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太平洋岸自転車道実走調査②千葉県:房総半島の道路状況や走行ポイントを解説

2022年秋にナショナルサイクルートである太平洋岸自転車道を全ルートを実走調査した経験をもとに、その全容を紹介するシリーズ。今回は最初のエリアである千葉県の、銚子市銚子駅から富津市の浜金谷港まで。

<DATA>
銚子駅→金谷港/距離:219km/獲得標高:1327m/最大標高:85m

ルート概要

房総半島をぐるっとまわる海岸沿いルート

千葉県銚子市のJR銚子駅前が太平洋岸自転車道のスタート地点。ここからずっと海沿いをたどって房総半島を時計回りに富津市金谷の浜金谷港(東京湾フェリー乗り場)までが千葉県内のルート。
アップダウンは少なくとても走りやすいが、海岸沿いのため風向きの影響を受けやすいので注意。
基本的にずっと海に沿って走るが、じつは海を見ながら走れるのは外房エリアの一部のみ。ルートは国道128号、127号、県道30号など幹線道路がメインだが、海岸沿いの自転車専用道を走る部分もあり、その入り口を見落とさないよう注意が必要。

南房総エリアはルート沿いに道の駅が点在し、休憩もしやすい。自転車専用道部分をのぞけばコンビニも適宜あり、補給やトイレで困ることはない。
出典:「太平洋岸自転車道」(国土交通省  近畿地方整備局)

ルート高低差

一部をのぞきほぼフラットな房総半島

銚子市ドーバーラインの手前に1カ所、短い激坂がある。太平洋岸自転車道全ルートを通じて、1、2を争う勾配だ。地元のサイクリストもあまり行きたくないと言うほど。さらにその後は急な下りが待っている。またその銚子ドーバーラインから飯岡までと、御宿町から鴨川市にかけて、さらに南房総市の洲崎灯台の前後に、それぞれアップダウンがあるが、長い上りではないので軽いギヤを回してクリアできる。ほかはほぼ平らで、とくに九十九里浜に沿って走る部分は、まっ平らだと言っていい。

出典:国土交通省 関東地方整備局

道路状況

自転車専用道は砂の堆積に注意

基本的に幹線道路を走るため、走行環境はおおむね良好。ただ市街地を抜ける部分などで路肩が狭い箇所はところどころある。

九十九里浜沿いと和田浦付近に自転車専用道を通る部分がある。ここは砂が堆積しているところもあり、走行に注意が必要。細いタイヤで無理に砂地の上を走ると落車する危険性が高いので、押して歩きたい。また夏から秋にかけては雑草が生い茂って走りづらいことも多い。

国道410号、野島埼灯台の先にも砂が堆積しやすい場所があるので注意したい。

基本的に海沿いの県道、国道を走る。集落をつなぎながら走っていく感じ

海沿いの自転車専用道はどうしても砂が溜まりやすい(MAP②)

海沿いを快適に走れる部分も多い。市街地以外は交通量も少なめ

走行注意ポイント

勝浦のバイパスと南房総のトンネルが難関

勝浦市を抜ける部分は国道128号バイパスを走るルートになっているが、路肩が狭く、時間帯によって通勤のクルマなどがスピードを上げて走っているのでかなり怖い。

御宿から鴨川の間にあるトンネルは、自転車歩行者用の小さなトンネルが左側にある場合が多い。短いトンネルだがクルマが多い場合はこちらを通りたい。

対して内房側、南房総市の国道127号にあるトンネル群には、岩富隧道や小浦隧道、南無谷隧道など、距離がある程度あって交通量が多いものがいくつか。しかも路肩が狭く非常に危険。後続をよく確認して走行したい。

勝浦の国道128号バイパスは、朝夕の通勤時に交通量が多い(MAP⑥)

このような歩行者用トンネルは積極的に利用したい(MAP⑦)

内房には路肩の狭いトンネルがいくつかある(MAP⑧)

ルート案内の状況

チーバくんの案内看板

チーバくんのマークがついた案内看板と太平洋岸自転車道のシンボルマークの路面表示、矢羽根が頼り。自転車専用道部分をのぞけばルートはわかりやすい。海岸沿いルートなので、たとえ太平洋岸自転車道から外れても、見当違いの方向に走ってしまう心配はない。ルートがシンプルで迷う心配が少ないからか、外房エリアの矢羽根の数は少なめ。

ただ内房エリアの鋸南町から富津市浜金谷にかけては、迷いやすいポイントに矢羽根を連続して配置してあってわかりやすい。

九十九里浜沿いでは70年代に整備された大規模自転車道を通る。ここは広い歩道に車止めがしてある場所があり、特徴的な道路となっている。この歩道を走るのが正規ルートのはずだが、車道にも歩道にも矢羽根はない。

チーバくんの案内看板

路面表示は一部をのぞき必要に応じて設置されている

鋸南町からは迷いやすい場所で連続矢羽根が登場。わかりやすい

特徴的な広い歩道は、1970年代に大規模自転車道として整備された部分(MAP③)

迷いやすいポイント

犬吠駅手前にMAPにない分岐路が

スタートして犬吠埼灯台を過ぎると、銚子電鉄犬吠駅の手前でルートがふた手に分かれる。右折して犬吠駅前を通過、「地球の丸く見える丘展望館」への激坂を行くルートと、直進して戸川の漁師町を抜けるルート。どちらにも矢羽根が敷いてある。太平洋岸自転車道ナショナルサイクルルート指定推進協議会によるHPのMAPを確認すると、ルートは右折して激坂を行くコース。どちらもドーバーラインに出るので、好みに応じて選ぼう。雰囲気がいいのは直進の戸川ルートだ。


ここを右へ行くと激坂、左へ行くと海岸まわり(MAP①)


戸川方面へ行くルートの方が雰囲気がいい

そのほか自転車専用道に入る部分は案内看板を見落としがち。もし自転車専用道に入りそびれても、そのまま行けばいずれルートに合流できる。忠実にルートを走破したい人以外は、そのまま走ってしまっても問題ないだろう。



白子付近の自転車専用道入り口。この表示を見逃すと直進してしまう。手前に予告表示はない(MAP④)

2023年3月9日追記:手前に案内看板とシンボルマークが設置されていた

迂回路情報

いすみ市にごく短い迂回が1カ所

大原手前の海岸沿いを走る自転車専用道は、夷隅川を渡った先で一部通行止めとなっており(2022年10月現在)、川に沿って左折せずに国道128号を表示に従っていったん直進、その先の表示で左折することになる。

ここから自転車専用道が始まるが、残念ながら通行止め(MAP⑤)

貼り紙によると令和4年3月に工事が終わることになっていたが、10月時点でまだ通行止めだった

観光&ビューポイント

海が見える場所は意外に少ない

ルートから見えるランドマークとしては、犬吠埼灯台、野島埼灯台、洲崎灯台などがわかりやすい。とくに犬吠埼はルートのすぐ脇にあり、自転車に乗ったまま灯台まで行けるので、ぜひ立ち寄りたい。東洋のドーバーとも呼ばれる銚子市の屛風ヶ浦は、近くで見ると絶景だがドーバーラインからは見えない。

海を見ながら走れるのは、銚子市の隣町、旭市の飯岡漁港から吉崎浜まで。あとはいすみ市の自転車専用道部分、南房総市の野島埼周辺などだ。


犬吠埼灯台はコースのすぐ脇にあり、自転車で灯台入り口まで行ける

野島埼灯台までは少し歩く。灯台先のラバーズベンチまで往復するなら30分以上はみたほうがいい

次回は千葉県の実走レポート編


執筆:岩田淳雄

愛知県出身、千葉県在住。
自転車雑誌「サイクルスポーツ 」「バイシクルクラブ」の編集長を歴任。現在は「ペダルプッシャー」を主宰し、サイクリングの啓発活動を展開しています。
https://pedalpusher.jp/

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