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【静岡県】日本唯一のアプト式列車で輪行してオクシズを満喫する35kmのサイクリング

大井川の上流にある渓谷を走る日本唯一の「南アルプスあぷとライン(大井川鐵道井川線)」に乗り、終点の井川駅から下り基調で千頭駅まで戻ります。途中には湖に浮かんだように見える奥大井湖上駅を見下ろすポイントや、日本一の急勾配を走るアプト式列車を眺めるポイントがあり、オクシズを満喫出来ます。

千頭駅から輪行して井川駅へ

大井川鐵道本線の終着駅であり、大井川鐵道井川線の始発駅でもある「千頭駅」から「南アルプスあぷとライン」に乗ってスタート。

大井川鐵道井川線の車両は、もともと資材運搬用トロッコとして建設された小型車両なので、普通の列車より座席数が少ないです。行楽シーズンなどは輪行を断られる事もあるとのことなので注意して下さい。

千頭駅は改札からホームまでフラットなので輪行しやすいですよ。ホームには「きかんしゃトーマス」の仲間達の車両が展示されていました。

緑色のレトロな車両は通称「ズームカー」と呼ばれ鉄道愛好家に人気です。

小さな南アルプスあぷとラインに乗車

朝早い時間だったので乗客が少なく、問題無く輪行することが出来ました。近づいてくる車両を見ると、確かに普通の列車より小型で可愛いです。

車内に入ると、さらにコンパクトな感じがします。定員は50名弱だとか。輪行する場合は他の人の邪魔にならないようにしましょう。

千頭駅から井川駅までは約1時間45分の列車旅です。ガタゴト揺れながら走る車窓からは大井川の渓谷に架かる橋や景色が楽しめます。
川沿いを走っているのでカーブが多く、レールのきしみ音がキィキィ鳴るのが特徴的です。

アプト式機関車の連結を見学できる

千頭駅から6番目の停車駅「アプトいちしろ駅」と隣の「長島ダム駅」の区間は、日本の鉄道路線で最も急な区間になるため、アプト式電気機関車を連結します。
ホームでは連結の様子を見学することが出来るので、列車から降りて見てみましょう。

線路の真ん中をのぞき込むとラックレールという歯形レールがガチッと組み合う所が見えます。車両に解りやすいイラストが描かれています。

歯形レールと組み合ったまま、長島ダム駅まで走ります。
この区間の勾配は90パーミル(1,000mの距離で90mの高さを登る勾配)あるので歯車でガッチリ組んで登ります。普段の列車の走行とは違うガタガタした音と、背中から押される様な感覚がアプト式の特徴です。

秘境駅ランキング2位の尾盛駅

長島ダム駅と奥大井湖上駅を過ぎると、さらに山深い景色に変わってきます。終点の井川駅2つ手前の「尾盛駅」は、日本の秘境駅ランキングで2位に輝く駅です。
地図で確認して貰えると解りますが、尾盛駅に通じる一般道はありません。そのため下車してもどこかに行く事もできません。マニアの人は登山道を散策したりするらしいですが。
2体の狸が印象的な「尾盛駅」に、この日下車する人は居ませんでした。

井川駅の周辺を散策

終着駅の「井川駅」に下りて自転車を組み、やっと走り出します。ここまで来るだけでも、かなりの長旅です。

井川ダム小公園の奥に進むと「井川湖畔遊歩道」の入口があります。
井川ダムから堂平広場まで繋がる廃線小路には、当時のレールやトンネルがそのまま残っています。入口付近を少し散策して戻ります。
県道60号の南アルプス公園線を少し北上します。静かな集落を走ると気持ちが良いです。

右手に井川湖を眺めながら進み、井川大橋に到着。南アルプスの山々が見えて雰囲気の良い吊り橋ですが、東岸の市道と結ぶ道路橋で、車が普通に通行します。橋の上で車とすれ違う時は少しドキドキしますよ。

井川大橋で折り返し「南アルプスユネスコエコパーク井川ビジターセンター」に立ち寄ります。観光案内や喫茶があり「鹿肉カレー」が絶品とか。まだ時間が早いのでトイレだけ利用して先に進みます。

さくらももこ先生のイラストが建物の雰囲気にピッタリです。

地元の歯科医が建立した井川大仏

木造のバス停小屋から脇道に入ると「井川大仏」があります。
地元の歯科医が日々の健康に感謝して建立したそうです。真っ白の大仏は歯をイメージしているとか。

県道60号から市道閑蔵線に入ると、急に道幅が狭くなり落石が増えるので注意して下さい。

大井川に沿うように走る市道閑蔵線は、車で走ると道幅が狭くて怖いという話ですが、自転車では渓谷の景色を肌で感じることが出来る楽しい道です。

奥大井湖上駅を見下ろす展望所

市道を抜けると2車線になりホッと安心します。
新接岨大橋を渡り接岨トンネルを抜けると大井川の川幅が広くなり、長島公園が現れます。
長島公園に架かる「南アルプス接岨大吊橋」を渡ってみます。

大吊橋を渡ると「八橋小道(やっぱしこみち)ラブロマンスロード」という8つの吊橋が架かった遊歩道があります。約2キロの遊歩道で1時間ほどあれば全ての橋を回れるので、公園に自転車を置いて回ってきました。
橋によって滑りやすかったりするので、SPDシューズかスニーカーがオススメです。

不動トンネル手前の左脇にある細道に入ると、奥大井湖上駅を見渡せる展望所に到着します。観光案内の写真やSNSでよく見る湖の上にポツンと佇む駅の景色を、実際に自分の眼で見ると感動します。

長島ダムでダムカードを貰う

長島ダムまでの区間はトンネルが続くのでライトは必須です。車通りは多くないのでサッと通り抜けます。
ダムの天端に行く前に、少し坂を下ると長島ダムの下に架かる「しぶき橋」が一緒に見られます。

ダムカードを貰うため長島ダム管理所に行きました。ダムカードの配布場所は他にも長島ダム防災施設ふれあい館があります。

タイミングが良ければ、ダムの天端からアプトいちしろ駅と長島ダム駅の「アプト区間」を走る列車を眺めることが出来ます。来るときに自分が乗ったアプト式列車を傍目に見ると、改めて急勾配な区間だと感じられます。

色々な橋を渡っていく

長島ダムをあとにして県道388号を走ります。泉大橋を渡ると寸又峡へ向かう道との分岐「奥泉交差点」を通過します。壁に描かれたイラストが印象的です。

赤いトラス橋が2本並んだ渡谷橋を渡ります。

小山トンネルを抜けたらすぐに右折します。大井川に架かる赤い吊り橋の小山橋を渡ります。橋の横に「自転車歩行者専用道路」の道路標識があるのが珍しいです。

自転車が走行しても良いという事なので自転車で渡ってみましたが、細いし揺れるし結構怖いです!押して渡る方が安心かもしれません。

吊り橋を渡ったら大井川に沿って裏道を走ります。路面が荒れているので注意して下さい。
途中の開けた場所から大井川鐵道井川線の鉄橋と三又峡が見えるポイントがありますよ。

両国吊橋を渡って千頭駅へ

寸又口橋を渡り県道77号に戻ります。右手に大きな川根茶の文字が描かれたオブジェが見えたら河原へ下ります。河原から両国吊橋を下から眺めることができます。

両国吊橋は比較的頑丈であまり揺れません。自転車を押し歩いて進むと「南アルプスあぷとライン(大井川鐵道井川線)」の真上を通ります。タイミングが良ければ列車が吊橋の下を通過する所を見られます。

最後はダムカレーと川根茶ソフト

県道77号を走って千頭駅に到着。ここまでお昼ゴハンを食べるタイミングが悪く食べられず仕舞いだったので、最後にここで遅いランチにします。
駅前の「caféうえまる」で看板メニューの長島ダムカレーをいただきます。

ゆで卵は奥大井湖上駅、並んだベーコンは南アルプスあぷとライン、ごはんはダムの堤体、エビフライはしぶき橋、野菜は豊かな山々を表現しています!ボリュームもあり食べ応え有りました。

デザートは駅前の「川根物産」で「川根茶ソフトクリーム」をいただきます。
日本三大銘茶のひとつである「川根茶」を練り込んでいて美味しいですよ。

千頭駅周辺には川根茶を売る店や道の駅などがあり、お土産を購入して帰るのにちょうど良いですよ。

コース紹介

▼アクセス
電車利用:JR東海道本線「金谷駅」から大井川鐵道に乗り換え「千頭駅」下車
※大井川本線「家山駅」〜「千頭駅」区間は昨年の台風15号の被害によりバス代行
車利用:新東名高速道路「島田金谷IC」から約1時間
車利用:東名高速道路「相良牧之原IC」または「吉田IC」から約1時間半

▼大井川鐵道
https://daitetsu.jp/abt

まとめ

日本唯一のアプト式列車「南アルプスあぷとライン」に乗車し、日本一の急勾配を体感。その後は下り基調のルートを自転車で走り「オクシズ」の自然を堪能するコースを紹介しました。コンビニや自動販売機が少ないルートなので補給食は用意して行きましょう。

執筆:小曽根彩

大分県出身、埼玉県在住。
地図やガイドパンフのデザイン制作事務所「オゾングラフィックス」スタッフ。
ロードバイク・ランドナー・ミニベロなどで、四季の景色や美味しい物を求めて自転車を楽しんでいます。

 

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