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太平洋岸自転車道実走調査⑰ 全ルート走破家計簿 1,400km走っていくらかかったか?

2022年秋にナショナルサイクルルートである太平洋岸自転車道を全ルートを実走調査した経験をもとに、その全容を紹介していくシリーズ。今回は岩田(筆者)が1,400kmを走破して実際いくらかかったのかを公開していく。それとともに、どんな宿でどんなふうに過ごし、どんなものを食べながら走ったのかも紹介しよう。

岩田は全行程を2回に分けて走破した。前半は10月に銚子から浜松まで。後半は11月に浜松から和歌山まで。それぞれ8日間、計16日間で走り切った。

宿泊費:全国旅行支援に助けられて約8万円

最初に断っておくと、岩田が走ったときはコロナで減少した観光客数の回復を支援するための「全国旅行支援」事業実施のまっただ中。キャンペーンに参加している宿に泊まると、宿泊費が40%(最大5.000円)割り引きされ、かつ買い物などに使えるクーポンが3,000円ぶんもらえた。この恩恵はデカく、食事とあわせてかなりの節約となった。これがあったからこの旅に出ようと思い立ったと言ってもいい。


千葉県の旅行支援クーポン。もらった日の翌日までに使わなければならない

旅行支援参加宿泊施設は対応ウェブサイトで探した

宿泊費の内訳は上記の表のとおり。前半スタート前泊の銚子、後半スタートの浜松、ゴール後の和歌山の3泊をあわせ、全部で17泊となった。それで合計81,230円。
平均すると4,778円という激安ぶり。しかも2食付きの宿も2件あった。またずいぶん高級な温泉ホテルに安く泊まれたりもした。
キャンペーン参加の宿は半分くらいだと思う。5,000円以下の宿はだいたいキャンペーン価格だ。もしキャンペーンがなければ、おそらくトータルで4〜5万円多くかかっていたことだろう。

全国旅行支援(実際には各県でキャンペーン名が違う)に参加している宿とそうでないところがあるので、それを調べて予約するにはじゃらんや楽天トラベルといった、旅行支援に対応する旅行ウェブサイトで探すのが手っ取り早い。
同じ予約サイトでも全国旅行支援に対応していないサイトもあるので注意。
岩田は基本的に楽天トラベルで予約していった。検索条件の支援対応欄にチェックを入れて探すと、いくつも宿が出てくる。基本的にはビジネスホテルが好き(コインランドリーがあって、コンビニも近い。大浴場があればなおよし)なので、安いビジホ優先で探した。


銚子のホテルサンライズ銚子。ふだんなら素泊まり6,000円以上する宿に3,300円で泊まれた

予約が取りにくい週末の宿は事前に確保

予約は基本的に前日にとればいいかと思っていた。
だが2回に分けて走破したとはいえ、8日間も走れば必ず週末がからみ、予約がとりにくくなる。しかも旅行支援キャンペーン中で出かける人も多い時期だった。そのため金曜と土曜の宿に関しては目処がついた時点で探して予約しておいた。
また安い宿が少ない場所も先手を打った。宿がなくて走行距離が長くなったり短くなったりするのを避けたかったからだ。最悪キャンセルすればいいという覚悟。実際週末に関しては5日くらい前に予約しようとしても、希望する安宿がない場合もあった。


鳥羽の扇芳閣。土曜日の安宿はすべていっぱいで、こんな豪華な温泉ホテルに泊まることに。でも全国旅行支援で素泊まり6,800円

食費:昼食以外は基本的にコンビニで

岩田はじつは食にこだわりがないので、コンビニ飯でかまわないタイプ。
朝は前日に買っておいたパンとヨーグルト、野菜ジュースをコーヒードリンクで流し込む。
昼は頃合いのいい時間に食堂があれば入るし、なければコンビニでやはりパンやおにぎり。
夕食は宿の近くに手頃な定食屋などがあればいいが、なかなか高いこともあって、これまたコンビニで買った惣菜をつまみにノンアルコールビール、というパターンが多かった。

コンビニは全行程で40回以上利用した

走行中のコンビニ休憩でエネルギー補給

スタートまでの移動日、ゴールからの帰宅日などの食費まで入れて、全体としては表のような支出。
見ればわかるとおり、コンビニの利用が異様に多い。毎日3〜4回コンビニを利用している。これは走行中の立ち寄りもあるが、夜の買い出し(夕食と翌日朝食分)も含めてのものだ。
またコンビニがない場所では飲み物の自販機も使った。ざっくりの計算だが全体で66,000円、1日平均で3,700円ほどかかっている。しかもこれは後述する全国旅行支援のクーポンを使っての金額。このクーポンがなければ全体であと20,000円くらい多くかかったのではないか。

ずいぶん食べた。食べずにエネルギー切れになるのが怖かったからだ(言い訳)。どうりで1,400km走ってもやせなかったはずだ。

コンビニのパンやおにぎりを食べながら走っていた

タイミングが合えば昼食は土地の名物を

食事にこだわらないタイプなので、ファミレスでもなんでもかまわないわけだが、できれば土地の名物を食べてみたい。
写真的にもそういうシーンがほしい(編集者目線)。だが太平洋岸自転車道は文字通り太平洋岸沿い。基本的には魚介類が多くなったが、カレーや焼肉定食、中華定食やラーメンなども食べた。

茅ヶ崎で食べたブリの漬け丼1,540円


東伊豆町のねぎトロ丼1,400円


戸田の丸吉食堂で食べた金目鯛の煮付け定食。勢いで注文してしまった2,860円!


由比の名物桜エビを使った桜えびしらすかきあげ定食1,200円


大王崎で食べた海鮮の定食2,500円


橋杭岩の「おざきのひもの」で食べた干物定食1,580円


わかやままるしぇ土屋食堂の和歌山ブラック800円

旅行支援のクーポンを可能な限り使った

全国旅行支援に参加している宿に泊まると、クーポンをもらえた。ほとんどは3000円分なのだが、これが泊まった翌日までに使わなければいけない、というパターンが多くて困った。
数日使えるものもあったが、県単位の事業のため、もらった県で使わなければならない。翌日には次の県に入ってしまう、という場合には期間が長くても当日か翌日に使わなければならない。

コンビニで使えるといいのだが、使えないコンビニも多かった。そのため夕食で使える店をパソコンで探すのだが、なかなかなかったり。
三重県の志摩市では、前日と当日にもらったあわせて6000円分のクーポンを握り締め、食べ物屋を探して駅付近を1時間も歩きまわり(どこも閉店時間が早い)、最後にたどりついた焼肉屋で6,000円ぶん特上カルビなどを食べまくった。
何度も言うが食べ物にこだわりがないので、疲れただけだった。


千葉で余ってしまったクーポン。誰かにあげればよかったのかな


志摩市で焼き肉を食いまくった

交通費:スタート&ゴールの移動費とフェリー代がメイン

自転車で走るのだから交通費なんてかからないと思うかもしれないが、家からスタート地点までとゴールから家までの交通費はかかる。それに加えて2カ所のフェリーは人と自転車の運賃が必要だ。

11月の浜松駅。後半戦のためにまたやってきた

移動は新幹線+JRを使って

全ルートを2回に分けて走破した。
前半はスタートの銚子から浜松まで。これには銚子までと浜松からの交通費がかかる。また後半は浜松までとゴールの和歌山からの移動費。
岩田は千葉在住なのだが、新幹線を使った移動で表のような計算になった。
フェリーを除き33,964円。このあたりは住んでいる地域によって変わるものだ。


新幹線の特大荷物スペースつき座席は券売機でも買える

フェリーは2回利用

太平洋岸自転車道には東京湾を横断する東京湾フェリー、静岡県の土肥から清水までを結ぶ駿河湾フェリー、伊勢湾をわたる伊勢湾フェリーの3航路が公式ルートとして指定されている。
今回使ったのは東京湾フェリーと伊勢湾フェリー。それぞれ人と自転車あわせて1,500円と3,100円だった。混雑期でなければ乗れないことはないだろうと、予約はせずに時刻表を頭に入れてそれに間に合うように走った。


東京湾フェリーのほうが安い

そのほか:コインランドリーは毎日利用

宿泊費、食費、交通費以外にかかる費用。ほとんどはコインランドリー関連だ。
コインランドリーは洗濯が300〜400円、乾燥が15分100円といったパターンが多い。なかには宿の洗濯機を無料で使わせてくれるところや、利用代金100円を入れる、なんてものも。
洗濯は毎日した。ジャージ類の換えを用意せずに荷物を減らして走ったからだ。

この乾燥機は10分100円。機械によって10分で乾くものと、30分くらい回さないと乾かないものがある

そのほか入場料など

そのほか今回は大王埼灯台に寄って入場料を払ったのと、後半寒くて宿での外出用にホームセンターで薄手のスウェットパンツを買ったのも計上した。
それで7,398円。高いのか安いのかわからない。


大王埼灯台の入場料300円。安い

合計:全ルート走破の総費用は約20万円

すべての費用を合計すると、ざっと20万円かかっている。
これに前述した全国旅行支援の宿代、クーポンでまかなった食費を入れると、おそらく25〜26万円かかっていたと思う。ざっくり結論としては東京発で全ルートを2回に分けて走ると25万円!というところ。
いやあ、太平洋岸自転車道、しっかりお金落とさせるなあ。経済効果ありありだ。

宿での過ごし方は?

一日の走行を終えて宿にチェックイン。一息つきたいところだが、明日の走行に備えてやらなければならないことはいろいろある。
最初は段取りが悪くてムダな時間を使うこともあったが、しだいに慣れてシステマチックに順序よく準備ができるようになった。
そのあたりのことを紹介しておこう。


宿に着いてもやることはたくさんある

入浴、洗濯、充電、食事などを効率よくこなす

宿に着いてまずやらなければならないのが充電だ。とにかくライトやサイコンを充電器でコンセントに差す。
そして次は買い出し。夕食と翌日の朝食をコンビニで調達する。
洗濯をする前にジャージ姿のままで買い物をすませる。ホテルに帰ったら次は洗濯。ホテルのコインランドリーは台数が少ない場合があるので、とにかくほかの人より先に放り込むこと。その日に着たウエア全部と、昨日の夜に着たTシャツやパンツも全部ブチ込む。
ホテル内ではホテルの浴衣などですごす。パンツははかない。つまり使った衣類を全部洗濯するのだ。ホテル外のコインランドリーを使う場合は浴衣の下にペラペラのショートパンツを履く。


くれたけイン焼津駅前(写真上)と白浜の素泊まり土佐屋。自転車を部屋まで持ち込める宿は少なく、ロビーや玄関先に入れて施錠というパターンが多かった。建物の裏に停めてくれなんてことも

コインランドリーの洗濯はだいたい40分くらいかかる。そのスキに風呂だ。
風呂から出たらそろそろ洗濯が終わっているので、今度は洗濯物を乾燥機にブチ込む。ここで洗濯機や乾燥機が空いてない場合は時間がずれ込むことになる。先手必勝だ。

風呂から出たら乾燥機が回っているあいだに食事だ。
部屋の冷蔵庫で冷やしてあった風呂上がりのノンアルビールで乾杯!
食べている間に乾燥が終わるので、それを取りに行く。洗濯と乾燥の時間はスマホのタイマーでピックアップを忘れないように管理する。


すさみの海のお宿は「洗濯機は自由に使ってください。洗剤も置いてあるのを使っていいですよ」のパターンだった。ありがたい


土肥の椿荘。乾燥機がなかったがハンガーを貸してくれ、一晩軒下に干したら乾いた

そして食事が終わったらパソコンでメールをチェックしたり、少し仕事の連絡をしたり。
撮影した写真をバックアップするためにパソコンに移す作業もある。フェイスブックで発信しながら走っていたので、そこに掲載するGPSの走行軌跡データもサイコンで表示させてスクショを保存。
さらにその日の写真を選んでコメントを付けてアップする。それが終わったら明日以降の宿を予約したり、ルートをMAPでチェックして昼食の場所のアタリをつけておく。
あとルートの標高差をチェックして覚悟を決める(笑)。


クインテッサホテル伊勢志摩。ホテルでもやることが多くてなかなか寝られない

そんなことをしているうちに23時をまわるので、充電していたライト類を引っこ抜いて代わりにスマホとパソコンを充電状態にして朝までおいておく。
それでやっと一日が終わる。ああ、慌ただしい。

次回は太平洋岸自転車道でルートミスを防ぐ技術

執筆:岩田淳雄

愛知県出身、千葉県在住。
自転車雑誌「サイクルスポーツ 」「バイシクルクラブ」の編集長を歴任。現在は「ペダルプッシャー」を主宰し、サイクリングの啓発活動を展開しています。
https://pedalpusher.jp/

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