実走調査!日本の自転車道 ルート1 富山湾岸サイクリングコース ②実走編その2
日本のサイクリングルートを走破していくシリーズ。国土交通省のナショナルサイクルルートHPに掲載されている「サイクルツーリズムの推進モデルルート」を中心に、各地の自転車道を不定期連載で紹介する。第3回めは富山湾岸サイクリングコースの実走レポートその2。
DATA
富山県富山市岩瀬→新潟県糸魚川市市振駅
距離:61km 獲得標高:175m 最大標高:10m
実走調査日:2023年7月27日
目次
しんきろうサイクリングコースってなんだ?
ほんとうは前日の早めに宿に着き、夕暮れに岩瀬の古い町並みを見てまわるつもりだったができなかったので今日は朝イチで散策。メインの通りだけでなく、観光地化されていない周辺の路地も雰囲気があってよかった。
岩瀬を出て少し走るとさっそく事件が。分岐誘導標識に「しんきろうサイクリングコース」の文字。あれ? 富山湾岸サイクリングコースじゃないの? 一瞬戸惑ったが、おそらくルートが重複してるんだろうということで、しんきろうサイクリングコースの表示に従って進むことに。公式HPのMAPで見てもルートは同一のようだ。
後で問い合わせてみると、富山湾岸より先にしんきろうが整備されて、標識なども新しいのでそのままになっているということだった。ふーん。でもナショナルサイクルルートとしちゃまずいだろう、それじゃ。この状態は生地(いくじ)まで続いた。
岩瀬の古い町並み。観光地として整備しているようだけど、あんまり整備しないほうが雰囲気があっていい
この手前の駐車場に、もと歌舞伎座という映画館があったらしい
映画とは違い予告編なく現れるしんきろうサイクリングコースの分岐案内標識。案内によればこのしんきろうサイクリングコースは富山地方鉄道富山港線の岩瀬浜駅から黒部市のJR生地駅まで続いている
滑川の街道がいい感じ
岩瀬浜海水浴場からは海岸沿いの自転車歩行者専用道が続く。危険な車止めなどをチェックしつつ、ちんたら走っていく。今日も酷暑だ。
こういう海岸の松林を抜けていく自転車歩行者専用道は、最初はいいんだけどすぐに飽きる。海の眺めがいいわけでもなく、生活感もなく単調だから。
常願寺川を渡り滑川市へ。白石川を渡るとだんだん雰囲気がよくなってくる。ここは県道1号富山魚津線。もうひとつ内陸側にふれあい通りという広い道があり、クルマはそっちを走るのでここは交通量も少ない。ああ、いい感じのサイクリングだなあ、と思っているとさらに味のある街道に。県道1号というくらいだから、そうとう歴史のある道なんだろう。調べてみたらこのあたりはなめりかわ宿場回廊と呼ばれているエリアで、16世紀初頭から加賀藩の宿場町として栄えた場所だという。ふーん。いいじゃないか滑川。今回はルートしか走らなかったが、次回はゆっくり散策してみたいな。
松林のなかのサイクリングロード。夏でなければもっと快適なのか?
解説編でも書いた見落としがちな車止め。横方向に置いたら通りにくいのかもしれないけど
今川橋を渡る
白岩川。前の週に行われた水道橋まつりの提灯がまだ残っていた
滑川市に入る手前の海岸沿い
「大岩道 是ヨリ四里」と彫られた石の道標。立山・大岩への参拝者に向けたものだということだ。以前は別の場所にあったという説明書きが
滑川の宿場回廊。今回のルートでいちばん気に入った場所だ
松林の中のサイクリングロードはつまらない
建物がカッコいいほたるいかミュージアムで大休止。隣接するタラソピアという海洋深海水体験施設(プール)は閉業していた。自販機でペットボトル2本を飲み干し、さらに進む。地味な向かい風がイヤな感じ。
ここから再び防風林に沿った自転車歩行者専用道に。海も見えずやはりつまらない。こういうルートを「快適な海岸線のサイクリングコース」だと思っているのは、自転車に乗らない観光行政マンだけだと思う。
ほたるいかミュージアム。ウェーブパークなめりかわという道の駅の一部。食事もできる
ここからダブルルート。左折が海沿いで、直進が荒天時のルート。この表示だけじゃわからないよお
滑川港をぐるっと回り込んで松林の自転車歩行者専用道へ
こういう感じの道を延々と走る。木陰もなく太陽がガンガン照りつける。自販機もない。泣きそう
見つけると幸せになれると言われている(?)ナビゲーターラインとセットのミニミニ富山湾岸シンボルピクトグラム。俺はルート上で5カ所くらい見つけました
こういう休憩所も整備されている。トイレは使えなかった
ミラージュランドというアミューズメント施設の観覧車が見える
ミラージュランド手前。富山湾岸サイクリングコースは左折。直進は? 調べてみたら「魚津市サイクリングマップ(PDF)」では直進が正規のコースとなっている。ええ?
次のサイクルステーションまでの距離を示す道標。太平洋岸自転車道では小さな字でどんな施設までの距離かが書いてある(走りながらでは読めない)が、ここでは表示なし。たいがい道の駅
生地で昼食難民に
道の駅蜃気楼に到着。すでに13時なので食事をしたいところだが、食堂がビミョーに観光地値段なのと暑いせいで食欲もイマイチなのでアイスクリームでクールダウンするだけにして、食事は先で探すことにする。そうだ、以前取材で訪れた道の駅生地(いくじ)にレストランがあった。グーグルマップで確認したら15時までやっている。よし。
海岸沿いを走って黒部市生地へ。道の駅のレストラン到着は14時。入っていくと「すみませーん、今日は2時で終わりなんですー」。おい。
このへんで食事ができるとこはないか聞くと、「うーん、このへんはあんまり……。牡蠣の星とか……」。そのレストランは知ってるが、高級でサイクリングの昼食にはどうか。ディナーならいいんだけど。
結局、コンビニでパンとペットコーヒー。まあサイクリングあるあるだ。いつもいつも名物料理が食べられるとは限らない。
道の駅蜃気楼にあるモニュメント「風の地平線 蜃気楼」
お刺身定食1900円にビビる庶民な俺。ソフトクリームでがまん
冷房の効いたところで食べるソフトクリームでリフレッシュ
富山の方言。きときとは有名。正座する→おちんちんかく で爆笑
3つめのハートマークのモニュメント。ここは蜃気楼のビューポイント
ルートでも最高に気持ちいいシーサイドロード。日本海とは思えない
ファミリーマート前の駐輪場。クルマの駐車場もあり、このあたりも蜃気楼スポットらしい
炎天下で散歩中のおじさんに写真を撮ってもらった。どこから来てどこへ行くのかと聞かれたので氷見から朝日まで走っていると答えると、例によって驚かれる。俺はどこから来てどこへ行くのか。哲学的な命題だ
また出た。これは先ほどの魚津市サイクリングマップによれば直進すると「田園コース」(これも富山県が作ったルート)への接続コースということなんだけど、つまり魚津市からすると、ここを左折するとそのまま富山湾岸サイクリングコースで黒部市へ行っちゃうんだけど、真っ直ぐ行くと魚津市内の田園コースに出られるからそっちに行って魚津市内で楽しんでね、ということなのだろう。まぎらわしいわ!! チョークで✕印が付けられているところを見ると、「これアカンから表示変えよう」ってことなのかな
道の駅生地。この日レストランは14時まで。腹が減った
結局コンビニだよ
世界的にも珍しい旋回可動橋
そこから生地の街中を散策。生地には清水(しょうず)という、黒部川の伏流水が湧き出ている場所がたくさんあり、観光名所となっている。もともとは地域の人たちが野菜や食器を洗ったりする生活用の水場なのだが、現在は一部をのぞきほとんど観光用になっているようだ。
そして生地での最大の目当ては生地中橋。黒部漁港にかかる可動式の橋で、もとは上下に開閉する昇降式の橋だったものを、橋の片側を軸として水平に回転する旋回式可動橋に架け替えたという。この旋回式可動橋は世界でも珍しいものだそうだ。
前に取材で来たときは運良く船が通るのに行き当たり、橋が動くのを見られたが、今回はしばらく待ったものの船が来る気配はなく、橋はピクリとも動かなかった。残念だ。
生地の清水。一部はまだ生活用に使われているようだ
生地中橋。こちら側を軸にして橋が水平に回転する
反対側。動く前に少し持ち上がる
橋がこちら側に移動してくる。知る人ぞ知るというか、興味のない人にはまったく興味のないB級スポットという扱いだが、俺にはビシビシ刺さる場所。だって道路が水平に動くんだよ? すごくない?
防潮堤の内側を延々と走る
そこから再び自転車歩行者専用道。これが防潮堤の内側(下側)を延々と走らされる道。海は見えないしつまらない。俺と前後して同じルートを逆から走った知り合いも「あれなんなん? 修行?」って言ってた。防潮堤の海側には、海が見える道が続いていて、ずっと楽しそうなんだけど。なんでそっちをルートにしないのかと思うが、道路として規制されていないとか、管轄が道路じゃなくて港湾だとか、いろいろ事情があるのだろう。最近は走るだけでそういう行政の苦労もわかるようになってきた。俺も成長したのだ(笑)。
黒部川を渡る
ここも荒天時用のダブルルートとの分岐。説明はない。当然直進。ちなみに富山湾岸サイクリングコースHPのMAPではこの少し手前、「牡蠣の星」というレストランのところから県道2号方面に入っていくことになっているが、新しい道ができて、今はそのまま直進できる
生地を過ぎて入善町に入ると分岐誘導標識の表示がしんきろうサイクリングコースから富山湾岸サイクリングコースに戻る
歩行者に対して注意しろというのはわかるが、クルマに注意しろというのはどうなんだ? クルマに対して自転車に注意しろというべきだろう。おじさんはそういう細かいところにうるさいのだ
ずっとこんな道なんで、ハシゴがあるところで防波堤に登ってみたら
海側にいい道あるじゃーん!
なぜ海側の道を走らせないのか、と思うよね
風力発電。小さく見える海洋上の風車は、入善洋上風力発電施設。日本でもまだ数カ所しかない洋上の発電施設だ
県道60号に出た。ヒスイテラスまであと少し
突然現れた行き止まりがゴール地点
そしてひすい海岸にあるサイクルステーション、ヒスイテラスへ。アイスコーヒーでも飲みたかったが飲食施設はなく、海岸で拾ったヒスイの鑑定をしてくれるコーナーと、ライフジャケット?の貸出をしているだけ。思いのほか何もない施設。
冷房の効いていない館内でしばらく休んで、さあゴールまでラストスパート……じゃなく、相変わらずの牛歩戦術で進む。ヒスイテラス横の駐車場から防波堤の道に入って3kmほど。ゴールは突然現れた。というか道が行き止まりに。はあ?と思ったら少し広場みたいになったその場所に起終点を示すモニュメントが。おお! ここが朝日町側の起終点だった。まさか行き止まりの場所にあるとは。おそらくナショナルサイクルルート唯一の、いや世界でも珍しい「行き止まり自転車道」なのでは(興奮)?
ヒスイテラス。館内で自販機のスポドリを飲んでヘバっていたら、「5時で閉館です」と追い出された
県道60号から防波堤の道へ。ゴールまであと少し
いきなり現れた行き止まり。ここがゴールなのか!?
ここまでと書いてある! ゴールです。パチパチパチ
2023年に入って作られたばかりのモニュメント。ルートを形どったプレートを、ポールに取り付けてある。周囲の景色がよくないので、こういう撮り方がいいかな
残念! サイクルトレインは時間外
とりあえずルート全走破ということで写真を撮りまくる。
そして名残惜しいが富山湾岸サイクリングコースをあとにすることに。ここからはヒスイテラスの前にあるあいの風とやま鉄道の越中宮崎駅まで戻らなければならないかと思っていたが、ちょっと戻ったところに線路をくぐって国道8号に出られるアンダーパスが。グーグルマップには載っていない道だった。これをくぐればすぐに新潟県に入って市振駅から輪行できる。
で、市振駅に着いてみると、なんとえちごトキめき鉄道(新潟側に入るとあいの風とやま鉄道から会社が変わる)ではサイクルトレインを絶賛実施中。今晩は糸魚川に泊まり、翌日は別のルートをサイクリングしようと思っていたので、これは超ラッキー!
ところが時間制限があり、下り(直江津方面)は市振駅発15時06分発の電車まで。今は18時10分。がーん。そして次の糸魚川方面行きは19時06分。がーんがーん。結局のんびり輪行支度をして自販機のない駅で喉の乾きに耐えながら電車を待った。
グーグルマップには載っていない線路をくぐる道
国道側には案内もあった。市振駅まで輪行で来て氷見側に走る人向けか
なんとサイクルトレイン実施中
しかし時間外
いい感じにひなびた市振駅で1時間
19時06分発の直江津行に乗る。今回は別取材のため糸魚川に泊まったが、この電車で糸魚川から新幹線に乗り換えると千葉の自宅最寄り駅には23時52分着。ギリだね
DATA
とやまサイクルナビ
https://cycling-toyama.jp/
とやまサイクリングマップ
https://cycling-toyama.jp/wp-content/themes/cyclemap/top/pdf/TOYAMACYCLINGMAP_jp.pdf
まとめ
シリーズ1回目として選んだ富山湾岸サイクリングコース。東京から行きやすく、ナショナルサイクルルートということで選んだが、いろいろ勉強になった。総合的にはさすがナショナルサイクルルートといえるものだったが、しんきろうサイクリングコースとの案内の交錯など、うーんという部分もあった。
だが「サイクリングコース」といういまどきイケてないルート名称がしんきろうサイクリングコースと揃える意味合いだったのだろうとか、いろいろ発見?も多かった。
また実際に公共交通機関を使ってアプローチしてみて、アクセスには注意が必要なこともわかった。これらは調査者としての視点だが、いちサイクリストとして言わせてもらうと……。
次回は涼しい季節に来たーい! 絶対にもっと楽しいと思うもん。
執筆:岩田淳雄
愛知県出身、千葉県在住。 |
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