旅×自転車 記事

【アルゼンチン】ゴールドラッシュの名残をたどる~チレシート観光 1~

19世紀末、一攫千金を夢見た人々が押し寄せ、金鉱山を中心に熱狂的な採掘活動がおこなわれた小さな町「チレシート」まで、2日間かけて220km走りきり、たどり着いた町は、鉱山発掘の名残を残す歴史的遺産と豊かな自然に囲まれた素敵な場所でした。

▲廃墟になった金鉱山

チリシートの地理など

アルゼンチン ラリオハ州にあるチレシートは、アルゼンチンの首都ブエノスアイレスから北西1200kmに位置し、アンデス山脈の麓にある海抜1000mの高地で、人口4万人の小さな町でアルゼンチンでも有数の鉱山地帯です。

19世紀末には、ヨーロッパを中心とした採掘企業によって、金を中心に地下資源が採掘されていました。

ファマティナ山脈からの潤麗な水資源があるこのまちは、一時は過度な採掘活動により水質汚染が進み、住民の飲み水どころか、農業用水にまで危機が及んでいましたが、現在では、ほぼ全ての採掘活動は停止され水質は改善し、潤沢な天然水が住民の喉を潤しています。

農業ではブドウやオリーブの栽培が盛んで、ワイナリーも多く、クルミや果樹も栽培され、多くが地元で加工されています。

世界で最も高い位置にあるリオハーノ・レール・ケーブル(Cable Caril )

アンデス山脈の標高4,400メートル以上にあるファマティナ山塊(標高6,250メートル)の中心にあるラ・メヒカーナ鉱山から、直線距離で約35キロ離れたチレシト鉄道駅まで金、銀、銅を輸送するための空中ケーブル(ロープウェイ)が建設され、鉱山で採掘された金などを含んだ鉱石は、溶鉱炉のある「サンタ・フロレンティーナ製錬所」に運ばれていたそうです。

「リーハーノ・レール・ケーブル」の建設は、1905年、当時イギリス企業が独占していた金属鉱物の開発を進めるため、アルゼンチンがドイツ企業と契約したのが始まりで、世界で最も長く、高い位置(長さ:34,328メートル、高低差:3,528メートル)に設置され、坑口とチレシートを繋いだ、このレール・ケーブルは、1927年に廃止されるまで22年間活躍しました。

このケーブルは、9つの駅で結ばれた8つの区間と、サンタ・フロレンティーナ(溶鉱炉)につながる区間があり、チレシト駅(標高1,078m)から第9ステーション(通称「ベロプラノ」)のあるラ・メヒカーナ(標高4,412m)までの34.3kmをケーブルカーで結んでいます。

第2駅(El durazno)、第3駅(El parrónまたはEstación de los viejos)、第4駅(Siete cuestas)、第6駅(El Cielito)、第7駅(Calderita nueva)、第8駅(Los Bayos)では、薪を使って動く蒸気機関があり、ケーブルを動かす牽引力と荷馬車の移動に利用されました。

この空中ケーブルは、下り毎時25トン、上り毎時15トンを運ぶことができ、貨車はレールの上を時速9キロメートルで運行していたそうです。

 

エスタシオン2:第二駅(Estacion 2 )

「エスタシオン2(第2駅)」はチレシートの町から、20分程で来ることができます。(標高:1539m)

▲鉱石を運ぶために使われていた、貨車。
▲人が乗るタイプの貨車も。
▲エスタシオン2(第2駅)

数年前に「エスタシオン2」は観光地化され、ロープウェーのように、ケーブルに乗ることができたそうですが、事故が起こり現在は乗ることができないのが残念です。

サンタ・フロレンティーナ製錬所(溶鉱炉)(Hornos de fundición)

エスタシオン2(第2駅)から運ばれた鉱石は、この場所で溶かされ、加工されていました。

今でも鉱物を含んだ鉱石はキラキラしており、人々が一攫千金を夢見て集まってきたというのがわかる気がしました。

▲鉱物を豊富に含んだ鉱石

 

廃墟になった溶鉱炉は、観光地化されておらず、リアリティーがありました。

溶鉱炉跡の保護がされておらず、現地民によって物資が盗まることもあるそうで、早急に保護されることを望みます。

エスタシオン 1 :第一駅 (Estacion 1)

チレシートの中心部から、自転車で15分の距離にある「エスタシオン1 (第1駅)」は、ラ・メヒカーナ鉱山から35kmの距離をレールケーブルで繋ぎ、たどりつく場所です。

この場所から、鉱石はトラックに載せ替えられ、ヨーロッパへの輸出のため港まで運ばれました。

金鉱山(Mina de Oro)

レールケーブルで繋がれている鉱山とは違う場所にある、金鉱山の廃墟に友人のパブロといってみました。

▲パブロのバイクの後ろに乗せてもらい、金鉱山の登山口まで未舗装路を約2時間の道のりです。
▲綺麗な景色

▲川を越えて、
▲登山口に到着です。左が、登山道
▲以前は登山道がありましたが、数年前の大雨で赤茶色の土砂に埋め尽くされてしまいました。
▲道無き道を進みます。

▲天気が良いと歩くのも気持ちがいいですね!
▲雲一つないきれいな空です。
▲1時間半ほど歩き、遠くに金鉱山が見えました。
▲しかしここからが、道がなく。。時間が遅かったこともあり断念。

いつかまた、金剛山へ!

そんな思いを抱きながら降り始めましたが、海抜3000mを超える高地では、日光を失った途端、急激に冷え込み始めます。

▲いくつもあった川越え。
▲なにか生き物でも住んでいそうな洞窟。
▲天井部分に石の堆積層のある不思議な場所も
▲遠くに氷河も見えました。
▲頼りない手作り感のある橋を渡り、終了です。

まとめ

今回は、チレシートの歴史的遺産を訪問しました。

エスタシオン 1, エスタシオン 2, 溶融炉(Hornos de fundición), 金鉱山(Mina de Oro)

20世紀初頭の熱狂的な鉱山活動の足跡を肌で感じることができました。

今でも、海外の鉱山会社がこの地を訪れ、再び鉱山活動を模索しているものの、地元民によって阻止されています。

チレシートで出会った友達も、新規採掘企業の進行の反対活動に参加しているそうです。

鉱山会社のトラックが通る際には、現地民が道に横たわり、トラックを通さないようにしていたと聞いた時には、驚きました。

エスタシオン9 (ラ・メヒカーナ)を始め、まだまだたくさんの見所があるそうなので、またの機会に訪れたいと思います。

次回は、アンデスの自然豊かなチレシートでトレッキングをした様子をお伝えします!お楽しみに!

▼Hiro インタビュー記事

*旅をサポート頂ける企業、または個人の方を募集中です。特にアウトドア・自転車・カメラメーカー等の企業の方、ご興味あれば、ご連絡ください。

Hiro(津田幸洋 ツダユキヒロ)
自転車旅人。2014 年に日本を立ち、自転車で旅を続けています。オーストラリア、ニュージーランドを経て、アメリカ大陸横断中、COVID-19による、世界パンデミックにより足止めとなり、2021年7月現在は、アルゼンチンに滞在しています。人との出会い、美しい自然、野生動物を探す旅を近日再開を予定しており、旅とともに、訪れた場所の都市情報、見どころ、自転車に関する情報、エッセイ等をTABIRINにて発信していきますので、よろしくお願いいたします。インスタグラム  https://www.instagram.com/yukihirotsuda/
津田幸洋

 

 

  • この記事がいいねと思ったら
    •  0
  •   この記事のご感想はユーザーのみなさま
  • サイクリングレポート(記事下部)
    サイクリングレポート(記事下部)
    編集部おすすめ
    ランキング