【京都府】水のまち、酒どころ、歴史の転換点 ~自転車で巡る京都市伏見の魅力~
目次
はじめに
京都市伏見区といえば、誰もが知っている伏見稲荷大社。
しかし! 伏見稲荷大社だけで伏見を語れるかといえば、答えはNoです!なぜなら伏見には、酒蔵や古い街なみ、水辺の美しい眺め、日本の歴史を語る上で重要な出来事を今に伝える歴史・・・そんな魅力にあふれています。
これを味わうには、自転車で感じることが一番!ということで、伏見の魅力を自転車で探索してきました。
スタートは京都の港口であった、京阪中書島駅から。近くの京都府立伏見港公園ではレンタサイクルを借りることができますよ。
まずは、まちなか散策。車では入りにくいまちなかも、自転車ではスイスイ!
京阪中書島駅の近くでは、あちらこちらに見られる酒蔵、その煙突からはもくもくと煙が立ち昇り、お米を蒸すかおりがほのかに感じられます。香りも堪能できる、サイクリングならではの楽しみですね。
1. 月桂冠 旧本社
まず向かったのは、月桂冠 旧本社。1995年8月まで月桂冠・本店として使われていたそうです。2007年には近代化産業遺産(経済産業省)にも選ばれています。
現在は「伏見夢百衆(ふしみゆめひゃくしゅう)」として、伏見の清酒約100種をはじめ、様々な伏見名物が販売されています。喫茶ではきき酒や水出し珈琲・紅茶をはじめ甘味類も豊富。旅に便利な伏見の観光パンフレット等も揃っています。
2. キザクラカッパカントリー
つづいて、キザクラカッパカントリーへ。
情緒あふれる酒蔵の雰囲気を堪能できますよ。
できたての地ビールや、こだわりの料理が楽しめ、ここでしか買えない黄桜のお酒や地ビール、オリジナルグッズなどを販売するお店も併設されています。
3. 京橋
電気鉄道発祥の地の碑を南へ曲がり竹田街道を下ると京橋につきました。
龍馬とお龍 愛の旅路像のある水辺の空間。ちょっと休憩
ここは慶長年間、京都市中と伏見をつなぐ高瀬川の開削によってできた船着場。旅人や貨物を輸送する船で大いに栄えたそうです。
さて、ここまでは中書島駅から歩いても回れるエリア。
しかし、しかし、伏見の歴史の魅力はこんなもんじゃない。自転車だから、まだまだたくさんのところを気軽に巡ることができます。
4. 三栖閘門(こうもん)
中書島から西へ進み、濠川沿いを南へ。伏見みなと広場ではしゃぐ子どもを横目に、宇治川に向かってどんどん進むと、真っ赤な閘門が見えてきました。パナマ運河と同じ仕組みを持つ、昭和初期の土木遺産といえる立派な閘門です。
弁天橋からここまで江戸時代の十石舟(じっこくぶね)を模した観光船が行き来しており、伏見が水運のまちだということを改めて実感します。
※三栖閘門資料館 は新コロナウィルス感染拡大防止のため、
5. 濠川・出会い橋
濠川沿いをのんびりと走っていると、木々に囲まれた静かな親水空間でちょっと一息。
河辺に座っていたところ、不思議な形状の橋を発見…
行ってみよう!ということで行ってみると、実はそこは映画「君の膵臓をたべたい」のポスターが撮影された出会い橋でした。
桜は咲いていませんでしたが、春になったら友達を連れて、ポスターと同じ角度で写真を撮ってみたいです。
6. 巨椋大橋
第二京阪道路の横の国道1号の緩やかな坂の歩道を登っていきます。
長い坂を登り切ると、宇治川を真下に左手に伏見の町を、右手に巨椋池干拓地を一望できる開放的な眺めが!!
立ち止まってこの眺めを堪能できるのは、自転車旅だけの特権ですね!
7. 黄桜 伏水蔵
橋をUターンして次の目的地は黄桜伏水蔵。
すぐ近くにある専用の駐車場に駐輪できます。
入り口にある金色の彼はカッパ課長です。まんまるで可愛い(笑)。
伏水蔵では実際の酒造りの工程や使用する設備を見学することができます(見学の際は電話予約が必要です)。
酒は生き物!!黄桜さんのお酒への情熱をじっくりと学び…
インテリアにもなりそうな、全国の地酒に感動し…
見学の後は、できたての日本酒や地ビールを堪能できちゃうレストラン&ショップへ!
飲酒運転はできないので、お土産をリュックに入れてサイクリングを続けます
鴨川に出たら、鳥羽伏見戦跡を目指して、しばらく川沿いをのんびり走ります。
この付近は、桂川サイクリングロード。たくさんのサイクリストが利用しています。
8. 鳥羽離宮跡公園・小枝橋
サイクリングロードのコースから外れて少し北へ行くと鳥羽離宮跡公園があります。鳥羽離宮は、白河上皇の院政開始の象徴として造営されたそうです。院政の終焉とともに離宮内のほとんどが姿を消しましたが、発掘調査を経て、離宮内で最初に造営された南殿跡が国の史跡に指定され、史跡公園として整備されました。離宮の名残である秋の山には鳥羽伏見の戦いの古戦場跡を記す石碑が建てられています。
鳥羽離宮跡公園から小枝橋は、すぐ近く。
小枝橋は鳥羽伏見の戦い勃発の地で、この戦いがきっかけで2年にわたる戊辰戦争が始まりました。鳥羽離宮跡の一帯は戦場となり、大砲の音を合図に伏見の町も戦場となりました。ここはまさに歴史の転換点と言える場所です。
9. 城南宮
国道1号を東へ超えると、続いての目的地は太陽・月・星を合わせた「三光の御神紋」がシンボルマークの城南宮です。
平安京に都が遷った時、国の安泰と都の守護を願って創建されました。城南宮の神様には、四方・四角の八方に加えて、上下をあわせた十の方向をお守りしてくれる十方円満のご利益があると言われています。京都では交通安全の御祓いを受けることで有名です。京都ナンバーの車には城南宮の青いバッチがよく付いています。
自転車での安全な移動を願って、二拝二拍手一拝。私たちも、きちんと参拝してきました。
10. この付近 近藤勇遭難の地
藤森神社を目指して東に進んでいくと、料亭の前に「近藤勇遭難の地」と書かれた石碑を発見。軍議のため二条城に赴く途中、近藤はこの付近で狙撃されたそうです。このとき負った傷を治療するために大阪に退き、近藤は鳥羽伏見の戦いへ参戦することが出来なかったといいます。
11. 藤森神社
墨染駅の先にある交差点を左折して北へ。この角は江戸時代に京都と大坂・奈良・大津へ向かう街道の分かれ道で、多くの旅人が行き交いました。
そして藤森神社に到着。ここは菖蒲の節句発祥の神社としても知られ、今日では勝運と馬の神様として、競馬関係者、競馬ファンの参拝でにぎわいます。
12. 伏見銀座跡
琵琶湖疏水沿いにインクライン跡を眺めながら伏見に戻ります。途中山の上に建つ伏見桃山城を見上げることもでき、ここが城下町であることを印象付けられます。南に進むと大手筋商店街とよばれるアーケード街に到着します。商店街の中は自転車を押して歩きます!
建物の片隅に石碑と説明版を発見。江戸時代初頭、徳川家康によってはじめて銀座が置かれた場所だそうです。“銀座”発祥の地は伏見にあったんですね。
13. 魚三楼・駿河屋
京阪電車伏見桃山駅を右折すると京町通りにお店を構える料亭・魚三楼があります。
その格子戸には、鳥羽伏見の戦いの弾痕が!(重要な史跡ですので弾痕には触れないでください)。この次に行く伏見奉行所と北側にある御香宮神社と間で銃弾や大砲の弾が飛び交ったそうです。
その向かいには、寒天と和三盆を用いた煉羊羹づくりの生みの親、駿河屋本店があります。
昔ながらの手流しでつくる「古代伏見羊羹」は、表面に結晶化したお砂糖の甘みとシャリっとした食感がくせになりそう。
14. 伏見奉行所
南へ向かうと伏見奉行所跡に到着します。
鳥羽伏見の戦いのとき、京都を追われた会津藩や新選組が、ここに立てこもって新政府軍と激戦を繰り広げたと言われています。
背景に見える団地の形状が独特で、外壁も板張り。かつての奉行所はこんな姿だったのかなと想像を膨らませます。
15. 澱川橋梁
さて、サイクルツアーもいよいよ終盤戦です。
踏切を越えると宇治川につきます。そして、そこには迫力満点の澱川橋梁(よどがわきょうりょう)が!!旧奈良電鉄によって宇治川に架けられた下路式曲弦プラット分格トラス橋で、橋脚の無いシルエットがとてもかっこいいです。
近くの昭和初期から旅館を営む木造3階建ての月見館には再現された江戸時代の三十石船があり、共に素敵な風景!写真をパチリ。
中書島駅・伏見港公園に戻る際は十石舟の乗り場もあり人でにぎわっているため、走行に注意が必要です。宇治川派流には酒蔵が見え、酒どころ伏見の風情を感じられます。
まとめ
一日中、自転車での移動でしたが、不思議と疲れはありません!
序盤は、伏見の歴史にワクワク、途中からは自転車の気持ちよさが加わって最高でした!
水のまち伏見、酒どころ伏見、歴史の転換点のまち伏見。自転車で巡ることができる範囲に伏見の魅力がぎゅっと詰まっていました!
今回のサイクリング情報
- 所要時間 約6.5時間(10:00~16:30)… 休憩・食事込み
- 距離:約20km
- 最大標高差:26m … 緩やかにゆったりとしたルートでした
今回のルートはこちら
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今回は、伏見を熟知されたサイクルツアーガイドのAlley Guideの中尾さんに案内してもらいました。
Alley Guideさんは、京都市や山城地域といった周辺のサイクルツアーを企画され「世の中が変わった転換点」、「今も継がれている発祥の地」といった今も残る歴史を昔の街道をたどりながらガイドをされています。
今日のツアーのほかにも、Alley Guideさんでは、いろいろなツアーを企画されています。
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取材・執筆:TABIRIN事務局
協力:Alley Guide