旅×自転車 記事

【岐阜県】養老〜多度 現代アートと三川をめぐる越境広域40kmライド

春先〜梅雨前はどこを走っても気持ちのよい季節。
せっかくなので輪行を使っていつもより足を伸ばして、行きたかったスポットや走ってみたかった道に行ってみませんか。
大阪発着日帰りで行ってきた、養老(岐阜県養老町)〜多度(三重県桑名市)の県をまたいでの約40km広域ライドレポートをお届けします。 

一歩踏み入れれば不思議の国:養老天命反転地

旅のスタートは情緒あふれる単線の養老鉄道「養老駅」から。
大阪発着の旅ですが、名古屋からだと養老エリアまでは車で約1時間でアクセスできます。

最初の目的地は養老駅から約1.1kmの養老公園です。
今回の旅はここの「養老天命反転地」をひと目見てみたい!ということから計画したもの。
「養老天命反転地」は、美術家・建築家の荒川修作氏とマドリン・ギンズ氏による体感型アート施設。自然の地形を生かした「テーマパーク」として実際に中を歩き、触れながら楽しむことができます。約18,000㎡の敷地には、岐阜県の形をした屋根を持つメインパビリオン「極限で似るものの家」をはじめ、「もののあわれ変容器」「想像のへそ」といった小さな建築構造体や、「宿命の家」「運動路」などの迷路が複数あり、名前も実際の形状も実にユニークです。
上下左右の平衡感覚を失いながら、大人も子供も迷うことを楽しめる、非日常を味わえる空間になっています。ただし、迷いすぎるとこの後のライドが押すので要注意。

本家養老の滝を拝みにヒルクライム

次なる目的地は同じ養老公園内の敷地にある「養老の滝」。
「養老の滝」と聞くとつい大手居酒屋を思い浮かべそうになりますが、ここにあるのは本物の滝です。
清流を拝みに養老公園から標識に従い、約2kmのプチヒルクライムです。 距離こそ短いものの、木々が生い茂る山道、道路脇には「いのしし鍋」を掲げる料亭、「落石注意」の看板にヘアピンカーブと、雰囲気も斜度もなかなか挑みがいがあります。

4月上旬なのに早くも汗ばむ初夏の陽気を感じながら、養老の滝駐車場に到着。自転車を止め、今度は石段を滝壺の高さまで下っていきます。

「せっかくここまで登ったのに下るのか…」という気持ちも一瞬よぎりましたが、落差約32m・幅約4mの滝の清流が岩角を打って流れ落ちる様子は圧巻です。
この地域には、養老の滝の水が酒に変わったという「養老孝子物語」が語り継がれているそう。
気分はマイナスイオン全開!!とばかりに、意気揚々と階段を登り駐車場に併設する売店へ。「日本最初のサイダー」と銘打つ「復刻版 養老サイダー」で喉を潤し、焼き立ての五平餅で小腹を満たしました。

お千代保稲荷の参道でB級味噌グルメランチ

養老の滝からは養老公園方面へ来た道を下り、ランチを求め、約15km先の千代保稲荷(ちよほいなり)神社を目指します。
田畑の広がるのどかな里山風景のあぜ道〜国道258号線〜県道213号線を経由し、大きな鳥居が目印のお千代保稲荷の門前町に到着。
鳥居そばの駐車場にはサイクルラックも併設してあり親切です。
千代保稲荷神社は、京都の伏見稲荷、愛知の豊川稲荷とともに日本三大稲荷の一つとも言われており、地元では「お千代保稲荷」(おちょぼいなり)、「おちょぼさん」の名で親しまれています。

境内の鳥居をくぐると、売店の軒先でせっせと小ぶりのおにぎりサイズの油揚げを藁に通している女性が。
聞くとローソクと合わせて1つ50円で販売しており、お賽銭と合わせてこれをお供えするのが習わしだそう。全国各地に稲荷神社はあれど、お祭り時ではなく常設でこの形のお供えに出会ったのは初めてなので新鮮です。

お参りを済ませたところでお待ちかねのランチタイム!参道の両脇には70軒を超える商店が立ち並んでいますが、中でもひときわ目立つ金ピカ御殿の「串かつ 玉屋」です。

店先には金ピカスーツに身を包んだ男性の等身大パネル(社長だそうです)に、天井・壁・テーブルも、とにかく金・金・金づくし。
黄金の茶室を作った豊臣秀吉もこりゃびっくりに違いないと、きょろきょろしながら案内されるがまま店内へ。

名物は1本90円の串カツ。お米を食べたくて、串かつ1本と「どてめし」を注文しましたが、周囲を見回すとお客さんたちは皆、串カツを単品で皿に山盛り注文しています。
味噌・ソースの2種から選べ、約4万本売れることもあるのだそう。
常連客の流儀と、トイレの蓋まで金ピカな徹底ぶりに圧倒されたランチでした。

河川敷 菜の花ロードで三川公園を目指す

食後はお千代保稲荷から約14km南下した先にある、木曽三川公園を目指します。
この公園、一見普通の公園と思いきや、岐阜・三重・愛知の実に3県にまたがる日本最大の国営公園なのです。
1日のライドで3県回れるお得感(!?)に胸を踊らせながらペダルを軽快に回します。

お千代保稲荷のある海津市から三川公園を目指すルートは複数ありますが、おすすめは長良川と木曽川の間の堤防を走るルートです。
左右両手を川に挟まれた道はとにかくまっすぐ。土手には何万株という無数の菜の花が咲き乱れて香り、花と花との間をモンシロチョウが舞い、野鳥のさえずりが途切れることのないBGMのように聞こえてきます。

赤い鉄橋の東海大橋を越えて、立田大橋を長良川側に渡り、三川公園に到着。川沿いを走り訪れるサイクリストも多いのでしょうか、売店の前には複数のサイクルラックがありました。
自転車を止めて「水と緑の館 展望タワー」に登ります。

タワーの上からは広大な公園内の花壇はもちろん、揖斐川・長良川・木曽川の三川をはじめ、養老山地、桑名市(三重県)と海津市(岐阜県)にまたがる標高403mの多度山を望めます。
施設は有料ですが、養老エリアから走ってきたルートを鳥の目線で俯瞰できるのは達成感があります。

多度〜養老:ローカルな養老鉄道に揺られて

木曽三川公園で折り返し、養老エリアへと戻ります。
時間があれば養老鉄道沿いに約21km、自走してもよいでしょう。体力に余裕があれば地元サイクリストたちのヒルクライムスポットである多度山に登ってみるというプランも。
この日は帰り時間を鑑み、復路は公園から約3kmの養老鉄道 多度駅から電車に乗り養老駅へと戻りました。養老鉄道はサイクルトレインとしても運転しており、平日は9時頃~15時頃までの指定列車で、土曜日・休日はすべての列車で解体・パッキングせずに無料でそのまま自転車を持ち込めるようになっています。(平日の時間外はパッキングしたうえで乗車可。)

養老駅からサイクルトレインで先に多度エリアへ出て、多度神社参拝や多度山ヒルクライムをメインにするというプランも楽しめそうです。

帰りはJR大垣駅から在来線で輪行し、大阪への帰路へとつきました。

コース紹介

9:00 JR新大阪駅発「JR東海道新幹線こだま」
10:00 JR岐阜羽島駅着

(車で養老へ)

養老〜多度 ライド(約40km)
多度〜養老 養老鉄道(輪行)

18:00 JR大垣駅発 東海道本線・琵琶湖線(米原乗り換え)
20:00 JR新大阪駅着

▼養老鉄道 サイクルトレイン
https://www.yororailway.co.jp/cycle/cycletrain.html

まとめ

ライドのプランを組み立てる際、地域の観光サイトで情報収集するのはもちろんですが、地図を引いて眺めてみると「都道府県をまたいで、広域でこんなコースが組めるんじゃ?」とアイデアがひらめくことがあります。
「岐阜の養老天命反転地に行きたい!」という想いから始まった自転車旅企画でしたが、養老鉄道を活用しつつ、岐阜・三重・愛知にまたがる広域ライドになりました。

地図上で点と点とをつなぎ計画しつつ、いざ実走してみると、県境を越えるたびに新たなフィールドに足を踏み入れる気持ちになります。そんな地理的な楽しみ方も含め、ぜひあなたなりの「越境広域ライド」を企画してみてください。

執筆:Ayaka

2011年に社会人になると同時に始めた自転車で「自転車×旅」の魅力にハマる。
ニュージーランドでのワイナリーロードレース、タイの寺院巡り、ドイツ古城巡り、インドネシアでの遺跡巡りなど世界各地で自転車旅を催行し、その様子を雑誌『Cycle Sports』に寄稿。
2017年には自転車ツーリズムを探究しにオーストラリアへ留学。現地の様子を『Cycle Sports.jp』にて『G’day, Australia! 〜ブリスベンからの自転車だより』として1年間連載。帰国後は英語教材編集者の傍ら、自転車イベントで通訳・MC・PR担当等を務める。
座右の銘は「好きにまみれろ、夢中で生きろ」。

 

 

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