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太平洋岸自転車道実走調査⑲ ルート上の珍百景&おもしろ名所


2022年秋にナショナルサイクルルートである太平洋岸自転車道を全ルートを実走調査した経験をもとに、その全容を紹介していくシリーズ。
お待たせしました、今回はルート上で見つけた珍しいスポットや、なんだこりゃ?なものを紹介していくおもしろ総集編、名付けて「太平洋岸自転車道珍百景」。お楽しみください。

おもしろ珍矢羽根ベスト5

太平洋岸自転車道を走るときに頼りになるのが路面標示。自転車の走行空間を表す矢羽根や、方向を示す路面標示は統一基準が定められていて、どこでも同じもの……のはずが、そうでもない。そのエリアならではの事情や経緯により、さまざまな「珍種」が存在する。
そんな変わり種たちベスト5を第5位から紹介していこう。

5位:三保半島のミニミニ矢羽根

静岡県の清水区。三保松原で有名な三保半島にある超ミニサイズの連続矢羽根。小さいにもほどがある! これはナショナルサイクルルート指定前からあったもので、今後は規定のサイズに変更していくという。同様のものは神奈川県の湘南エリアなどでもも見られる。

「三保の小矢羽根」とマニアに珍重されるミニ連続矢羽根


湘南エリアにも見られる「サザン・オール小矢羽根ーズ」

4位:サイクリングロードに矢羽根!?

矢羽根は「自転車の走行空間を示す」ものとされている。
つまりクルマと混走する場所にはあるが、すべてが自転車の走行空間である自転車歩行者専用道にはないはずのもの。
ところが千葉県匝瑳市の海岸沿いを走る自転車歩行者専用道には堂々とした矢羽根が!なんでだ!?

散歩する歩行者などに「ここは自転車が通るんだね」と思わせる効果はある

3位:伊豆半島のミニ矢羽根

伊豆半島に入ると出現する、サイズの小さい矢羽根。これは太平洋岸自転車道がナショナルサイクルルートに指定される前に敷設されたもので、路肩の狭さなど伊豆の道路事情を考慮しての措置だという。
今後も伊豆はこれでいく!ということだ。

路面標示や路側帯と比べると、その小ささがわかる。標準のものとくらべ半分程度の大きさだ。伊豆半島はすべてこの大きさ。伊豆半島を回って沼津に入ると標準タイプに変わり「矢羽根デカッ!」と思う

2位:蒲原・由比の薄紫矢羽根

太平洋岸自転車道が静岡市清水区の蒲原に差し掛かるところで現れる、ビミョーに色の違う矢羽根。
聞いてみたら「工事の時期の関係などで多少色が変わることはある」ということだが、そんな馬鹿な!?と岩田は思っている。またこのあたりには「薄い」矢羽根もある。

個人的には環境に配慮したものだろうと睨んでいる


由比にある薄型の矢羽根。いすれにせよこれらは太平洋岸自転車道用の矢羽根ではないことは判明しているのだが

1位:鬼ヶ城の鬼曲がり矢羽根

ナンバーワンはぶっちぎりでコレ!
三重県熊野市の景勝地、鬼ヶ城の前を通過する歩道橋の先、鬼ヶ城歩道トンネルの前にある、90度曲がった珍矢羽根。いや、もう矢には見えないから矢羽根でもない。これはトンネル内の歩道部分を通らせるために苦肉の策として採用されたもの。わかりやすい!

もう矢羽根とは言えない


トンネルは一方通行、その手前まで対面通行という複雑な交通規制がこの芸術を生んだ

ここってホントに太平洋岸自転車道!?

日本が世界に誇るサイクリングルートであるナショナルサイクルルート。
その指定を受けた太平洋岸自転車道だが、そのルートにはなかなか楽しい場所が登場する。

階段自転車道

ルートには階段を通るところもある。青森県の竜飛岬にはクルマが通れない「階段国道」があるが、こちらも自転車が走れない「階段自転車道」だ。
しかしPCRサイクリストたるもの、こんなことでひるんではいられない。担いだり押したりして難所をクリアするのだ。

愛知県田原市戸越町の階段自転車道


静岡県磐田市の浅場海岸近くの階段自転車道。自転車をスムーズに押せるようにスロープが設けられている


静岡県吉田町にも


こんな地下自転車道もある。静岡県牧之原市

由比ワンダーロード

交通標識も路側帯もない、なんとも不思議な道路。
いや、道路じゃなくて空き地を走っているような気分にさせる道路。静岡市清水区の由比から興津へ抜ける区間にある、名付けて「由比ワンダーロード」。
この「ここってホントに道路なの?」感は、ぜひ走って確かめてほしい。

ここがワンダーロードへの入り口


なんだか高速道路と国道の間にできちゃった空き地、って感じの道。標識や路側帯がないのは警察による規制がされていないから。規制されてないってことは警察的には道路と認識してない、ってことらしい。

歩道橋自転車道

太平洋岸自転車道は歩道橋もガンガン渡る。
静岡県駿河区や三重県熊野市にある歩道橋はルートを通じて珍しい歩道橋自転車道だ。もちろんSNS映えスポット。

三重県熊野市の歩道橋自転車道。スロープがあるので自転車を押しやすい

グラベルさんいらっしゃい

ほんの短い区間だが太平洋岸自転車道には未舗装路も存在する。
富士川を渡ったところと三保松原にあるが、こういうのは舗装したりせず、ぜひ「名所」として残してほしい。

静岡県の新富士川橋を渡った先にある短いグラベル区間


静岡市清水区の三保半島にあるグラベル区間。松林を抜ける場所だ

すれ違えない太平洋岸自転車道

こ、ここがホントに日本が世界に誇るナショナルサイクルルートかっ !?と岩田も目を疑った。
静岡県の太平洋岸自転車道にはこんなに細い歩道がルートになっている場所があるんです。静岡県、ワイルドだー。

静岡市駿河区にある国道150号。この場所は和歌山方面行き、銚子行き両方がこの狭い歩道を走る。この写真、ランドナーマニアはトラックの「TOEI」に激しく反応


ここもかなり狭い。静岡市清水区


ここもすごい!静岡県磐田市、太田川を渡ったところ、太平洋岸自転車道狭い道選手権1位かも

砂に書いたラブレター

海岸沿いのサイクリングロードは砂が堆積しやすい。そのためタイミングによってはこんなに砂が堆積していることも。
千葉県、神奈川県、静岡県の海岸沿いではありがちな風景。ここはサハラ砂漠か!?

千葉のサハラと呼ばれる千葉県匝瑳市吉崎浜付近


神奈川の辻堂海岸付近もこんな状態のことが。砂まじりの茅ヶ崎♪どころではない 写真協力:pressports.com

大磯プリンス自転車道

ホテルの敷地内(?)に敷設された矢羽根。ここってホテルの敷地内では!?と誰もが思うおもしろポイント。

こんなとこが太平洋岸自転車道だったなんて。どう見てもホテル内の私道

自転車は横断歩道を渡りましょう

横断歩道も太平洋岸自転車道の一部。道路交通法的には歩行者がいない場合は乗って通れるはすだが、まあ降りて歩くのがいいよね。

静岡県富士市。このあたりはかなりテクニカルにルートが作ってある


静岡県清水区の「由比ワンダーロード」入り口の西倉沢の信号。ここで国道1号をわたる

自転車は右側通行。ええっ!?


写真を反転したわけではない。三重県の紀北町長島にあるダブルルート分岐部分。和歌山川から走ってきて長島トンネル(ルートは歩行者用トンネル)を出ると、こんな路面表示が!

こんな珍スポットを見逃すな!

ほかにもまだまだ楽しいスポットはいっぱい。こんな場所に出合ったら、ぜひ写真におさめて発信しよう!

天国への階段

以前はここに車止めがなく、うっかり突っ込むとそのまま天国行き、ということで名付けられた「天国への階段」。
今はしっかり対策されています。利用者が声を上げることでしっかり改善されていくという、太平洋岸自転車道改善における記念碑的な場所。

和歌山県白浜町の国道42号から自転車歩行者専用道に入る場所にある

出会いの矢羽根

双方向の矢羽根がいちばん接近しているのはどこだ問題。
いくつかの候補があるが、まだ決着はついていない。メジャーを持って計測しながら走る太平洋岸自転車道マニアの出現を待っている!

2021年に全ルートを走破した「和歌山サイクルプロジェクト」が推すのがここ。和歌山県由良町の白崎海洋公園手前にある。写真左がメンバーのGONZAさん、右が野地教弥さん


岩田が推すのはこちら。静岡県吉田町


これもかなりのもの。千葉県匝瑳市。不毛な戦いに終わりはない

ガングロな案内看板

三重県の志摩エリアにだけある、茶色の案内看板。屋外広告物条例による配慮だという。パールロードなどにあるので、見つけたら記念写真を!

同じ志摩市内でも青いものもある。これは三重県志摩市浜島町にある

もうどうにも止まらない

なぜそんなに止まらせたいのか。まったく意味がわからないがゆえに笑ってしまう表示。この「止マレ 一時停止」が連続して登場するからたまらない。「またかよー!」と叫びながらブレーキングするのが正しい走り方。

愛知県田原市には、こんな「止マレ 下車」の指示が多い。きっちり止まって楽しむのが正しい

大磯の関

こんなにも多くの表示を用いながら、それでも旅人を迷わせる、人呼んで「大磯の関」。
作った人は一生懸命ルートを案内しようとしているのだが、それでも初めての人は必ずここで迷ってしまうという呪われた場所。

神奈川県大磯市の大磯港近くにあるワンダースポット。独特の結界が張られた場所で、看板の「太平洋岸自転車道右折してください」という悲痛な呼びかけが、さらに利用者を迷わせる。あなたも事前情報なしで挑戦してみては?

キミの行く道は……そっちじゃない!

矢羽根と路面標示が違う方向を指示する。そんなトラップをかいくぐって走るのが太平洋岸自転車道サバイバー。正しくは路面標示に従う、です。

名所となりつつある静岡市清水区のJR新蒲原駅手前のY字路。路面表示に従い左折が正解です


静岡県沼津市街。この案内看板を見逃したら、矢羽根とともに果てしなく直進できます

キミの行く道は……こっちだ!

矢羽根は自転車の走行空間を明示するもので、進行方向を示すものではない、と国土交通省も明言している(次回の連載にインタビューを掲載)が、どう見ても方向を指示している矢羽根もある。
いいじゃないか、わかりやすければ。

車道から堤防上の道へと力づくで誘導する矢羽根。千葉県旭市


三重県熊野市の鬼ヶ城前にある歩道橋。鬼ヶ城ゴーイングマイウェイ


歩道から車道へ誘導する矢羽根。なぜここで車道に出なければならないのか。矢羽根は黙して語らず

キミの行く道は……どっち?

太平洋岸自転車道にはルートが2方向に分かれる場所がいくつもある。この表示だけではどっちへ行けばいいのかわからない。だからMAPをしっかり確認して走りましょう、ということを教えてくれる案内表示。

三重県の紀北町長島にあるダブルルートの案内看板。どちらに行ってもその先どうなるかはわからない。人生の岐路と同じだ


和歌山県由良町の分岐。危険なトンネルを行くか、険しい山道を選ぶか。自転車人としての生き方を問われる分かれ道

もうどうにでもして!

快調に矢羽根とともに走ってきたのに、急にその矢羽根が信じられなくなるのは沼津市街。どっちへ行けっていうんだ!?

初めてここに出くわしたときは驚いた。もう驚かない。矢羽根なんてそんなもん

太平洋岸自転車道激坂選手権!

ルート上の上り坂(銚子から和歌山方向)のキツさをランキング。個人的な感覚と、データ計測による勾配のキツさで選んだが、距離的にハードな上りも入れてみた。(協力:太平洋岸自転車道をタンデムでつないじゃえプロジェクト)

5位:太地の鯨坂

千葉の銚子にあるドーバーラインの手前「地球の丸く見える展望館」への坂と争って栄えある5位を獲得。
和歌山県太地町の太地港を左手に見ながら上る勾配9%の坂。道の駅たいじの先、くじらのモニュメントやくじらの博物館をすぎて、油断したところに現れる。景色はサイコーだが見る余裕はない。

左手に小さくなっていく太地漁港を見ながらの苦行

4位:潮見坂

道の駅潮見坂をすぎてすぐの、国道1号潮見バイパスの横を走る上り。本来の潮見坂は別の場所にあるが、太平洋岸自転車道サイクリスト的にはここが潮見坂。最初は5%くらいの坂が、最後は瞬間最大勾配12%に!

地元サイクリストが「走るたびにキツいと思う」という潮見坂。じわじわと勾配が増していく

3位:亀石峠

伊豆半島をショートカットするルートにある亀石峠は、海岸から峠まで6.7kmの上り。
6〜7%の上りが続き、瞬間最大勾配は10%。これに匹敵するビッグクライムは三重県尾鷲市の大又トンネルまでの上りだが、勾配で亀石峠の勝ち。

2023年5月にタンデムで太平洋岸自転車道を走破した「太平洋岸自転車道をタンデムでつないじゃえプロジェクト」もここがキツかったと太鼓判

2位:キンチョー坂

和歌山県海南市の大崎漁港からキンチョーでおなじみ大日本除虫菊の和歌山工場までの坂。
とくに上り口の250mは10%超えの激坂。途中下り部分もあるが、たたみかけるように続く上りに心が折れるサイクリスト多数。

上り口からキツいが、その奥に見える坂の勾配に絶叫。岩田は早々にあきらめて押しまくった


キンチョーの工場があるからキンチョー坂

1位:伊良湖のドーナツ坂

勾配でダントツ1位になったのは愛知県の伊良湖岬手前にあるこの坂。
なんと路面がコンクリートのドーナツ(Oリング)模様になっていて、これは全ルートでここだけ。距離は短いが勾配はなんと15%!

アスファルトが流れてしまうような急斜面にコンクリートの舗装がされるんだそうだ


激坂を上り切って見られる絶景

岩田的「映え写真」10選

最後に岩田が撮影した写真のなかから、映えスポット紹介を兼ねて10カット選んでみた。撮影はすべてスマホで、走りながら適当に撮ったものや立ち寄り先で撮ってもらったもの。
天候や時間帯がよくて偶然撮れたものも多いが、太平洋岸自転車道には映えスポットが多いので、ぜひカッコいい写真をねらってみてほしい。


和歌山県串本町の橋杭岩。有名なスポットだが、この写真は道の駅駐車場の先を左に入ったところで撮れる。ほんとうは岩に朝日が当たる早朝がキレイ


愛知県田原市赤羽根町の太平洋ロングビーチに下りていく坂道。通称アカフォルニア(赤羽根のカリフォルニア)


静岡県の菊川にかかる自転車歩行者専用道の橋、潮騒橋。ここで走り写真を撮るとバックに海と風力発電の風車が入ってキレイ


静岡県伊豆市の土肥港。こういう夕暮れの写真は天気とタイミングが合えばどこでも撮れる


和歌山県すさみ町にあるFRONT110は元警察署を改装した観光案内施設。昔使われていた留置場などが残されていて、記念撮影できる


愛知県田原市の自転車歩行者専用道沿いにあった、ビーチハウスか何かの残骸。なぜか雰囲気がある


三重県鳥羽市。生浦湾越しにパールロードの入り口である麻生の浦大橋を望む


静岡県伊東市で見かけた温泉の巨大看板。怖いほどの迫力


三重県鳥羽市の大王埼灯台。ルート上にはカッコいい灯台がたくさんあるので、それを巡るのもおすすめ


静岡市清水区の三保半島にある清水三保海浜公園から見た富士山。光学望遠で画質が荒いが、うまく望遠系のレンズを使えば富士山を大きく入れられる。天気がよければもっとキレイだったろう

次回最終回!

ついに国土交通省へ乗り込む!担当者に「ホントのとこ」を直撃インタビュー


執筆:岩田淳雄

愛知県出身、千葉県在住。
自転車雑誌「サイクルスポーツ 」「バイシクルクラブ」の編集長を歴任。現在は「ペダルプッシャー」を主宰し、サイクリングの啓発活動を展開しています。
https://pedalpusher.jp/

※写真・取材協力:太平洋岸自転車道をタンデムでつないじゃえプロジェクト

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