旅が好きな人ならきっと、「一周」「縦断」「横断」といったキーワードに一度は心惹かれ、何かしらチャレンジしてみたことがあるのではないでしょうか。
旅の最中はもちろん、あとで地図上で振り返った時にも、達成感があるものです。
私もこれまで「ビワイチ」(琵琶湖一周)、「アワイチ」(淡路島一周)などにチャレンジしてきました。
地元神奈川県から大阪府に引っ越したのを機に昨夏、2泊3日で「兵庫県縦断」を催行しました。日本海側の城崎〜朝来〜太平洋側の姫路まで合計約110kmの旅。今回はそのうち、城崎〜朝来(約50km)様子をお届けします。
浴衣でそぞろ歩きの似合う城崎温泉に前泊
旅の出発点は関西有数の温泉街、開湯1300年の歴史を持つ城崎。
翌朝ここからスタートするのに備えて前泊します。城崎までは、大阪から特急「このうとり」もしくは「はまかぜ」で約3時間弱。
指定席を取っておけば、ゆったりと輪行で快適な旅を過ごせます。
城崎温泉は街全体を一つの温泉宿と見立て、各旅館がお部屋、7つの外湯が大浴場というコンセプトで作られています。
志賀直哉の『城の崎にて』でも知られているように、温泉街の中に文芸館があったり、城崎発の出版メディアがあるなど文藝も盛んで、街には文化の香りも漂います。
自転車で散策するのももちろんよいですが、せっかくならサイクルジャージではなく浴衣で、オレンジ色の街灯にぼんやりと照らされた、枝垂れやなぎの川沿いをそぞろ歩きるするのがおすすめ。
日頃の疲れを癒やし、明日からのライドに備えて英気をたっぷり養うことができます。
城崎から出発!山陰海岸 迫力の玄武洞公園
城崎で外湯めぐりや日本海の幸を堪能したら、翌朝いよいよスタートです。
1日目のゴールは約50km先の朝来。急ぐほどの距離ではないので道中観光を楽しみながらゆったりと向かうことにします。
最初に立ち寄ったのは城崎温泉から円山川リバーサイドラインを約5km進んだ地点にある豊岡の玄武洞公園です。玄武洞は山陰海岸ジオパークの一つで、約160万年前、火山活動によって流出した溶岩が冷却してできたものだそう。
玄武岩の柱状の割れ目が露わになった迫力ある玄武洞をはじめ、青龍洞、白虎洞、南朱雀洞、北朱雀洞の洞窟が玄公園内にあります。人工では造れないであろう、自然だからこそのダイナミックさには圧倒されるばかり。この地が、過去に地球の磁気逆転発見につながった場所だというのも納得です。
ちなみに、玄武洞公園の美しい自然をPRする「玄武岩の玄さん」は、「ゆるキャラ」とはまた一味違う雄々しき顔立ち…。せっかくなので顔ハメパネルで旅の記念撮影も楽しみました。
兵庫の小京都 出石の街並みを堪能
玄武洞公園から約20km、出石に到着。基本的に川沿いを走るため、標高差も少なく快適な旅です。
豊岡市の一部である出石は、かつての出石城の城下町であり、整備された町割りが碁盤の目状であることなどから「但馬(たじま)の小京都」とも呼ばれています。
街並みは国の重要伝統的建造物群保存地区にも指定され、街の人々の努力で今も城下町の美しい景観が保たれています。
今回は初めての出石訪問だったのもあり、出石リノベーション協会の皆さんが主催する街歩きツアーに参加してみました。
街のシンボルである時計台の内部(通常は非公開!)から街全体を眺め、歌舞伎小屋「永楽館」では舞台地下を見学し、奈落の底を体験することができました。
出石は西日本では珍しいそば処で街の中に約50軒ものそば屋があります。
江戸時代中期に出石藩主松平氏とお国替えになった信州上田藩の仙石氏と共に、信州からやってきた蕎麦職人の技法をもとに「出石そば」が誕生したのだそう。
出石焼きの小皿に一口ぶんずつ盛り付けて出てきます。私は観光協会の食べ歩き企画で3皿×3軒のはしご酒ならぬ「はしご蕎麦」にチャレンジしてみました。
5皿で1人前の目安なので、実に2人前近く食べたことになりますが、風味豊かでつるっと美味しくいただきました!
「蕎麦もいいけどこちらもぜひ!」と友人からおすすめされた『ハム工房 但馬の郷』の揚げたてメンチカツもしっかりお腹に詰めたところで、午後は一気に朝来を目指します。
朝来 竹田城跡の夕暮れ
出石から県道2号線経由で円山川リバーサイドラインへと戻り、約25km先の朝来を目指します。
2時間もあれば十分進める距離ですが、なにぶん炎天下の真夏。道沿いの神社の木陰や道の駅で小休憩を取りながら無理のないペースで進み、夕方、朝来市の和田山に到着しました。
宿泊地を朝来にしたのはなんといっても、日本100名城の一つ、竹田城跡があるからです。国史跡 竹田城は、古城山の山全体が虎が伏せているように見えることから別名「虎臥城(とらふすじょう・こがじょう)」とも呼ばれているそうです。
ふもとの駐車場から城跡まではマイカー・マイバイクは進入禁止で交通手段は公共バスか徒歩のみです。
ちょうど夕方の終バスのタイミングで訪れたこともあり、他に観光客もほとんどおらず、ほぼ貸切状態。朝来の街並みを眺めながら、つかの間の城主気分を味わいました。
夜は和田山の民宿に宿泊。但馬牛のすきやきでお腹いっぱいになり、旅の前半を終えた心地よい安堵感と疲労感を覚えながら眠りにつきました。
コース紹介
まとめ
兵庫県というと自転車乗りの間では圧倒的に淡路島が有名かと思いますが、日本海側、太平洋側、内陸とそれぞれに歴史と風情の豊かな魅力的な地がたくさんあります。
街と街との点をつなぐように川沿いをひたすら走っていくことで、街ごとの景色の違いを体感できるのも、縦断旅ならではの醍醐味だと実感しました。
今回の城崎〜朝来エリアだけでも十分見応え・走りごたえのあるコースだと思います。
秋のよく晴れた朝には、竹田城で雲海を見ることもできるため、季節を変えてチャレンジしてみるのもよさそうです。
後編はこちらをご覧ください。
執筆:Ayaka 2011年に社会人になると同時に始めた自転車で「自転車×旅」の魅力にハマる。 ニュージーランドでのワイナリーロードレース、タイの寺院巡り、ドイツ古城巡り、インドネシアでの遺跡巡りなど世界各地で自転車旅を催行し、その様子を雑誌『Cycle Sports』に寄稿。 2017年には自転車ツーリズムを探究しにオーストラリアへ留学。現地の様子を『Cycle Sports.jp』にて『G’day, Australia! 〜ブリスベンからの自転車だより』として1年間連載。帰国後は英語教材編集者の傍ら、自転車イベントで通訳・MC・PR担当等を務める。 座右の銘は「好きにまみれろ、夢中で生きろ」。 |
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