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太平洋岸自転車道実走調査④神奈川県:久里浜港から湯河原までの道路状況や走行ポイントを解説


2022年秋にナショナルサイクルルートである太平洋岸自転車道の全ルートを実走調査した経験をもとに、その全容を紹介するシリーズ。
今回はルート上で2番目の県である神奈川県の、久里浜港から湯河原まで。

DATA
久里浜港→湯河原(静岡県との県境) 
距離:104km 獲得標高:712m 最大標高:82m

ルート概要

三浦半島をまわり駿河湾沿いに走る平坦ルート

東京湾フェリーで到着するのが神奈川県の久里浜港。ここが太平洋岸自転車道の神奈川県スタート地となる。
ここから三浦半島を時計回りにたどり、相模湾沿いに湘南を経て静岡県との県境(湯河原町と熱海市の境)までが神奈川県内ルートだ。
ルートの距離は愛知県の51kmに次いで少ない104kmで、三浦半島と湯河原の手前以外はアップダウンもなくほぼフラット。

真鶴町手前で海ルートと山ルート(千葉方面用)に分かれる区間(約9km)がある。また大磯町には新たに整備された自転車歩行者専用道部分があり、湘南の鵠沼海岸から茅ヶ崎海岸にかけては国道のルートと並行して海岸沿いの自転車歩行者専用道もルートになっている。

基本的に幹線道路を走るので、コンビニや食事どころには困らないが、交通量の多い部分がほとんどなので、必要に応じて歩道を走るなどして安全を確保したい。


出典:「太平洋岸自転車道」(国土交通省  近畿地方整備局)

ルート高低差

三浦半島はゆるやかなアップダウンが続く

三浦半島の南側と西側はにはある程度の上りがあるが、トンネルで通過する部分もあり、それほど脚にはこない。ただ油壺のあたりから半島内側に入り込み京急三崎口駅の前を通るルートには、ゆるやかで長いアップダウンがある。湘南から小田原にかけてはほぼフラットと言っていい。

真鶴町手前の根府川交差点右にで分かれる山ルートは、真鶴道路の渋滞を避けるためにクルマが使う迂回路。距離9kmで獲得標高139m。トンネルもないのでそこそこ脚を使わされるだろう。海沿いルートも多少のアップダウンがあるが、気にするほどの高低差はない。

出典:国土交通省 関東地方整備局

道路状況

幹線道路のため路面の状態はいい

鵠沼海岸から焼く8km続く海沿いの自転車歩行者専用道は今回走っていないが、地元のサイクリストによれば「砂の堆積が著しく、とてもロードバイクで走れる道ではない」とのこと。砂の除去作業がされていない場合は、通らないほうがよさそうだ。またサーファーも多いため走行には注意が必要だろう。

大磯町の自転車歩行者専用道は海岸から自動車専用道(西湘バイパス)を挟んで離れているため、千葉県で見られたような砂の堆積などは見られない。


湘南の自転車歩行者専用道。奥は砂が堆積していて通行不能。2022年12月撮影。 (MAP⑦)
写真協力:http://pressports.com


大磯の自転車歩行者専用道は砂の堆積などはない (MAP⑬)

場所によっては交通量が多く路肩が狭い部分があるため、やむをえず歩道を走ることになる場合もある。その場合は段差に注意が必要だ。

交通量の多い場所は歩道を通ったほうがいい場合も。夕方の湯河原町市街地

走行注意ポイント

葉山周辺の渋滞と辻堂からの国道134号に注意

三浦半島、葉山、江ノ島、茅ヶ崎といった湘南イメージで快走ルートを期待したいところだが、交通量が多く路肩の狭いところが多い。
とくに休日の七里ヶ浜付近など、渋滞するクルマの横をすり抜けるのは神経をつかう。また辻堂海岸、茅ヶ崎海岸の横を走る国道134号は大型トラックが路肩の狭い道路をスピードを上げて通り過ぎるため、かなり怖い思いをする。
ここは歩道をゆっくり走るほうが安全だ。または並行して海岸沿いに指定されている自転車歩行者道を行くことになるが、入り口に誘導はなく、景色はともかく走りやすくはないようだ。


湘南エリアの国道134号は休日になると渋滞が多い (MAP⑤)


国道134号の江ノ島から茅ヶ崎市にかけては交通量も多く危険。歩行者はほとんどいないので、歩道を走るという選択も (MAP⑨)


茅ヶ崎市柳島の湘南大橋入口。ここも歩道を走ったほうがいい (MAP⑩)


湘南大橋。広い歩道は走りやすい 

ルート案内の状況

分岐の手前に誘導がない

分岐の手前に進行方向の表示がない部分が現れる。これは千葉とはあきらかに違う部分。矢羽根の先に分岐(T字路など)があるのに、それをどちらに進めばいいかの指示が手前にないのだ。
矢羽根を頼りに走る場合、分岐に出て左右を見渡し、矢羽根を見つけてその方向に進む、ということになる。これはこのあと静岡に入っても同様の場面がある。まだ整備が追いついていない部分なのだろう。

三浦市の城ヶ島近くにある日の出交差点。手前に方向の表示はないが直進方向は通行止め(MAP②)


交差点に入って左を見ると矢羽根が

鎌倉で現れるミニ矢羽根

鎌倉市から平塚市にかけて、見慣れない連続した小さな矢羽根が出現する。
これは太平洋岸自転車道とは関係ないものかと思ったが神奈川県の藤沢土木事務所によると、幅員が十分でない道路に矢羽根を設置するための苦肉の策として設置したもので、れっきとした太平洋岸自転車道の矢羽根。
このあたりの設置方法は各管轄土木事務所の苦労がにじんでいて興味深い。


鎌倉市の由比ヶ浜で出現するミニ矢羽根 (MAP④)


大磯町にもミニ矢羽根が (MAP⑪)

迷いやすいポイント

江ノ島の矢羽根は太平洋岸自転車道のものではない

国道134号の江ノ島入口交差点から江ノ島方面を見ると、路面に矢羽根が続いているのが見える。もちろんこれを追って江ノ島まで往復してもいいが、現在ここは太平洋岸自転車道のルートにはなっていない。

江ノ島へ向かう道にも矢羽根が敷いてある (MAP⑥)

サイクリストを惑わす人呼んで「大磯の関」

大磯港から自転車歩行者専用道に入る部分は非常にわかりにくい。新しくできた道路へ誘導しようとさまざまな表示や案内があるのだが、まず交差点手前に右折の路面表示。
次いで「太平洋岸自転車道 右折してください」という誘導看板に従い右折すると、その先の急坂にミニ矢羽根とブルーライン。ところがこれはルートではない。推進協議会のグーグルマップでルートを確認すると、その坂を少し上って左折することになっているが、そんな道はない。
結局、西湘バイパスに並行して歩道に設置された「自転車道入口」の表示に従って進むのだと気づくまでしばらくかかった。

交差点手前の右折表示、「右折してください」の看板、そしてブルーラインの3段攻撃に惑わされず、そのまま直進方向の自転車道に入るのが正解だ。

手前に右折の指示、看板にも「太平洋岸自転車道 右折してください」。ごていねいに奥の矢羽は右を向いている (MAP⑫)


斜向かいの様子。ここにも「右折してください」の看板。奥に自転車道らしきルートがあるが、そこへは入るな、という強い指示に思える

指示に従って右折する。路面にはブルーラインが。ただその先でブルーラインは途絶える


結局、「直進方向」のここを入っていくのが正解。よく見ると太平洋岸自転車道の表示も

迂回路情報

鵠沼海岸への入り口は閉鎖中

とくに迂回箇所は見当たらなかったが、国道134号から鵠沼海岸の自転車歩行者道に入る部分は橋梁工事のため進入禁止だった(2022年10月現在)。
その先にも海岸への入り口はあるので、そこからは入れる。 (MAP⑧)

観光&ビューポイント

有名観光地がひしめく神奈川県

三浦半島の城ヶ島、湘南の江ノ島、小田原城など、ルート沿いには有名観光地がひしめいている。とくに鎌倉市の由比ヶ浜から七里ヶ浜、江ノ島にかけての海岸線は湘南観光のゴールデンルート。走りながら輝くビーチと立ち並ぶカリフォルニアテイストのレストランやサーフショップを眺めるだけでリゾート気分を味わえる。

サイクリスト的には三浦半島南端の宮川公園にある風力発電施設や、ルート沿いにヨットが停泊しているのが見える油壺京急マリーナのあたりが撮影スポット。

江ノ島が見えてきた。サザンオールスターズの勝手にシンドバッドが脳内にグルグル渦巻く


三浦市の丘陵を上ったところにある宮川公園にある風力発電施設の風車 (MAP①)


油壺京急マリーナ。ルートからの景色 (MAP③)

次回は神奈川県の実走レポート編


執筆:岩田淳雄

愛知県出身、千葉県在住。
自転車雑誌「サイクルスポーツ 」「バイシクルクラブ」の編集長を歴任。現在は「ペダルプッシャー」を主宰し、サイクリングの啓発活動を展開しています。
https://pedalpusher.jp/

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