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太平洋岸自転車道実走調査⑮和歌山県:新宮から和歌山までのサイクリングレポート

2022年秋にナショナルサイクルルートである太平洋岸自転車道を全ルートを実走調査した経験をもとに、その全容を紹介していくシリーズ。和歌山県ルート解説に続き、今回はいよいよゴールとなる和歌山市の加太港までの実走レポート。

実走調査日:2022年11月18日〜22日

DATA
新宮→和歌山(加太港)
距離:311km、獲得標高:3420m、最大標高:153m

  出典:「太平洋岸自転車道」(国土交通省 近畿地方整備局)

新宮から那智勝浦まで

新宮市内に入り、ブルーラインとの遭遇。ついに和歌山まで来た。

WAKAYAMA800と太平洋岸自転車道の表示が合体している。

この小さい矢印はWAKAYAMA800のもの。

国道42号の大狛子トンネルは分岐を左へ行き旧道の大狛子隧道を通ってみた。ルートは国道のほうだが、こっちのほうが安全。


道の駅なちは那智駅に併設。サイクルステーションを示す大型の看板は、太平洋岸自転車道のナショナルサイクルルート指定に向けて設置されたもの。

雰囲気のいい那智駅。

黄色いポスト。有名らしい。

ここはサイクルステーションなので工具の貸し出しなどがある。

先ほどのサイクルステーションの大型看板とは違い、こちらはWAKATYAMA800のコース(起点)を示すもの。あとから太平洋岸自転車道のマークを貼追加してあるようだ。

勝浦漁港にぎわい市場。YouTubeやブログでよく見かける場所だ。

那智勝浦から太地まで

湯川トンネル。正しいルートはこのトンネルを行くが、ここにも旧道のトンネルがあり、「歩行者・自転車は左側専用道へ」という表示もあるのでそちらへ。この旧道はグーグルマップには出ていない。

太地新宮自転車道線への入り口。WAKAYAMA800のルートはここを直進するのだが、なぜか路面の矢印は自転車歩行者専用道へ。

ブルーラインも引いてある。

この太地新宮自転車道線は名前のとおり太地町と新宮市を結ぶ計画延長25kmの自転車歩行者専用道だが、現在はこの800mほどの区間しか完成していない。

途中に階段区間も。

森浦湾の景色が美しい。

草が覆いかぶさる部分も。

三軒屋トンネル。1992年に完成したがそのまま整備が中断し打ち捨てられた状態になっていたものを、ナショナルサイクルルート指定に向けて再整備したもの。

道の駅たいじにあった案内。余談だがWAKAYAMA800は大きく川のサイクリングロード、山のサイクリングロード、海のサイクリングロードと3つに分けられ、それぞれR、M、Sのイニシャルと番号の組み合わせで路線を表示していて、この案内にもそれが記されている。
しかしじつは現在HP上でこの表記は使われておらず、「太平洋岸自転車道クライマックスルート」、「絶景の海岸線を走る白浜・すさみサイクルトレインルート」といった10のコースで表記されている。県の観光振興課によれば、アルファベットと数字を組み合わせたコース表記は、すでに行政的に使われているだけでユーザーを対象にしていないとのこと。
しかしこの案内看板もそうだが、路面標示にもまだ「S-1加太」など旧表記が用いられている。

太地くじら浜公園に近づくと、前方に大きな船が見えてくる。捕鯨船の第一京丸だ。1971年竣工で、2007年に引退した船を展示してある。

太地漁港を左手に見て急坂を上る。ここもかなり厳しい上りだった。

太地からすさみまで

串本町の古座川をすぎたあたり。

伊串漁港の入り口。無人販売所がたくさん並んでいて、このときは菊の花などを売っていた。季節によっていろんなものを売っているということだ。

「道の駅くしもと橋杭岩」のテラスからみた橋杭岩。

道の駅に貼ってあったポスター。WAKAYAMA800とのコラボだが、加太の太平洋岸自転車道モニュメントが描かれていて、おおっ!と声が出た。

橋杭岩はホントは朝や夕方がきれい。

串本市街で国道42号を離れ潮岬方面へ。その先でこの表示。左へ行くとループ橋を経て紀伊大島へ。直進すると潮岬。矢印は両方を指している。
この小さい矢印はWAKAYAMA800のものなのだが、そのルートは紀伊大島方面と潮岬方面の両方がある。だが太平洋岸自転車道は潮岬方面。ここが唯一、太平洋岸自転車道とWAKAYAMA800の表示の混在でわかりにくかった部分。

潮岬の本州最南端モニュメント。
撮影スポットでほとんどの人は潮岬の位置を指差して写真を撮っていたが、筆者は千葉と和歌山を指した。撮ってくれた人が「なんでそこを指すのか」と聞くので「ここからここまで自転車で走っているんです」と言ったら驚かれた。

潮岬灯台。灯台好きにはたまらない。

潮岬のある半島をぐるっとまわる。

周参見駅近く、ルート沿いにあるFRONT110という観光案内施設で、すさみの観光振興に関わる方々が迎えてくれた。
ここはもと警察署。津波対策で移転した跡地を利用した観光拠点となっていて、サイクリストの休憩にもお薦め。

ここは警察署の跡地だけあって、実際に使われていた留置所が観光用に一般公開されている。ぜひここで写真を。

日置川を渡る手前。川を渡ると白浜町。日置の集落が見える。

すさみから白浜まで

ルートは国道42号のトンネルを回避して旧国道(県道243号)を通る。

日置の集落で矢羽根が消え、道に迷いルートミス。白浜日置川自転車道線の入り口を見逃して直進してしまった。

すぐ先の道の駅志原海岸でルートに復帰。海岸沿いの自転車歩行者専用道だ。

そこから先の自転車道に入っていく。この自転車道はグーグルマップには載っていない。

ここまでは横道からクルマも入ってこられる。だがこの先は通行止めで国道42号で迂回する。

自転車歩行者専用道の国道への出口。通行止めでなければここまで自転車歩行者専用道で来られた。
自転車なら入れそうだが、県の道路局によれば地権者などが立ち入るために完全封鎖してないだけで、自転車も通ってはいけないということだ。

国道42号を行く。ブルーライン。

おおっと! ここに左折指示が!

ブレーキングして左の歩道へ入ると先にラバーポールが。

そしてその先は階段。そうですここが有名(?)な天国への階段。
以前はここに車止めがなく、そのまま階段に突っこみそうになっていたそうだがすでに改善されている。
たしかにスピードを出していて勢いよく歩道に入って車止めがなかったら、そのまま天国行きかも。ちなみにすぐ先に普通の坂で下りられる道がある。

そしてその先はまさに天国のような自転車歩行者専用道。ここは先ほどの白浜日置川自転車道線の続き。

ゴールまであと190km!

こ、この表示は!? どっちへ行けばいいんだ?と思ったが、ここが白浜のダブルルートの起点。左折すると白浜の半島部分をまわり、まっすぐ行くと半島をショートカットする。当然左折。

白浜は観光名所が多い。ここは千畳敷。アップダウンが厳しいかと思ったが、それほどでもなかった。

ゲートウェイになっているシラハマキーテラス ホテルシーモア。ジャイアントストアがあり、レンタサイクルも。変速の調子が悪かったのでみてもらった。
ほかにもオーバーホールしたほうがいい箇所などを教えてくれて、料金は「いいですよ」と。神対応ありがとうございました!

メジャーな景勝地が連続する。白良浜。

円月島。

入り江の湖面に映る空が美しかった。

白浜から有田まで

田辺市に入り、天神崎への入り口。

切り通しを抜けて海岸へ。

天神崎はクルマも少なく、景色もいい。
サイコーのサイクリングルートだと思うのだが、なぜかWAKAYAMA800のブルーラインがない。なんでだろうと思って聞いてみたら、じつはここもWAKAYAMA800のルートにはなっているのだが、道幅が狭いため太平洋岸自転車道の矢羽根といっしょにブルーラインを引くと煩雑になり景観を壊すので引いていないということだった。
矢羽根もブルーラインもサイクリストにとってはありがたいものだが、景観保護の観点からは問題視されることもあるのだということを考えさせられる。

みなべ町の海岸線の国道42号は交通量が多く、ルートのわきに堤防上の道があったので、そちらを通った。

印南町の国道42号。ゆるやかなアップダウンが続く。並行して走る紀勢自動車道の無料区間が終わったせいか、交通量が増えている。

このあたりから国道42号の路面には、ところどころ謎の3桁番号がペイントされている。これは国道42号の起点である浜松市からの距離。三重県を山ルートでくると、実際の走行距離と近いはず。

御坊市をすぎて日高町でルートを外れて紀伊日ノ御埼灯台へ寄ってみる。灯台が丘の上にあるのですごい激坂で、ついに自転車を押した。でもこのタイル張りの珍しい灯台を見られたので満足。

由良町へ向かう県道24号。交通量は少ない。

白崎海岸手前の立巌岩。

由良町のダブルルート区間。左へ行くと山越え、直進が2010年にできた海岸線のトンネルを行くルート。
もともとの太平洋岸自転車道が山を越えるルートで設定されていたが、そこにバイパスができたのでそちらもルートに、ということだ。交通量も少ないのでトンネルルートを選択。

ダブルルートが終わった先、県道23号。ここが和歌山県の最高標高地点だ。標高約150mで、ふもとの衣奈漁港からの平均勾配は5%程度。眼下にこれから走る道が見える。

海岸線をとことこ走り湯浅町を経て有田市へ。須佐神社の鳥居をくぐって左へ。

有田から和歌山まで

海南市で国道42号からそれて細い道に入る。ここもまっすぐ行くとトンネルなので、ルートになっているほうが旧道なのだろう。

すぐに立体交差。

海南市の加茂川沿い。太平洋岸自転車道とWAKAYAMA800のマークだけが入った珍しい案内看板。通常は次のサイクルステーションやゲートウェイまでの距離案内が入る。

海南市の大崎漁港から始まる激坂。画面奥に見える道の勾配に卒倒。

ここで自転車を押した。伊豆半島では坂がキツくて押しまくっていたが、三重、和歌山はなんとか押さずに来ていた(ルート外の紀伊日ノ御埼灯台への道を除く)。だがついにここでギブアップ。

その後も断続的に上りが現れる大崎。遠く和歌山市のマリーナシティが見える。

キンチョーの工場があった。まだ上りは続く。この大崎の上りを「キンチョー坂」と名付けよう。

このあたりはミカンの産地。

ルートは海南市の温山荘園前で国道42号を横切るが、その直前にこんな場所が。この横断歩道の先を左折の指示になっている。

そして左折して現れるのはこんな道。ここは道なの?一応自歩道(自転車歩行者道。自転車歩行者専用道と表記は似ているが、自転車も通っていい歩道という解釈が近い)の標識が出ているから公道なんだろうけど、空き地みたいな私道みたいな。

そしてムーンブリッジを渡ると和歌山市のマリーナシティ!さらにサンブリッジを渡る。

和歌川を渡り、その先。左折の指示があるが、よく見ると横断歩道の先にも直進を示す矢羽根が。これはストリートビューで確認すると和歌山市の中心部、和歌山城の前まで続いている。つまり太平洋岸自転車道の矢羽根ではないってこと。都市部ではよくあることだ。

日本のアマルフィとも呼ばれる雑賀崎。ゴールを前に早く先に進みたいと気持ちははやるが、うねうねと雑賀崎のなかを走らされる。もちろん上りあり。

ゲートウェイになっている「わかやままるしぇ」に到着。
ここで2021年に太平洋岸自転車道を9日間で走破した和歌山市職員であり太平洋岸自転車道繋げちゃえプロジェクト発起人のニシバこと西林孝紘さんと合流。加太港まで残り14kmほどとなった残りのルートを案内してもらうことに。

そしてついに加太に到達!やったーーーーーー!! 1480kmを走り抜いた!

ニシバさんが手作りの完走認定証書を読み上げてくれた。一生の宝物だ。

連載はまだまだ続く!

次回は自転車の装備と持ち物チェック編

執筆:岩田淳雄

愛知県出身、千葉県在住。
自転車雑誌「サイクルスポーツ 」「バイシクルクラブ」の編集長を歴任。現在は「ペダルプッシャー」を主宰し、サイクリングの啓発活動を展開しています。
https://pedalpusher.jp/

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