太平洋岸自転車道実走調査⑨静岡県西部:沼津から湖西(愛知県境)までのサイクリングレポート
2022年秋にナショナルサイクルルートである太平洋岸自転車道を全ルートを実走調査した経験をもとに、その全容を紹介していく。静岡はルートが長距離であるため、東部と西部に分けて解説している。静岡県西部のルート解説に続き、今回は長いなが~いい静岡県のうち、沼津から湖西までの実走レポート。
実走調査日:2022年10月25日〜26日、11月15日
DATA
沼津→湖西(愛知県との県境)
距離:225.4km、獲得標高:416m、最大標高:118m
沼津から富士まで
沼津市内に宿泊したので、駅前のホテルからルートに戻る。沼津は自転車の安全な通行に対する施策がしっかりしているのだと実感する。ただそれが仇となって、矢羽根が交錯するなどの混乱が起こっているのが残念だ。
沼津市街地から狩野川堤防に出たところからサイクリング再開。堤防が自転車歩行者道になっているが、太平洋岸自転車道の表示などはない。
ここも直進したらそのまま道路を渡ることになるが、もしやと思い橋をくぐる右の側道へ。すると橋の下に小さな青い表示が。
とても控えめな案内表示。なぜこんなに遠慮しなければならないのかと思わせる。
この港大橋を渡るわけだが、ルートに対して明らかに大回り。
永代橋たもとの左折箇所。案内は左折。
しかし矢羽根は直進。この矢羽根は太平洋岸自転車道のものではないのだ。
富士市田子の浦港付近からの富士山。もっとも富士山が近く見えるのがこのあたりだ。
⑧の解説編で指摘した問題の(?)交差点。右へ分岐するT字路なのだが、矢羽根は直進を指示。
その先の路面標示も直進。
が!その交差点を抜ける手前で急に右折指示が!
歩道側から見るとこんな感じ。つまり「ここは二段階右折しなさいよ!」ということなのだ。しかしこんな指示があるのは初めてだと思う。通常は交差点手前に右折の表示がある。こういう部分のルートを通じたルール統一が必要ではないかと思う。
田子の浦港から西へ向かう県道。標識の柱に何かステッカーが。
こんなに小さい案内表示はここだけでは!?
異様に広い歩道のようなこのスペース。しかし左側にはちゃんと歩道が。そうです、これは自転車歩行者道(実際には自転車道)です。道の駅の看板がじゃまで走れません。
でもそこを越えて走っていくと。
この先で右折の表示が。
で、その先は行き止まり。
どうもその左側の側道を行くようで。つまり、自転車歩行者道ではなく、歩道を走るのが正しいルートだったというわけ。
さらに進んで右折すると横断歩道。ここも横断歩道がルートになっているという珍しい部分。
道は歩道から道の駅富士に入っていく。ここも道の駅の中をルートが通るという珍しい場所。
富士山型(?)の手作りサイクルラックが。
サイクルステーションになっているので、工具やポンプの貸し出しがある。
愛知県境にある湖西市まで200km以上。静岡はデカい!
富士川を渡る。この先は静岡市だ。昔は清水市だったが、2003年に静岡市と合併して今は清水区。
ちなみに路面のシンボルマークの向きは、ときどきこのように進行方向を向いていないものがある。なぜなんだろう?
富士から三保松原まで
渡り切ったところで階段自転車道。
解説編で触れた、JR蒲原駅の先で現れる色が薄い矢羽根。「縮小型」も登場。この縮小型は、びわ湖を一周するビワイチのルートでも見かけた。
雰囲気のいい由比の旧街道を抜ける手前で、有名な薩埵峠への分岐が現れる。ルートは左なので、この激坂を上らずにすむのはラッキー。
薩埵峠との分岐をすぎるとすぐにJR東海道本線の線路と国道1号を渡る。
しばらく歩道を走っていくと、左側の道に誘導される。
ここからがじつは不思議な道。標識や路側帯などのない、道路のようで通路のような空き地のような……。なんだか走ってはいけないところを走っているような気分になる。
薩埵峠を迂回する、サイクリストにとってはありがたい道なのだが。 以前から気になっていたので、国交省中部地方整備局静岡国道事務所に問い合わせてみると、ここはれっきとした公道。国道1号の道路区域のなかにあり、この国道事務所が管理しているという。
国道1号の管理道路的な部分を、便宜的に自転車歩行者道として供用している、ということだ。興津川を渡る手前に自転車歩行者道の標識があり、そこからは自歩道として規制されているが、それより手前の部分はとくに規制のかかっていない部分だということ。
今回勝手に命名、「由比ワンダーロード」。ここも太平洋岸自転車道名物(?)の場所になるかも。。
清水市街は先に整備された自転車歩行者道や自転車通行帯が幅をきかせており、太平洋岸自転車道は注意深く見ていかないとルートを見失う。しかも「以前から供用されている自転車歩行者道の整備は後まわし」という謎ルール(?)のせいか、太平洋岸自転車道のルート表示はとっても控えめ。
太平洋岸自転車道のルートを正確に走破しなくては!という筆者のような使命に駆られた人を除いては、とりあえず清水市街を抜ければなんとかなる、という気持ちで走るのが正解だと思う。迷ってしまっても、とりあえず海に沿って南下していけば、そのうちルートに合流できるはず。
巴川を越えた先で、ルートは旧国鉄清水港線の線路跡を走る。終点の三保駅跡地を利用した三保ふれあい広場には、実際にここを走っていたアルミのタンク車と小型ディーゼル機関車が展示されている。
三保松原から清水まで
三保半島に入ると現れるミニ矢羽根。神奈川県にあったものと似ている。静岡市の建設局によると、これは太平洋岸自転車道がナショナルサイクルルートに指定される以前からあったもので、今後補修する場合は規定の大きさの矢羽根に置き換えられていくという。
清水灯台(愛称:三保灯台)の前がルート。日本最古の鉄筋コンクリート造りの灯台で、頂部の風見鶏は三保松原の羽衣伝説にちなみ天女の形をしている。
防波堤上の道を進む。
「自転車」という表示と矢印で松林の中に誘導されるが、太平洋岸自転車道の表示がないので直進してしまった。だがここで松林を抜けるのが正解。
松林の中はこんな感じ。ついにダート区間に。トイレの建物の右側へ進む。
先ほどの右折地点を無視してまっすぐ行くと、堤防の突き当りに出て、やはり松林の中へ。
ここから海沿いに歩いていくと、ずっと砂地でエラいことになる(なった)。
ルートは御穂神社の前を通って再び怪しげな道へ。
そこを抜けると再び海岸線の道に戻る。
安倍川を渡る手前でも工事で迂回。
清水から牧之原まで
安倍川を渡った静岡市駿河区の国道150号。ここでなぜか道の右側へと誘導される。
この歩道が和歌山方面、銚子方面両方で共用する太平洋岸自転車道。500mほど右側の歩道を走る。
ここで右折、丸子川(まりこがわ)に沿っての焼津大迂回路の始まりだ。
丸子川の右岸と左岸を激しくスイッチしながら、国道1号と合流。
国道1号の側道を行く。この広い歩道は……。70年代に整備された太平洋岸自転車道の名残り(?)がここにも!
この先、国道の長いトンネルを避けて宇津ノ谷峠を越える。そして朝比奈川沿いに南下して焼津市街に。
しかしこの大迂回のせいで予定がすっかり狂い、暗くなってしまったので写真はない。先ほどの丸子川の分岐から焼津駅前のホテルまで、15kmほどの距離を撮影したり確認したりしながらだが2時間もかかっている。
焼津市街から県道416号、国道150号をたどって大井川を渡る。渡った先は階段だ。
MAPでは県道79号をずっと行くことになっているが、実際の案内では並行して南側を走る旧静岡鉄道駿遠線の軌道跡を通る。だが筆者は県道230号を渡ったところでもとのルートに戻れず県道79号に戻ってしまった。
そして問題の榛原郡吉田町にある神戸交差点。ここに左折の案内がなく、いいペースで通り過ぎてしまった。しかし不安になってMAPを確認すると、この神戸交差点で左折することになっている。
しかしこのMAPが間違っていて、実際はひとつ南側の自転車歩行者道(旧静岡鉄道駿遠線の軌道跡)が正しいルート。ルートじゃないおころを走っているのだから、案内があるわけはない。正規ルートはその自転車歩行者道でカーブを描いて左折し、先の県道34号を地下道で横断して道路右側の自転車歩行者道を走る、というのが正しいようだ。
この案内の左折部分。これを見てもわからないけど。
これはこの記事を書くにあたってストリートビューと自分のGPSログで確認して判明したことで、走っているときは激しく混乱していた。
そこからは先ほどの軌道跡をたどっていけばいい。
快適な軌道跡のサイクリングロード。
太平洋岸自転車道全線を通じて、対向する矢羽根がいちばん近いのがここ。
牧之原から御前崎まで
牧之原市の静波海水浴場に出る。海を見るのが久しぶりのような気がする。
勝間田川を渡ると、再び旧静岡鉄道駿遠線の軌道跡を走る。
いったん国道150号、県道69号を通ったあと、牧之原市の市街にある小堤山公園付近から再び軌道跡が始まる。小堤山公園の下をくぐる小堤山トンネルに解説があって、歴史がよくわかる。
軌道跡を快適に走る。
地頭方駅跡に出た。当時の駅舎の写真があった。
階段の地下通路で国道150号をくぐる。
みなとトンネルをくぐる。御前崎への入り口だ。
御前崎ヤシの木通り。海が近いことを感じさせるものの、まだ海は見えない。
マリンパーク御前崎の前をすぎると……海だ!
御前崎に到着!
御前崎から袋井まで
坂の上から。御前崎風力発電所、浜岡原子力発電所などが見える。
国道150号で新野川を渡り、これから海沿いのサイクリングロードへ。県道浜松御前崎自転車道線だ。
浜岡砂丘(白砂公園)わきの道を抜け、海に出る。
太平洋岸自転車道のハイライトと言ってもいいだろう、海岸の爽快な道。これぞ太平洋岸自転車道だ。
砂の堆積もあるが笑って許せるレベル。
ところがさっそく迂回路が。
というかこの迂回路はすでに恒常化したルートとなっていて、MAPにもここがルートとして掲載されている。
延々田舎道の迂回路を走ることになるが、案内はしっかりしていて、迷うことはない。
菊川河口にかかる潮騒橋。自転車歩行者専用の橋として、日本でも有数の規模だと思う。
潮騒橋だけ渡らせて、ルートは再び田舎道へ。交通量が少ないのはいいが、コンビニなどがないので注意。
弁天大橋で再び海岸線へ。
ここで銚子側を振り返ると、かなり大規模な工事をしており、これが開通すると非常に快適に走れるようになりそうだ。
弁天大橋を渡ると袋井市。歓迎(?)の路面ペイントが。走っていて県境は標識などで意識できても、市境はわからない。こういう表示はうれしい。
袋井から浜松まで
袋井市の浅羽体育センター近くの路上に、モニュメンタルペイントを発見! ここで写真を撮ってください、ってことだろう。こういうSNSを意識した場所はスタートの銚子とゴールの和歌山にしかなかった。もっと作ればいいのに。
太田川を渡る手前で海岸線から内陸へ。階段だ。自転車の車輪を乗せて通過しやすいようになっている。
太田川を渡って再び海岸線に出ようとするが、工事中で迂回の指示。
ここは以前走ったとき、松林の間を縫って走るなかなか楽しい区間だった。天竜川河口にはカッコいい掛塚灯台もあるのだが、全部迂回になっている。
やっと天竜川に出て、橋を渡るために北上する。この左側の堤防の向こうが天竜川だ。
天竜川を渡り浜松市に入る。河口側の遠州大橋ではなく、ひとつ川上の掛塚橋を渡る。
そこからまた天竜川右岸を海に向かって走る。
で、また工事中。
散歩の人に聞いたら自転車なら行けるというので、車道側を走って行ってみたが、完全に阻まれUターン。
結局指示どおりに迂回し、夜の自転車歩行者道を走る。
中田島砂丘でこの日のゴール。
浜松から湖西まで
中田島砂丘からは海沿いの路肩の狭い「さざんか通り」を走り、舞阪宿の松並木へ。
浜名湖の南にある弁天島に入る。ここから湖西市だ。自転車は通れない浜名大橋が見える。ルートから浜名湖が見渡せる場所はなく、浜名湖に来た!という感じはしない。
道の駅潮見坂をすぎると一瞬海に出る。ここは和歌山行きと銚子方面でルートが分岐している部分だ。
ここ、大丈夫なの?という感じの道を行く。
すぐに国道1号バイパスの側道に出る。ここは上りがけっこう厳しい。
上り切って国道42号へ。国道なのだが交通量の少ない田舎道だ。
すぐに愛知県との県境に!これで長い長い静岡県が終了。
次回は愛知県のエリア解説編
執筆:岩田淳雄
愛知県出身、千葉県在住。 |