上田市というと上田城が有名ですが、上田市西南に広がる塩田平(しおだだいら)は鎌倉時代から室町時代にかけて造られた寺社や史跡が多く「信州の鎌倉」と呼ばれています。さらに2020年には文化庁「日本遺産」にも認定されました。そんな歴史の深い塩田平を走ります。
スタートしてすぐに上田城へ
北陸新幹線・しなの鉄道・別所線が乗り入れる大きな上田駅からスタートです。
駅舎の壁には真田軍の家紋「六文銭」が描かれているのがテンション上がります。
天神2丁目信号を右折して二の丸通りを上ると上田城の入口です。
駐輪場に自転車を置いて見学しましょう。
上田城は真田昌幸により築城され、徳川軍を撃退し名を轟かせました。
城内には眞田神社・上田市立博物館などがあり、観光名所として栄えています。
最初に出てくるのが東虎口櫓門と北櫓&南櫓になります。
1949年(昭和24年)に城外にあった北櫓と南櫓が移築復元され、かつての姿を取り戻しました。
門の右手には高さ約2.5m幅約3mの真田石があります。城主は権威を表すために石垣の巨石の大きさを競ったといわれます。真田石の大きさから真田軍の権威が感じられます。
歴代城主を祀った眞田神社
上田城本丸跡にある眞田神社には、眞田氏・仙石氏・松平氏という歴代の上田城主を御祭神としています。徳川軍を2度も破ったことから必勝祈願に訪れる人が多いようです。
赤い鉄橋「千曲川橋梁」を走る電車
上田城を出て千曲川に向かうと、左手に赤い鉄橋の千曲川橋梁が見えます。立派な鉄橋ですが、2019年の台風19号による豪雨で崩落しましたが、約2年後の2021年3月に復旧工事を終え全線開通しました。自転車で色々な場所を走っていると、台風19号は全国的に大きな被害があったのが分かります。
周囲の景色に真っ赤なトラス橋が映えますね!
生島足島神社を参拝する
県道65号を走り、赤坂交差点を左折します。しばらく車が多い町中を走るので気を付けましょう。大学前交差点を左折して長野大学前を通過すると、田んぼの真ん中に赤い大きな鳥居が見えてきます。生島足島神社(いくしまたるしまじんじゃ)の大鳥居です。
大鳥居をくぐり、しばらく進むと生島足島神社に到着です。
レイラインがつなぐ「太陽と大地の聖地」とは
2020年(令和2年)に信州上田・塩田平が日本遺産に認定されました。
生島足島神社は日本遺産に認定された内容で大きな意味を持つ神社です。
日本遺産に申請した内容はストーリー構成になっていて、タイトルは“レイラインがつなぐ「太陽と大地の聖地」〜龍と生きるまち信州上田・塩田平〜“というものです。
レイラインとは夏至と冬至の朝に太陽が地上につくる光の線の事です。上田市の信濃国分寺から生島足島神社、別所温泉までレイライン沿いに神社仏閣があることと、雨乞い祭りなどのストーリーをまとめた内容が日本遺産に認定されました。
夏至と冬至に生島足島神社の鳥居の中を太陽の光(レイライン)が通り、神々しい景色を見られるそうです。
そんなストーリーをふまえて神社を参拝すると、気持ちが少し引き締まる感じがします。
田園風景が広がる塩田平
下之郷交差点を右折するとまっすぐな道になり、塩田平らしい景色の中を走ります。
タイミングがよければ平行して走る別所線の電車を見る事が出来ますよ。
道なりにカーブして進むと中塩田駅に到着します。レトロな駅舎でペパーミントグリーンが可愛らしいですよ。
ホームのベンチもペパーミントグリーンが鮮やか。
ひっそりと佇む無言館
中塩田駅近くの男池に沿ってカーブして南下して、山王山公園に隣接した無言館に向かいます。無言館までは新緑の坂道を上ります。
無言館は徴兵によって夢を断たれ戦地に散った美術学生たちの遺した絵を展示している美術館です。館主の窪島誠一郎氏は「学生の絵の前に立つと、悲しさや悔しさで黙るしかない」という理由から「無言館」と名付けたと話しています。
前山寺にある未完成の完成の塔
短い坂道を上ると前山寺に到着します。自転車を置いて参道を歩いて境内に向かいます。
立派な薬医門をくぐり入山料を払います。
前山寺の三重塔は「未完成の完成の塔」と呼ばれています。二層、三層目の柱に長押仕口があるのに窓も扉もない事や、手すりが無い事が未完成と呼ばれる原因とか。見た感じ未完成には感じません。当日はちょうど藤の花が見頃で、三重塔とセットで絵になりました。
高さ19.5mある三重塔を見上げると迫力があります。
本堂も大きく茅葺きの屋根に厚みがあり重厚感がありますよ。
黒門とケヤキが立派な龍光院
前山寺を出てアップダウンの路地を進むと、立派な木が見えてきます。
黒門と樹齢600年のケヤキで有名な龍光院です。門の前のケヤキを見て先に進みます。
右手に大きく曲がり塩野池に沿って走ります。
雨が少ない塩田平では稲作に欠かせない「ため池」が多いです。
国の重要文化財の阿弥陀堂
独鈷山(とっこさん)の登山口近くにある中禅寺に立ち寄ります。ここでは中部日本最古の木造建築といわれる阿弥陀堂が見られます。
入山料を払い中に入ると右手に本堂があり、その奥に阿弥陀堂があります。
中禅寺を出ると坂道を下ります。目の前に新緑がまぶしい山々が広がります。
悲しい伝説の舌喰池
塩田平には昔から「ため池」が多く、農林水産省の「ため池百選」にも選定されています。その中の舌喰池には悲しい伝説があります。
昔、池の改修工事のための「人柱」に選ばれた娘が、舌を喰い切り身を投げて死んでしまった事から「舌喰池」と呼ぶようになったとか。
郷土料理おしぼりそばを頂く
山田池に向かって走っていると「おしぼりそば」というノボリが目に飛び込んできた。
「おしぼりって何だ?」と思い、お腹も空いていたので寄ってみることにしました。
山田池が見渡せる場所に建つ「手打ちそば美田村」に入店。さっそく「おしばりそば」を注文してみました。
おしぼりそばは長野県北信地方の郷土料理で、辛みが強い大根の絞り汁に信州味噌を溶かしながら食べるものです。山に囲まれた地域なので、昆布や鰹節で出汁をとれない時に、蕎麦やうどんを大根おろし汁に味噌を溶いて食べていたそうです。
大根おろし汁だけで食べると、かなり辛い!そこへ味噌を溶くと、少しまろやかになるから不思議です。なんとなくクセになりそうな味でした。
別所温泉を散策する
県道177号を左折すると別所温泉に到着です。
駅の駐車場に上田電鉄別所線のシンボルである丸窓電車(上田交通モハ5252)が展示されています。名前の通り丸い窓が印象的です。
ゆるやかな坂を上っていくと北向観音堂の入口です。自転車を置いて参道を歩いて行きます。参道は短いですが、お土産屋が並んで賑やかな雰囲気です。
北向観音堂
長野市善光寺と向かい合うように建っていることから北向観音と呼ばれています。善光寺と合わせてお参りするとさらなる御利益を得られるとか。
境内には立派な鐘楼や温泉薬師瑠璃殿などがあります。
安楽寺の国宝八角三重塔
北向観音堂のすぐ近くにある信州最古の禅寺、安楽寺へ移動します。
長い石階段を上ると緑に囲まれた鐘楼と本堂が見えます。
本堂の脇で拝観料を払って奥に進みます。木立の中の石段を上っていくと、木の陰に八角三重塔の姿を見ることができます。
八角三重塔は長野県の国宝第一号です。木造の八角塔は全国でここにしかない貴重なものです。屋根が4重あるように見えますが、一番下の屋根は裳階(もこし)と呼ばれる「ひさし」なので、上部の三重の屋根で三重塔になります。
下から見上げると、長野県国宝第一号の貫禄を感じられます。
北向観音堂の本坊「常楽寺」
常楽寺に向かう途中の路地に「別所温泉遊歩道展望台」があり上信越国立公園の山々が眺められます。
常楽寺は北向観音堂が建立された825年(天長2年)に建立されました。
重厚な茅葺の本堂は、平成15年に修復工事を行い建立当時の建築様式に改めたそうです。
本堂の裏に進むと国の重要文化財に指定されている石造多宝塔があるので行ってみましょう。
別所温泉駅でゴール
常楽寺を出て真っ直ぐ進むと別所温泉駅周辺に出ます。
別所温泉駅から輪行するので、電車の時間までの間に駅前にある「二幸」で休憩します。
店内には喫茶コーナーとお土産コーナーがあります。暑かったので喫茶コーナーでかき氷をいただきます。シロップは手作りで季節感のあるものが多かったです。
電車の時間になったので駅に向かい、準備をしてゴールになります。
別所温泉駅も中塩田駅と同じく、ペパーミントグリーンの駅舎で可愛らしいです。
待合室からホームは段差も無くスムーズです。
コース紹介
アクセス
電車:東京駅から「北陸新幹線」上田駅まで約90分
車:上信越自動車道「上田菅平インター」を下りて約15分
▼信州上田観光情報
https://www.city.ueda.nagano.jp/site/kankojoho/5556.html
▼上田城
https://nagano-ueda.gr.jp/uedajo/
今回の記事で紹介したコースの詳細は以下でもご覧いただけます。
まとめ
信州の鎌倉と呼ばれる上田市塩田平には、鎌倉時代〜室町時代から残る寺社仏閣がありました。多くの上田市の歴史と魅力を感じることが出来ると思います。
今回のルートから外れますが、余裕があれば立ち寄ってほしい場所があります。
道の駅上田道と川の駅おとぎの里の近くから、千曲川によって浸食されて出来た「半過岩鼻(はんがいわばな)」を見られます。圧倒的な岩壁は見る価値ありです。
執筆:小曽根彩
大分県出身、埼玉県在住。 |