゴい数です。しかも毎週です!
まだまだ娯楽が少ないこの国で、日曜朝のカーフリーは無くてはならない貴重な場所になっています。
日本とインドネシアの自転車文化の違い
①移動手段ではなく、レジャー
日本で自転車の多くは「移動手段」として利用されています。
幼少期から自転車⇒16歳でオートバイ⇒18歳でクルマに乗る。というのが私たち世代の順序でした。(今はオートバイもクルマも少ないですが)インドネシアで若者の移動手段はオートバイ。なので所有する順は
オートバイ⇒クルマ⇒自転車となります。
なので、道路周辺には自転車を載せてきたクルマが多く駐車されています。
②歩行者天国は自転車も天国
カーフリーはいわゆる「歩行者天国」です。
銀座の歩行者天国は「自転車の通行は不可(押し歩きはOK)ですよね。インドネシアは歩行者も自転車も「天国」です。
③マナーの違い
日本では、ヘルメットの着用は努力義務、自転車道での並走は原則、道交法違反となります。そしてスポーツ自転車においては「マナー・モラル」も問われます。
インドネシアでは、「人」も「自転車」も「バス」も上のような画像の距離感で走っています。「並走」もすれば「ノーヘル」もいます。それぞれが自己責任で楽しんでいます。
そして、それぞれが上手くバランスをとりながら独特な距離感でマナーを守っているように見えます。日本ではきっと誰かが誰かに注意するであろう光景ですが、ここでは喧嘩やもめている光景は見たことがないんです。
「サイクリスト」=「自転車を楽しむ人」は、日本人もインドネシア人も同じはずなのですが、「楽しさ」と「マナー・モラル」のバランスが圧倒的に違うように感じます。
まとめ
私は2011年から日本とジャカルタで仕事をしているので「ジャカルカのどこが好きですか?」と良く聞かれます。
「どこ=場所」なら必ず『日曜朝のカーフリー』と答えます。
「どこ=どんな理由」なら必ず『インドネシアの人々』と答えます。
いつも笑顔でフレンドリーなインドネシアの人々が好きで、毎週毎週こんなに多くの人が集まって週末を楽しんでいる光景は「羨ましい!」に尽きます。
様々な民族・言語・文化・宗教から成り立つインドネシアでは「多様性の中の統一」と言う国是があります。
自由奔放の様で、どこか相手を気にし合いながら、お互いがぶつからないように気を付けながら、独特なバランスをとって楽しんでいるカーフリーを見て、まさにその通りだといつも思います。
自転車において日本は決して先進国ではありません。インドネシアも決して自転車先進国とは言えない環境です。
ただ、お互い全く違う文化で育った者同士「サイクリング」という楽しみを通じてお互いの良い所を理解しあえることが、とても素晴らしいことだと思っています。
執筆:YASU
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