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記事タグ: 太平洋岸自転車道

太平洋岸自転車道実走調査⑪愛知県:豊橋から伊良湖までのサイクリングレポート

太平洋岸自転車道実走調査⑪愛知県:豊橋から伊良湖までのサイクリングレポート

2022年秋にナショナルサイクルルートである太平洋岸自転車道を全ルートを実走調査した経験をもとに、その全容を紹介していくシリーズ。前回の⑩愛知県ルート解説に続き、今回は豊橋市内となる静岡県との県境から伊良湖のフェリー乗り場までの実走レポート。

実走調査日:2022年11月15日

DATA
豊橋(静岡との県境)→伊良湖(フェリー乗り場)
距離:50.9km、獲得標高:456m、最大標高:75m

静岡県境から豊橋市伊古部町まで

丘陵地帯に突然現れる静岡県と愛知県の県境。ここから豊橋市だ。「表浜街道」という標識がある。

県が変わったからといって、特別変わりはないなと思っていたら、ここまで見かけることのなかった看板が。これまでなかったような危険な下りなのか!?と身構えたが、たいした勾配ではない。

国道42号から海岸方面に入っていくと、渥美半島名物(?)の「止マレ 下車」の路面標示が。

この案内には渥美豊橋サイクリングロードとあるが、愛知県道497号田原豊橋自転車道線、渥美サイクリングロードなど、いくつかの呼び名がある。

そのサイクリングロードに入る。

こういう、車道の幅に対して広すぎる(?)歩道がある部分は、太平洋岸自転車道の自転車歩行者専用道だ。

橋を渡ったりしながら、森の中の自転車歩行者専用道をたどっていく。

新しくはないサイクリングロードだが、走りにくくはない。一応県道497号になっている。
よくある自転車歩行者専用道は河川の堤防や、廃線跡に作られることが多いが、ここはそのどちらでもない珍しい道路。海は見えない。

豊橋市伊古部町から道の駅あかばねロコステーションまで

ここでルートミスした。画面手前から走ってきて、ここで矢羽根を見ると右方向を指している。
何も考えずに右へ進むと、矢羽根が消える。ここまで自転車歩行者専用道には矢羽根が少なかったので、矢羽根がないことに疑問を持たなかった。
また矢羽根が消えたな、くらいに思って勘で国道42号方面へ進む。

国道に出ると矢羽根があったので、あれ、どこから国道がルートになっていたんだろう?(この時点でダブルルートに気づいていなかった)と思って伊良湖方面に進むと、すぐに左側からサイクリングロードが合流。
先ほど矢羽根に従って右折してしまった場所を左折すると、さらに自転車歩行者専用道を経てここに出たのだ。

国道42号は交通量がそれほど多くなく、走りやすい。
道の駅へ誘導するこの路面標示は、太平洋岸自転車道のシンボルマークと豊橋市の名前が入っているが、ほかではあまり見かけないタイプ。

パームツリーの向こうに海。太平洋ロングビーチだ。

愛知県に入って初めて海を見た。

サーフィンの世界選手権と位置づけられる、ワールドサーフィンゲームスが2018年にここで行われた。管理棟にあるモニュメント。

広い砂浜の向こうに太平洋が光る。

海沿いの自転車歩行者専用道をトコトコ走る。

自転車歩行者専用道から一般道に出る。

道の駅あかばねロコステーション。

道の駅あかばねロコステーションから田原市日出町まで

ここから「止マレ 下車」が続出する。

ここで迷った。矢羽根や誘導看板はない。
太平洋岸自転車道とは無関係の、田原市のルート表示であるブルーラインが右方向へ誘うが、正しいルートは横断歩道を渡った先の細い道。
おかしいなと思ったらMAPを確認するクセをつけないとダメだな。

再び海岸線の自転車歩行者専用道に。「止マレ 下車」も文字が大きくなってきた。

再び国道42号に戻る場所に階段が。愛知県初の階段自転車道だ。

階段の手すり下部にスロープが。
ここに車輪を乗せて押せばラクに通過できる。わざわざアスファルトで広げてある。ありがとー!

再び海沿いへと入っていく。ここも太平洋岸自転車道特有の広い歩道。

あれ、ここは矢羽根が少し小さくなっている。

自転車歩行者専用道から工事中区間をエスケープする形で再び国道に出て、日出の駐車場へ。
そこから内陸に入る。ここはブルーラインに従って右折だが、我らが太平洋岸自転車道の矢羽根はない。
まっすぐ行くと日出の石門で行き止まり。

田原市日出町から伊良湖まで

ここから少し内陸に入り、さらに国道42号をアンダーパスでくぐるルートがあるのだが、あまりに表示がないので不安になり戻ってしまい、その部分を走っていない。
サブルートである国道42号を行くといきなり現れる激坂!
太平洋岸自転車道全線を通じてもっとも勾配のキツい場所だ。100mほどの短い坂だが、勾配は15%くらいある。

そしてその激坂をクリアすると絶景が。恋路ヶ浜、伊良湖岬が一望できる。

じつはこの先でもルートミスしていた。
歩道部分を走る自転車歩行者専用道とのダブルルートになっていることに気づかず国道42号の車道を走っていたのだが、直進がフェリーターミナル、左折が灯台という信号のない交差点で、「そりゃ灯台でしょう」と左折。その先で道はゲートで閉鎖され一般のクルマは通れない。
するとその先で左からルートが合流するのが見えた。そこでゲートの脇を抜けて中へ。これで自転車歩行者専用道のルートに合流できた。

そしてその先は激坂。

伊良湖岬灯台か!? ずいぶん立派になっちゃって、と思って近くへ行ってみたが、これは海上保安本部の伊勢湾海上交通センター。伊良湖岬灯台はひとつ崖下の遊歩道を行かなければ見ることができない。

伊良湖港。篠島と、その奥に知多半島が見える。

フェリー乗り場と道の駅クリスタルポルト。MAPではこの陸橋で国道42号を左折するのがルートだが、ここでは下の道に下りられない。

かまわず直進すると、左に階段があるが、まっすぐスロープを下って駐車場を突っ切ればフェリー乗り場に着く。もう見えているので、ルートはまあどうでもいいか。

ここはフェリーの切符売り場ではなく、篠島、日間賀島などへ行く高速船の切符売り場。ここを抜けていくとフェリー乗り場に。

伊勢湾フェリーのチケット売り場はプレハブの建物だった。

鳥羽まで自転車込みで3100円。

ここで乗船を待った。この乗船口にも矢羽根があればおもしろいのに。

フェリーで鳥羽へ。旅は愛知県を離れ、海路三重県に突入。
国道42号は伊良湖から鳥羽へと続いていて、このフェリー航路は「海上国道」とされている。サイクリスト的には「海上サイクリングロード」だ。

次回は三重県のエリア解説編

太平洋岸自転車道実走調査⑫三重県:鳥羽から紀宝町までの道路状況や走行ポイントを...
2022年秋にナショナルサイクルルートである太平洋岸自転車道の全ルートを実走調査した経験をもとに、その全容を紹介するシリーズ。今回は三重県部分の解説編。DATA鳥羽(フェリー乗り場)→紀宝町(和歌山県境)距離:201.9k...

執筆:岩田淳雄

愛知県出身、千葉県在住。
自転車雑誌「サイクルスポーツ 」「バイシクルクラブ」の編集長を歴任。現在は「ペダルプッシャー」を主宰し、サイクリングの啓発活動を展開しています。
https://pedalpusher.jp/

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太平洋岸自転車道実走調査⑫三重県:鳥羽から紀宝町までの道路状況や走行ポイントを解説

太平洋岸自転車道実走調査⑫三重県:鳥羽から紀宝町までの道路状況や走行ポイントを解説

2022年秋にナショナルサイクルルートである太平洋岸自転車道の全ルートを実走調査した経験をもとに、その全容を紹介するシリーズ。今回は三重県部分の解説編。

DATA
鳥羽(フェリー乗り場)→紀宝町(和歌山県境)
距離:201.9km、獲得標高:3055m、最大標高:410m

ルート概要

海ルートと山ルートで距離と獲得標高が大きく変わる

伊良湖からの伊勢湾フェリーが着く鳥羽港から紀北町の長島(JR紀伊長島駅付近)まで、コースが大きく二手に分かれる。
国道42号を通り伊勢市を経て県道22号、38号(旧熊野脇街道)で峠越えをし、再び国道42号に合流して紀北町にいたる「山ルート」と、パールロードを走って志摩市へ出て、海沿いの国道260号を通る「海ルート」。
さらに海コースには志摩半島を往復するコースが設定されていて、ここを走るかどうかで距離も大きく変わってくる。今回実走したのは海ルートの志摩半島往復パターン。解説はそこがメインになる。

鳥羽市からもと有料道路だったパールロード(県道128号)を経て志摩市へ至るルートは、日本を代表するリアス式海岸を行く。伊豆半島の海沿いをまわるルートと1、2を争うアップダウンの多い難所だ。
パールロード入り口から志摩スペイン村先のコンビニまで、鳥羽展望台のレストランと喫茶店以外、約17kmにわたってコース沿いに食事のできる場所はほとんどない。飲料の自販機も少ないので、夏場の水分補給には注意が必要だ。

志摩半島往復は国道を走るルートで、適度なアップダウン。半島先端の志摩御座港から、以前は定期船が浜島港までをつないでいて、その利用をねらったルート設定だろうが、航路は2021年9月に廃止されており、今ではここは往復するほかない。浜島港側も同様で、小さな半島を往復するだけとなる。

紀北町から紀宝町までは国道42号をひたすら走り続ける。だが尾鷲市から熊野市までは海沿いから外れて山間部に入り、標高差400mクラスの厳しい上りを味わうことになる。


出典:「太平洋岸自転車道」(国土交通省 近畿地方整備局)

ルート高低差

熊野市に入る手前で400mアップ

上記のDATAにある距離と獲得標高は、海ルートを通って紀宝町まで行った場合のもの。これに加え志摩半島を往復すると、距離で41km、獲得標高440mほどプラスとなる。これが山ルートになると、海ルートに対して距離で35km、獲得標高で1300mほど少なくなる。

厳しさでいうと海ルートのほうが断然厳しいイメージだが、山ルートは高低差図を見ればわかるとおり、大台町と大樹町の境にある峠をトンネルなしで越える。さらにじわじわ上った先の荷坂峠があるため、距離が短いわりにはハードなヒルクライムを余儀なくされる。ただ伊豆半島の亀石峠越えルートや、このあと現れる尾鷲市と熊野市の市境にあたる大又トンネルといった400m級のクライムに比べれば、かわいいものかも。

海ルートはパールロード以降も細かいアップダウンが続く。高低差図で大きな上りとなっている紀勢南島トンネルは、図上では標高差で130mほど上ることになっているが、実際はトンネルでカットされているため100mほどの上り。

尾鷲市と熊野市の境となる大又トンネル(MAP⑥)を最高地点とする400mアップの峠は、太平洋岸自転車道全体を通じても難所のひとつ。

出典:国土交通省 関東地方整備局

道路状況

クルマの少ない国道42号

国道、県道を走るため、路面状態に問題はない。三重県は太平洋岸自転車道が通る6県のなかで、唯一ルートが自転車歩行者専用道を通らない県なので、砂の堆積や雑草の繁茂などサイクリングロードにありがちな障害はない。

紀伊長島から熊野市までは無料の自動車専用道(一部有料)が並行して走っているため、ルートの国道42号は幹線道路のわりにクルマも少なく走りやすい。志摩市から紀北町に至る国道260号も交通量は少ない。パールロード以降、歩道が広い部分が多いのもこのあたりの特徴で、車道を走りたくない場合は積極的に歩道を走るといい。

英虞湾をすぎて国道260号に入ったあたりから、トンネルが多くなってくる。歩道が設けられたトンネルもあるが、なぜか道路右側(山側)に広めの歩道がある場合が多い。これは和歌山県に入っても同様の傾向があり、道路を横切って道路右側となる歩道を利用する場面が何度もあった。

また紀北町にある道の駅紀伊長島マンボウ手前で、ルートは二手に分かれる。ここはナショナルサイクルルートに向けた整備をする前からダブルルートになっていたということで、こうなった経緯はわかっていない。
だが道の駅マンボウへ寄るルートは、トンネルを2つ通過することになるため、県道766号を使って紀伊長島駅前を通るルートも選択肢だ。

歩道の広い場所が多い


道路の右側(和歌山方面に向かって)に広い歩道があることが多い

走行注意ポイント

サイクリストに向けたトンネル内走行注意喚起

志摩市をすぎて国道260号が始まると、リアス式海岸らしくトンネルが増えてくる。交通量が少ないため、それほど危険ではないが、路肩が狭いトンネルもあり注意が必要だ。

愛知県と同様、三重県にも急坂を知らせる「この先 急勾配区間 走行注意」や、「トンネル内 走行注意!」といった看板がしばしば見られる。この「トンネル内 走行注意!」に関しては、サイクリストに向けた注意喚起になっていると思われるが、他の地域のようにクルマのドライバーに向けたものに変えたほうがいいと思う。

愛知県に続き、注意喚起の看板が現れる


クルマに向けた他県の注意喚起例

ルート案内の状況

茶色の案内看板が出現

標準サイズの矢羽根、路面標示、案内看板が基本。おもしろいのはパールロードの鳥羽展望台への分岐を過ぎてすぐに現れる茶色の案内看板。これはパールロード全線で三重県屋外広告物条例で広告物の掲出が規制されていることによるもの。この茶色の看板は、パールロード以外に、志摩市浜島町でも見られる。太平洋岸自転車道全線を通じて、ほかのエリアでは見られない仕様だ。規制エリアの詳細はこちら。


三重県にしか見られない環境に配慮した茶色の案内看板(MAP①)

ここにしかない変わり種矢羽根!

熊野市の景勝地、鬼ヶ城に差し掛かったところで、それまで走ってきた国道42号は鬼ヶ城トンネルに入る。しかしここは自転車歩行者通行禁止。
太平洋岸自転車道のルートは、その脇にある鬼ヶ城歩道トンネルを通る。しかしここへ行くには歩道橋を渡っていかなければならないため、そのまま国道のトンネルに入ってしまうことも。
そこで国土交通省中部地方整備局紀勢国道事務所では矢羽根を連続して設置し本線から歩道へと誘導、さらに歩道にも歩道橋の上り口方向を示す矢羽根を置いた。そしてその歩行者トンネル内も、車道を走ると一方通行の逆走になってしまうため、車道ではなく右側の歩道を通ってほしいということで、矢羽根の頭を曲げるという荒業に出た。
ルールに縛られず、利用者の安全とルートのわかりやすさを最優先して案内方法を工夫した好例だ。


矢羽根が歩道へ誘導


矢羽根が歩道へ上がりさらに歩道橋へ


変わり種出現。もはや矢ではない(MAP⑨)

便利な距離標

太平洋岸自転車道の整備とは関連しないが、国道42号には起点である浜松からの距離を表示するキロポスト(距離標)がある。
これから先の主要市町までの距離がわかるのでありがたい。これは和歌山県に入っても続き、和歌山市内で太平洋岸自転車道ルートが42号から外れるまで見ることができる。


クルマ用の表示だが距離がわかって便利だ

自由に使える空気入れが

ルート案内とは関係ないが、ルート上の3カ所のサイクルステーションで、24時間使えるサイクリスト用の空気入れが設置されていた。聞くと三重県内で18カ所あるらしい。道の駅などにも設置してあるんだそうだ。
有人のサイクルステーションには空気入れや工具が用意されているが、無人の場所にこういった設備があるのは三重県だけで、今後全エリアで増えていくことを期待したい。


サイクルステーションに、自由に使える空気入れが設置されている(MAP③④⑤)

迷いやすいポイント

トンネルでMAPと異なる部分が

海ルートが山ルートに合流する手前、国道260号が道の駅紀伊長島マンボウに向かい孫太郎トンネルに入る直前で、ルートが二手に分かれ、左折すると紀伊長島駅に向かう箇所(MAP⑦)があるのだが、直前にこの左折を促す路面表示や案内看板がないため、直進してしまいがち。もっとも直進側も正規ルートなので問題はないのだが。

山ルートと海ルートが合流してすぐ、国道42号の長島トンネルには側道として長島歩道トンネルが左側に見える。
太平洋岸自転車道ナショナルサイクルルート指定推進協議会によるMAPのデータでは国道の長島トンネルがルートになっているが、ここは軽車両通行止め。自転車はこの歩道トンネルを行かなければならない。同協議会のルートパンフレットには歩道トンネルを通るように記載されているので、データ版のMAPが間違っているということだ。

またこの長島トンネルに続き、江の浦トンネル、古里トンネル、道瀬トンネルと安全な歩道トンネルが併設されたトンネルが続くが、どれも歩道トンネル部分はルートになっておらず、車道が正規のルートとなる。

長島トンネルは、側道となる長島歩道トンネルを行くのが正しいルート(MAP⑧)

迂回路情報

とくに迂回路はなし

実走調査時点で、工事などによる通行止めや迂回区間はなかった。

観光&ビューポイント

パールロードと鬼ヶ城

パールロードには鳥羽展望台ほかいくつかの展望台があり、輝く太平洋を見ることができる。またそのパールロード終点近くには志摩スペイン村があるが、自転車での観光向きではないかも。
ほかにルート上ではユネスコ世界遺産登録された熊野市の鬼ヶ城が有名。遊歩道を歩くことになるが、自然が作り上げた景勝は大迫力。

御浜町の七里御浜ふれあいビーチにはパームツリーが立ち並び、ここだけカリフォルニアな雰囲気。

紀宝町にある道の駅紀宝町ウミガメ公園ではウミガメと触れ合える水族館や、レストランの生シラス丼が人気。

鳥羽展望台からは太平洋が見渡せる(MAP②)


志摩スペイン村がルートから見える


鬼ヶ城。熊野灘の荒波に削られた海蝕洞が1.2kmも続く大岸壁


七里御浜ふれあいビーチ(MAP⑩)


道の駅紀宝町ウミガメ公園(MAP⑪)

次回は鳥羽から紀宝町までの実走レポート編

太平洋岸自転車道実走調査⑬三重県:鳥羽から紀宝町までのサイクリングレポート
2022年秋にナショナルサイクルルートである太平洋岸自転車道を全ルートを実走調査した経験をもとに、その全容を紹介していくシリーズ。三重県ルート解説に続き、今回は鳥羽市で伊勢湾フェリーを下りてから和歌山県との県境...

執筆:岩田淳雄

愛知県出身、千葉県在住。
自転車雑誌「サイクルスポーツ 」「バイシクルクラブ」の編集長を歴任。現在は「ペダルプッシャー」を主宰し、サイクリングの啓発活動を展開しています。
https://pedalpusher.jp/

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太平洋岸自転車道実走調査⑬三重県:鳥羽から紀宝町までのサイクリングレポート

2022年秋にナショナルサイクルルートである太平洋岸自転車道を全ルートを実走調査した経験をもとに、その全容を紹介していくシリーズ。三重県ルート解説に続き、今回は鳥羽市で伊勢湾フェリーを下りてから和歌山県との県境、紀宝町までの実走レポート。

実走調査日:2022年11月16日〜18日

DATA
鳥羽(フェリー乗り場)→紀宝町(和歌山県境)
距離:201.9km、獲得標高:3055m、最大標高:410m


出典:「太平洋岸自転車道」(国土交通省 近畿地方整備局)

鳥羽から大王崎まで

鳥羽港でフェリーから下りるが、太平洋岸自転車道の案内はない。港から国道に出て左折すると、やっと最初の矢羽根が。聞くところによると最近、フェリーを下りたところの路面に矢羽根が設置されたという話だ。整備が進んでいくのはありがたい限りだ。

パールロードへと向かう。奥に見える麻生の浦大橋がパールロードの入り口だ。

パールロードはこんな感じの道がずっと続く。以前はドライブ向けの観光有料道路だったため、歩道はなく路肩も狭い。

鳥羽展望台(タイトルの写真)を経て、面白展望台(相差駐車場)へ。ここには24時間使える空気入れ(エアポンプ)が。すごい取り組みだ!と思ったが、ポンプや工具を貸し出せる有人のサイクルステーションが設定できないので、太平洋岸自転車道の要件を満たすためにやむなくこういう措置になった、というところか。

キャビネットの中にはエアゲージもついた空気入れが。

だが口金がMTBなどに使われるシュレーダーバルブ(米式)用。これではロードバイクのフレンチバルブ(仏式)には入れられない。フレンチ用のアダプターが付属していたのが、引きちぎられてなくなっていたようだ。少し空気圧が下がっていたので、ここでなんとか空気を入れようと試しているうちに逆に少し空気が抜けてしまった。

パールロードは伊豆半島と同じくらい厳しいと思って「押し」を覚悟していたが、筆者の脚でもなんとか押さずに走り切れた。
もちろん息ゼイゼイですが。パールロード終盤、志摩スペイン村が見えたが、こういうトコに寄って楽しむ時間的余裕はもちろんない。

パールロードから続く県道128号は直進するが、指示に従って左の側道へ。

が、分岐のところで先を見ると、右側の本線(?)のほうにも矢羽根が。でもこれはきっと太平洋岸自転車道とは関係ない矢羽根。もうこれくらいのことでは動じない。

その先の突き当たりを左折すると志摩半島方面、右折すると志摩市街。ここは志摩半島を制覇するべく左折。パールロードはずっと茶色の案内看板だった。

道の左側に「磯部大王自転車道」の案内図が。この自転車歩行者専用道は、近鉄志摩線の志摩磯部駅付近から大王町まで続き、スペイン村付近からは太平洋岸自転車道と少し離れて、しかし同じ方向を向いて延びている。
大王町手前で国道260号となり太平洋岸自転車道と重なるが、ここは自転車歩行者専用道ではなく自歩道(自転車通行可の歩道)として運用されている部分。走ったときは気づかなかったが、ストリートビューで確認してみると大王町に向かって右側に広い歩道が整備されていて、ここが磯部大王自転車道ということなのだ。自転車道の標識も確認できる。
もともと昭和の時代に太平洋岸自転車道の一部として整備された自転車歩行者専用道だ。しかしなぜか今回のナショナルサイクルルートにはなっていない。
三重県県土整備部によれば、この磯部大王自転車道はファミリー向けサイクリングを想定したルート設定のため、用途の違いからナショナルサイクルルートとしての太平洋岸自転車道にはならなかったのでは、ということだった。
昭和時代に太平洋岸で大規模自転車道として整備されながら、ナショナルサイクルルートにならなかった自転車道は、全ルート通じてこの磯部大王自転車道だけだ。悲劇のサイクリングロードと言っていいだろう。

大王崎から志摩半島まで

ルートから少しはずれると大王埼灯台がある。珍しく寄り道してしまった。灯台好きなのだ。

けっこう時間をかけて見てしまった。満足。

灯台からの眺め。

スタートである銚子の犬吠埼はじめ、太平洋岸自転車道のルート沿いには、「上れる灯台」が7つもある。

志摩半島へ。

橋から下を見ると、リアス式海岸の入り江ごとに漁船が停泊している。

愛知県に続き三重県でもこういう注意喚起看板が見られる。「急勾配注意」だが、そんなにスゴい勾配ではない。

志摩半島先端の御座港に到着。定期船乗り場という路面標示がある。

しかしそこには何もなかった。定期船はすでに廃止され、残っていた飲食店なども閉鎖されている。乗客の乗っていない路線バスが暇そうに出発時間を待っていた。

志摩半島は基本的に往復ルート。でもそれだとつまらないので、帰りは国道260号の旧道となる「ゆうやけパール街道」を走った。
個人的にはこっちのほうが生活感があってバイパスよりよかった。途中、自転車屋さんで気になっていた空気を入れてもらう。お金払いますと言ったら「いいよいいよ!」って。ありがとうございました!

志摩半島から紀伊長島まで

志摩市に戻って県道17号で大矢浜方面へ。

海に突き当たったところで左折すると浜島港。航路が廃止された定期船の行き先だった港だ。ここも小さな半島を往復するだけだが、使命感に駆られて行ってみる。

やはり「定期船乗り場」の路面標示があるだけでした。

案内看板の色が茶色だったり青色(標準)だったりする三重県だが、これのせいだったかと気づく。この表示を境に案内看板の色も変わる。でも路面表示はずっと青。謎。

南張トンネル。このあたりのトンネルには歩道がついている場合があるが、なぜか山側(和歌山に向かって反対車線)にあることが多い。

南伊勢町の慥柄(たしから)付近。こういう広い歩道がついた場所が多い。交通量は少ないが、迷わず歩道を走る。
三重県内のルートにはこういった広い歩道がところどころ見られる。もしやこれは太平洋岸自転車道として整備されたものか!?と思って三重県県土整備部に確認してみたが、どうも違うようだった。

サイクルステーションになっている河村端賢公園でまた「空気入れボックス」発見。

これはフレンチバルブに入れられるタイプ。

南伊勢町の神前湾。ちなみに太平洋岸をずっと西に向かって走るってことは左手(海側)が南になる。だからこんな逆光の写真が多くなってしまう。

南伊勢町棚橋で再び空気入れボックス発見。

紀勢南谷トンネル。やっぱり反対側に歩道がある。

紀伊長島から熊野まで

道の駅紀伊長島マンボウ近くのT字路。左折がルートだが手前に案内はない。もうこんなことでは驚かない。

マンボウ。

紀伊長島の赤羽川を渡ったところに国道の長島トンネルがあるが、ここは軽車両進入禁止。MAPのデータではこの国道がルートになっているが、路面標示は下の写真の歩道トンネルへ。
ちなみにグーグルのストリートビューで確認すると、国道トンネルの中にいったん設置した矢羽根を削った跡が確認できる。整備を進めるなかでいろいろと混乱があったようだ。

その歩道トンネルを出たところ。こちらから行くぶんには問題ないのだが、反対から来ると、画面右側から走ってくることになる。ここに左折の案内がないので左側を注視していないと直進してしまうかなと思う。

古里トンネル。トンネル前に注意を呼びかける看板が。だがこれは自転車に対して「クルマに注意しろ」と言っているもの。
大切なのはクルマに対して「自転車に注意しろ」と呼びかけることでは?

その古里トンネルには立派な歩行者トンネルがあるが、ここはルートではない。でも通る。

登録有形文化財に指定されている趣のあるトンネルだった。

紀北町の道瀬港。

橋の手前にも注意喚起の看板が。橋で路肩が狭くなるという注意だろうが、橋でない部分も狭い。だが交通量が少ないので危険な思いはしなかった。

紀北町市街をかすめてさらに国道42号を行く。ここで銚子川! スタートした千葉県の銚子に思いをはせる。思えば遠くへ来たもんだ。

尾鷲市を過ぎていよいよ紀伊半島でも随一の難所、熊野市手前のビッグヒルクライムへ。矢ノ川トンネルは路肩も狭いし2kmもあるしで泣きそうだが、クルマは少ない。

ヘロヘロになりながら路肩のスペースを走っていると路面にやはりフラフラした轍が何本も。こんなところを買い物のママチャリが走るわけはないので、これはサイクリストのものだろう。
みんな頑張って走ったんだな。

熊野から紀宝町まで

そしてついに熊野市へ! やったー! あとはダウンヒルだぜい。

みかんの里からまた少し上るが、さらにダウンヒル。熊野は山深い。

熊野市の名勝、鬼ヶ城にやってきた。その入口を左に見る交差点。国道は直進だが、その先のトンネルは自転車通行禁止。ルートは歩道から歩道橋を渡り、歩道トンネルを行く。

で、そこに至る案内がすばらしい。なんでも自転車がここをまっすぐトンネルに入ってしまい、クルマと接触しての死亡事故があったそうで、命を守るという気迫が感じられる案内になっている。

まずはその交差点、絶対にまっすぐ行ってはいけないと、連続矢羽根で左の道へ誘導。

そしてその連続矢羽根の先頭部分で横断歩道を渡らせる。

そしてその先、矢羽根は歩道へ上がる。

さらに矢羽根は脇目もふらず歩道橋へ。


この先も太平洋岸自転車道全ルートを通じて1、2を争うユニーク箇所。
ルートは右側の細い歩道を行くのだが、対向は車道で当然左側通行。和歌山方向は歩道、銚子方向は車道で同じ側を走るのだ。

そしてその先で熊野名物、変形矢羽根出現。ルートはぐいっと曲がって左側の車道へ。ここで反対方向のルートと交差する。

そしてトンネルに向かうのだが入り口手前で再びトンネルの右側にある歩道へ誘導。再び変形矢羽根発動!

この狭い歩道を対面通行。

サイクリストの安全を優先して禁断の変形矢羽根を考案、このアクロバティックな誘導を実現させた国土交通省紀勢国道事務所 熊野維持出張所の阪井宣行さんと。フェイスブックで発信しながら走っていたので、それを見て待っていてくれた。

熊野歩道トンネルを抜けた先。何ということのない場所だが、妙に雰囲気がよくて印象に残った。

熊野市街を抜ける。

紀宝町から和歌山県境まで

ここからはひたすら海沿いの国道42号を走る。七里御浜ふれあいビーチはここだけカリフォルニアみたいだ。

紀宝町に入るとすぐの道の駅紀宝町ウミガメ公園。

これはウミガメではなくリクガメ。

道の駅の「駅長」、石本慶紀さんが迎えてくれた。ここはウミガメと触れ合えるだけでなく、レストランなどもあるので休憩スポットとしてぜひ利用したい。

その先も迷いそうなところには連続矢羽根が。本来、太平洋岸自転車道の理想的な矢羽根設置としては、分岐に近づくにつれ矢羽根の数を徐々に増やしていき、分岐交差点内はこのように連続で設置、というもの。それに沿った設置方法となっている。

熊野川を渡る手前の紀宝トンネル。右車線に広い歩道があるため、車道を横断してそちら側を走ることに。

しかしトンネルを出るところで歩道が別方向へ向かっていくので、今度は左側へと渡る。

そして連続矢羽根が新熊野大橋へと誘う。この矢羽根が「三重は楽しかったかい? この先も気をつけて行けよ!」と言っているように思えた。

そして橋の中間に和歌山県の表示が。ついに最後の県、約束の地和歌山に突入だ!

次回は和歌山県のエリア解説編

太平洋岸自転車道実走調査⑭和歌山県:新宮から和歌山までの道路状況や走行ポイント...
2022年秋にナショナルサイクルルートである太平洋岸自転車道の全ルートを実走調査した経験をもとに、その全容を紹介するシリーズ。今回はルート最終となる和歌山県部分の解説編。DATA新宮→和歌山(加太港)距離:311km、獲...

執筆:岩田淳雄

愛知県出身、千葉県在住。
自転車雑誌「サイクルスポーツ 」「バイシクルクラブ」の編集長を歴任。現在は「ペダルプッシャー」を主宰し、サイクリングの啓発活動を展開しています。
https://pedalpusher.jp/

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太平洋岸自転車道実走調査⑭和歌山県:新宮から和歌山までの道路状況や走行ポイントを解説

太平洋岸自転車道実走調査⑭和歌山県:新宮から和歌山までの道路状況や走行ポイントを解説

2022年秋にナショナルサイクルルートである太平洋岸自転車道の全ルートを実走調査した経験をもとに、その全容を紹介するシリーズ。今回はルート最終となる和歌山県部分の解説編。

DATA
新宮→和歌山(加太港)
距離:311km、獲得標高:3420m、最大標高:153m

ルート概要

WAKAYAMA800の海沿いルートとほぼ重複するルート

全長311kmと、静岡県の441kmについで長い和歌山県のルート。
基本的には国道42号を海沿いにひたすら走るルートだが、太地町、串本町、白浜町・田辺市、美浜町から和歌山市などは国道から外れる部分がある。また白浜町と由良町の戸津井でダブルルートとなっている。
白浜町は半島部分をショートカットするルートと半島をまわるルート。ここは地元自治体のサイクリング施策との兼ね合いでこのような形になったという。
由良町は山側のルートが本来のルートだが、そこに海岸沿いのトンネルを通る平坦ルートをサブルートとして追加したということだ。今回実走したのは白浜半島をまわり、由良町ではトンネル側を走るルートで、上記DATAの距離や獲得標高もそのルートのものになっている。

「サイクリング王国」を標榜する和歌山県にはWAKAYAMA800という独自のサイクリング振興施策があり、その推奨ルートにブルーラインが引いてある。
しまなみ海道のように途切れずに続くものではなく、100mに1カ所、5mのラインを設置するのが基準。
太平洋岸自転車道のルートは基本的にはこのWAKAYAMA800のS-1という海沿いのコースと同じだが、太地町の森浦湾部分(湯川駅の少し南側)で違うルートをたどっている。これはWAKAYAMA800制定時にはまだ供用されていなかった自転車歩行者専用道が、ナショナルサイクルルート指定に向けて、太平洋岸自転車道を整備する時点で開通したので、そこを通ることにしたためだという。

基本的には太平洋岸自転車道とWAKAYAMA800のS-1コースは同じルートなので、一部をのぞきどちらの指示に従っても問題はない。互いに補完しあってサイクリストの安全快適な走行環境を提供しているといえる。WAKAYAM800に関してはこちらを参照。

 出典:「太平洋岸自転車道」(国土交通省 近畿地方整備局)

ルート高低差

細かいアップダウンで獲得標高3000m超え

海岸線はアップダウンが多く、獲得標高は伊豆半島をまわる静岡東部に迫る3400m。
だがほとんどが標高差80m以下の小さな上り。最大の峠は由良町戸津井にある、トンネルを回避するダブルルートを過ぎて、衣奈漁港から先の県道23号・24号。
獲得標高150mで、勾配自体はそれほどではないものの、疲れた脚にはかなりこたえる。ここが和歌山県ルートの最高標高地点となる。だが勾配がいちばんキツいのは海南市の大崎漁港からの上りだろう。
勾配10%を超える阪が断続的に続き、サイクリストの心を折る。

もっとも区間を区切ってみてみると、いちばんハードなのはすさみ町から白浜町にかけて。トンネルに助けられる箇所もあるものの、次々に現れる坂に修行僧のように心を無にして立ち向かわなければならない。

そのほかルートを通じて全体的に細かいアップダウンが続くので、その総計が3400mという獲得標高になるのだ。




出典:国土交通省 関東地方整備局

道路状況

国道42号は田辺をすぎると交通量が増える

和歌山区間は全長300kmを超えるだけあり、サイクリングロードから地元の生活道路、都市部の国道バイパスまで、さまざまな道を通る。道路の幅や交通量なども場所により多様だ。
基本的には車道を走らせる設定になっていて、歩道を走る部分はほとんどない。

新宮市から太地町、すさみ町から田辺まではルートと並行して走る紀勢自動車道が無料区間となっているおかげで、国道42号の交通量は非常に少ない。
とくにすさみから白浜手前はあまりにクルマが通らないのでさびしくなるほど。逆に田辺をすぎると急にクルマが増える印象。

また自転車歩行者専用道は3カ所。太地町の県道802号太地新宮自転車道線はごく短い区間しか供用されていないが、最近整備された部分のため舗装などもきれい(詳細はこちら)。
白浜手前の県道801号白浜日置川自転車道線(MAP④)には一部通行止め区間があり、その部分は注意が必要だが、新しく整備された北側部分は路面も良好で快適。和歌山市の県道803号紀の川自転車道線(MAP⑫・紀の川サイクリングロード)はほんの一部を通るだけだ。

全然クルマが来ない、すさみ町先の国道42号


太地町手前の県道802号太地新宮自転車道線(MAP①)


県道801号白浜日置川自転車道線の新しく整備された部分(MAP⑦)

走行注意ポイント

和歌山市内の土入川大橋の路面ジョイントに注意

全体的に交通量が少ない部分が多いので事故の不安は少ない。トンネルもそこそこあるが、危険を感じるほど交通量が多く長いものはなかった。

ナショナルサイクルルートに指定された当初、下り階段の入り口に車止めや注意喚起看板などのない場所(通称:天国への階段。詳細は次回実走編で)があったが、利用者の指摘により早々に対策がなされた。

和歌山市内、紀の川サイクリングロードに入る手前にある土入川大橋は、2カ所ある路面の橋桁ジョイント部分にロードバイク用タイヤがはまり込み、パンクする危険性が高い。通過の際は歩道部分を通るなどしてトラブルを避けたい。

天国への階段(MAP⑥)


土入川大橋のジョイント部(MAP⑪)

ルート案内の状況

ゴールまでの距離入り路面表示

矢羽根と案内看板での誘導は他県と同じだが、やはり特徴はWAKAYAMA800の案内との共存。矢羽根とブルーラインが同時に現れる部分もあり、当初は太平洋岸自転車道とWAKAYAMA800がケンカしているようにも思えたが、やがてそれぞれがルート案内を補完し合っているのだと思えるようになった。

案内看板にはすべてWAKAYAMA800のシンボルマークが入る。このようなオリジナルアレンジはチーバくんがあしらわれた千葉県と、ここ和歌山県だけのものだ。

和歌山県の道路局によれば、WAKAYAMA800のほうが先に整備されたため、そこに太平洋岸自転車道の表示を足す方向で整備が進められたとのこと。
路面表示には、太平洋岸自転車道のシンボルマークに加えゴールの加太までの距離とWAKAYAMA800のルート名(S-1)が入っているものもあるが、これはあとから太平洋岸自転車道のマークが付け足されたものだ。
またこの距離表示は和歌山県独自のもので、距離がわかるのはサイクリストにとっても励みになる。またWAKAYAMA800が路面標示メインでルート誘導しているせいか、ほかの県よりも路面表示による誘導が多い印象だ。

矢羽根とブルーラインが同時に現れる


S-1というWAKAYAMA800のルート名と、ゴールの加太までの距離が入った路面標示。逆向きは新宮までの距離を表示。この小さい矢印はもともとWAKAYAMA800のもの


案内看板にWAKAYAMA800のシンボルマークが入る

迷いやすいポイント

自転車歩行者専用道の入り口がわかりずらい

白浜町の日置にある白浜日置川自転車道線の入り口は見落としがち。その手前の道に矢羽根などの案内がなく、信号を道なりに右折してしまうが、よく見ると左側に自転車歩行者専用道への入り口に続く路地がある。

和歌山市内のサンブリッジ先、和歌山湾に沿って北上する道は、亀ノ川を渡って最初の信号から名草大橋の手前まで防波堤上の道を行くが、MAPでは下の道を指示している。MAPと実際の状況との齟齬部分だが、指示に従って防波堤の道を行けば道に迷うことはない。

白浜日置川自転車道線。この自転車歩行者専用道への入り口は見落としがち(MAP③)


ここはMAPでは下の道路を走ることになっている(MAP⑩)

迂回路情報

自転車歩行者専用道で一部通行止め

白浜日置川自転車道線の道の駅志原海岸先の山間部が通行止めとなっていた。(2023年3月末に確認したがまだ通行止め)迂回路は国道42号となる。

自転車は入っていけそうだが、地権者が立ち入ることができるようにしてあるだけで、規制上は通行止めだ(MAP⑤)

観光&ビューポイント

観光スポットの多さではルート随一

太地町は捕鯨の町。町立のくじら博物館はじめ、クジラにまつわるスポットやモニュメントが多い。そして串本町の橋杭岩、潮岬、白浜町の三段壁、千畳敷、円月島など南紀熊野ジオパークのダイナミックな景観が楽しめる和歌山。
ほかにも田辺市の天神崎、由良町の白崎海岸、和歌山市のマリーナシティ、雑賀崎などなど、ルート上だけでも多くの景勝地を通る。ルート上の観光スポットの多さでは太平洋岸自転車道が走る全県のなかで群を抜いている。
そしてなんといっても太平洋岸自転車道のゴールとなる和歌山市加太港のモニュメント。ここが太平洋岸自転車道サイクリストにとって最も重要な撮影スポットなのは間違いない。

捕鯨の町、太地町


串本町の橋杭岩(MAP②)


本州最南端の潮岬


白浜町の千畳敷(MAP⑧)


加太の太平洋岸自転車道モニュメント

次回は新宮から和歌山までの実走レポート編

太平洋岸自転車道実走調査⑮和歌山県:新宮から和歌山までのサイクリングレポート
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執筆:岩田淳雄

愛知県出身、千葉県在住。
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【CYCLE MODE TOKYO 2023】サイクルモード東京2023で聞きました 。「ナショナルサイクルルートの魅力を教えて!」

【CYCLE MODE TOKYO 2023】サイクルモード東京2023で聞きました 。「ナショナルサイクルルートの魅力を教えて!」

今年も盛り上がったサイクルモード東京。日本最大級の自転車の展示試乗イベントが今年も開催され、多くの来場者でにぎわいました。自転車ブランドだけでなく、パーツや用品、さらに保険やサイクリングエリアの紹介、自転車メディアなど、自転車に関する多くのブースが出展され、ステージイベントとともに参加者たちを魅了しました。今年はeバイク関連の出展も多く、時代がどんどんシフトしていることを感じさせました。


会場は今年も東京ビッグサイト。江東区有明にあります


会場はたくさんの来場者で大盛況


2日目は天気もよく試乗を楽しむ人たちがたくさんいました


ステージイベントも大盛況です


試乗前には無料のレッスンコーナーを受講できます

そのなかでTABIRINが注目したのはナショナルサイクルルートの合同ブース。ここにはしまなみ海道やビワイチをはじめ、全国で6カ所指定されているナショナルサイクルルートの担当者が集結して、それぞれの魅力をアピール。まさに日本を代表するサイクルルートがそろい踏み。いつかは走ってみたいナショナルサイクルルート。こんなチャンスを逃してはならじとお話を聞いてきました! ナショナルサイクルルートの魅力を教えてくださーい!


いつも自治体ブースは閑散としていることが多いのですが、ナショナルサイクルルートのブースは身動きが取れないほどの大盛況でした。関心の高さがうかがえます

トカプチ400


北海道の帯広を中心とする十勝平野、大雪山麓を駆け抜ける雄大なサイクリングルート。肥沃な大地に豊かな農業、酪農の広がりを感じることができる。

北海道の雄大な景色を速攻で満喫できる!

北海道開発局 帯広開発建設部 上席道路計画専門官
宮西功喜さん

トカプチ400は大雪山麓から太平洋岸までを駆け抜ける合計403kmのルートです。おおまかに言うと8の字を描くルートになっていて、ルートどりがいろいろできるのが特徴で、北海道の大自然を体感しながら、さまざまな景色のなかを走れるのが魅力です。

トカプチっていうのは先住民族であるアイヌの言葉で「十勝川」を意味しています。それがもとになって十勝という地名も生まれています。

403kmを全部走るということになると健脚者向けになりますが、一部を走るのであれば初心者やファミリーにも十分楽しめる設定です。たとえば帯広駅から十勝川温泉までをレンタサイクルで走るとか。十勝川の堤防上を走る部分は解放感があり、距離は短いですがこれだけでも北海道を自転車で走る特別感を味わってもらえると思います。

最近は三国峠のダウンヒルが人気です。一般的には峠というと上って下ってになるんですが、上士幌町ではNPOひがし大雪自然ガイドセンターが、自転車をクルマで峠の上まで持って行きダウンヒルだけを楽しむという楽しみ方をサポートしてまして、それが人気なんです。

帯広空港にもレンタサイクルが用意してあって、それを使って空港からサイクリングを楽しむ方も増えてきています。レンタサイクルは事前予約なんですが、今年もGW空けから予約が始まる予定です。荷物を空港から帯広駅前バスターミナルまで運ぶ事業など、サイクリスト目線でサービスを充実させています。

個人的には三国峠の壮大さが好きですね。途中の橋から走ってきた道が見下ろせるんですよ。ぜひ一度走ってみてください!


北海道の広さを感じられる十勝川の河川敷もルートに


ルートを外れてちょっと寄り道して豊頃町にある湧洞湖も訪れてみたい。周辺には美しい原生花園が広がる


冬にはファットバイクを使ったガイド付きツアーなども楽しめる

富山湾岸サイクリングコース


富山湾に沿って設定されたフラットで走りやすいルート。その富山湾の美しい海越しに見える風景は、訪れたサイクリストを必ず感嘆させる。

海越しの立山連峰と富山湾のグルメ!

富山県 地方創生局 観光振興室 副主幹
小沼景子さん

富山湾をぐるっと囲むように延びる約102kmの富山湾岸サイクリングコース。なんといっても海越しに3000m級の山々が見える雨晴海岸から見る絶景が最大の売りです。こういう場所は世に3カ所しかないと言われていて、日本ではここ富山湾、あとはチリとイタリアにあるそうです。また世界で最も美しい湾クラブにも加盟している富山湾全域の美しさを楽しみながら走れるのがポイントです。

周回路ではなく海岸線の1本道ルートなので、新幹線のJR富山駅を起点としてもいいですし、氷見市にあるひみ番屋街がルートのゲートウェイになっていますので、クルマで来てそこを起点にする方も多いですね。また富山には湾岸サイクリングコース以外に北アルプスの麓をめぐる田園サイクリングコース、さらにこの2つをつなぐ連絡コースがあり、それらと組み合わせて楽しむのもお薦めです。富山駅からはあいの風とやま鉄道や富山地方鉄道がサイクルトレインを運行していますので、それを利用したりしてアクティブに楽しんでいただけたらと思っています。

個人的なお薦めルートは富山駅から海王丸パークを経て、あいの風プロムナード越ノ潟へ。ここは新湊大橋の下を自転車と歩行者が渡れる絶景スポットです。そこから昨年12月に国宝指定された勝興寺、そして雨晴海岸の横を走って氷見市で虻が島越しの立山連峰を見る。これがサイコーです。

グルメでいうと富山湾鮨や白エビ、ホタルイカ料理など、富山湾ならではの味覚を楽しんでいただきたいですね。黒いスープが独特なラーメン、富山ブラックはサイクリストの塩分補給にも最適ですよ!


しっとりした趣のある岩瀬の町並み


海越しの立山連峰が望める雨晴海岸


富山湾ならではの海の味覚、ホタルイカ

つくば霞ヶ浦りんりんロード

東京から50分で多様な楽しみ方が待っている!

茨城県 県民生活環境部 スポーツ推進課 主事
沼田貴裕さん

つくば鉄道の軌道跡を利用したつくばりんりんロードと、霞ヶ浦自転車道が一体化してつくば霞ヶ浦りんりんロードになりました。霞ヶ浦一周が約140km、つくばりんりんロードが約40km、合わせて総距離約180kmです。霞ヶ浦は途中の霞ヶ浦大橋でショートカットすると約90kmのショートコースも作れるので、自分のレベルに合わせてルート設定できます。霞ヶ浦はショートコースを走る方のほうが多い感じですね。

JR土浦駅がコースのハブになっているので、そこでレンタサイクルを借りて、りんりんロードで岩瀬駅まで行って乗り捨てる、またはその逆という利用パターンが多いです。健脚サイクリスト向けには筑波山のヒルクライムも楽しめます。筑波山神社にはサイクリスト向けのお守りもあるのでヒルクライム達成の記念にぜひ! 筑波山から見る絶景はごほうびですよ!

土浦周辺には蓮(レンコン)畑が多いので、その水を張った畑に映る夕日など写真映えするスポットがたくさんあり、こちらもお薦めです。休日の夕方にはアマチュアカメラマンが大勢集まっています。

霞ヶ浦は湖の開けた風景を楽しめるフラットな道がずーっと続くので、初心者やファミリーでも走りやすいと思います。

東京から土浦まで50分というアクセスのよさ、フラットなコースのなかにヒルクライムも楽しめたり、180kmを一気に走るという上級者向けのチャレンジもできるなど、多様性が魅力だと思います。


季節ごとに違った表情を楽しめる筑波山


息を呑む美しさ。霞ヶ浦の朝焼け


道の駅たまつくりで食べられるなまずバーガー。霞ヶ浦で捕れたナマズを使用

太平洋岸自転車道


千葉県銚子市から和歌山県和歌山市まで6県を結んで走る日本最長の自転車道。沿線には日本を代表する観光地がひしめき、訪れるサイクリストを魅了する。

自分だけのオリジナルな走り方で楽しんで!

国土交通省 自転車活用推進本部事務局次長(道路局参事官)
金籠史彦さん

これから1400kmの旅が始まるという高揚感。そのスタートである銚子のモニュメント前に立ったときの気持ちは特別です。そしてゴールである加太港での達成感は何ものにも代えがたいはずです。太平洋岸自転車道は6県にわたって太平洋岸を駆け抜けるわけですが、県ごとに特徴があって、さらに同じ県内でも走っていくうちに表情が変わる、そのダイナミックな行程がこの太平洋岸自転車道最大の魅力でしょう。

伊豆半島や伊勢志摩など上級者にも走りごたえのある場所もあれば、旧街道のしっとりとした町並みを楽しめる部分、軌道跡をたどるところ、雄大な景色に心打たれるところなど、走るにつれ風景や味わいが変わっていきます。もちろん海の風景も同じではなく、その場所その場所で全部違います。

太平洋岸といいながら紀伊半島ではかなり山深いところも走りますし、海だけではない魅力を感じてもらえればと思います。また東京湾フェリー、伊勢湾フェリーといった航路がコースの一部になっているというのも非日常感があって楽しいですね。

グルメでいうと魚はもちろん全ルートで楽しめるんですが、場所によって味わえる種類や味が変わっていくのもおもしろいですよね。

全ルートを一気に走るというチャレンジングな楽しみ方もありますが、全体をいくつかに分けて楽しむ、あるいはオイシイところだけを選んで走るというのもアリです。自分だけのオリジナルな走り方をして、それを思い思いに発信して頂けると、ほかの皆様の楽しみ方の幅も広がっていくと思います。

ナショナルサイクルルートに指定されたことがゴールではなく、地域の方々、サイクリストの方々といっしょになって、どんどん魅力あるものに進化させていきます。ぜひ何度も走ってもらい、そういう進化も感じてもらえればと思います!


犬吠埼灯台。太平洋岸の旅は灯台をたどる旅でもある


江ノ島越しの富士山。神奈川から静岡は富士山の威容を楽しみながら走る


和歌山県白浜町の千畳敷。三重県・和歌山県ではダイナミックな地形を見ることができる

ビワイチ

どんどん広がるビワイチの魅力!

滋賀県 観光振興局 ビワイチ推進室 主任主事
中嶌眞季さん

ビワイチの魅力は、なんといっても日本一の湖を一周できるっていうダイナミックさですね。湖の景色だけでなく、比叡山、伊吹山、比良山といった山の姿を楽しみながら走れるところもポイントです。

それだけじゃなくて、最近はビワイチファンの方々が独自に見つけたスポットが密かに人気なんです。たとえば湖北にある「コホクブロック」は、黄色いブロックに「コホク」って書いてあるだけのものなんですけど、それがサイクリストのあいだで名所になって。ほかにも「あのフレーム」や「あの地球儀」などサイクリスト発の密かな名所が続々とできているんです。メジャーなスポット以外にそういうファンが見つけた「名所」があるのがビワイチの強みかなと思っています。みなさんに愛されていることを実感しますね。

日帰りで一周する方ももちろんいますけど、最近は宿泊して楽しむ方が増えていますね。スタートは新幹線で東京方面から来る人なら米原駅とか、あとクルマの方は駐車スペースが用意された守山市をスタートにすることが多いと思います。

滋賀県では県内各地の観光地等を周遊するビワイチ・プラスというルート設定もしているんですけど、これもびわ湖沿岸以外のエリアの魅力を楽しめて人気になりつつあります。私個人もレンタサイクルをして近江商人の町を巡ったりするなど自転車での散策が好きなんです。あとは米原駅でレンタサイクルして北国街道の木ノ本という古い町並みを訪ねたり。どんどん広がるビワイチの魅力を感じに来てください!


湖北にある賤ヶ岳(しずがたけ)は奥びわ湖のシンボル


四季折々の表情が楽しめる高島市のセコイア並木


三大和牛のひとつ、滋賀の近江牛をぜひ味わいたい

しまなみ海道サイクリングロード


広島県尾道市と愛媛県今治市を結ぶ、約70kmのルート。CNNが選ぶ世界7大サイクリングコースに選ばれるなど、その魅力は世界的に知られている。

走るたびに新しい発見があるしまなみ!

愛媛県 観光スポーツ文化部 サイクリング誘客推進監
石丸正雄さん

瀬戸内の島々とそれをつなぐ架橋が織りなす絶景がしまなみ海道の最大の魅力です。でももちろんそれだけではないんです。ルートが通る各島それぞれに生活があって文化があって、そしてそれが少しづつ異なっています。島から島へと渡るたびに変わるその変化を楽しんでもらえたらと思います。

初めての方は、たとえば今治市のサンライズ糸山サイクリングターミナルでレンタサイクルを借りて、大島、伯方島と渡り、大三島のサイクリストの聖地碑まで約30km。そこでレンタサイクルを乗り捨ててバスやフェリーで今治に戻って来る、なんてどうでしょう。もちろん余裕があれば自転車で戻っても往復60kmくらいですから、一日かければ初心者の方でも走り切れると思います。

東京から来る場合のお薦めは、新幹線で来るなら福山から尾道へ出てサイクリングスタート、サイクリストの聖地碑を見て大三島で1泊、そして今治へ抜けるプランですね。

ぜひとも行ってほしいのが亀老山の展望台です。その絶景はしまなみでも1、2を争うもの。亀老山はコアなサイクリストの人にとっては大好物の激坂が有名ですが、今はeバイクのレンタルがありますので、女性や年配の方でも同じ絶景を目指して走れますよ。

ほかにも船で渡る上島町のゆめしま海道は4つの島が橋でつながれているんですが、信号がひとつもないんです。快適ですよ!

最近は宿泊施設もどんどん増えてきていて、近くほぼ無人のスマート旅館なんてものもできる予定です。しまなみ海道は常に進化を続けていますので、何度来てもらってもそのたびに新しい発見があるんです。みなさんのお越しをお待ちしています!


愛媛県今治市のサンライズ糸山にあるしまなみモニュメント


しまなみ海道でもっとも大きな橋、来島海峡大橋


大三島にあるサイクリストの聖地碑

まとめ

自治体やエリア観光紹介のブースって、そんなに人が集まらない気がしていましたが、さすがナショナルサイクルルート。その破壊力はハンパではありませんでした。連日押すな押すなの大盛況。だってしまなみ、ビワイチ、つくばりんりんと、日本のサイクリングルートのキラ星たち、そして太平洋岸、富山湾岸、トカプチというニューフェイスも全部集まっているんですから、この賑わいも納得です。来場者も「もうしまなみ走ったから次はどこに行こうかなー」とか「富山湾岸ってどうやって行けばいいの?」とか「ビワイチはどこから走り始めるといいですか?」など、前のめりな人が多いのも印象に残りました。各担当者に直接いろいろ聞けるってのもうれしかったみたい。俺もまだトカプチ走ったことないから、今年の夏は絶対に走るぞ!


担当者全員集合! みんなナショナルサイクルルートを走りに来てねー

関連リンク

ナショナルサイクルルート(国土交通省)
https://www.mlit.go.jp/road/bicycleuse/good-cycle-japan/national_cycle_route/index.html

トカプチ400
https://www.ctjguide.com/

富山湾岸サイクリングコース
https://cycling-toyama.jp/course/wangan/

つくば霞ヶ浦りんりんロード
https://www.ringringroad.com/

太平洋岸自転車道
https://www.kkr.mlit.go.jp/road/pcr/index.html

ビワイチ
https://www.biwako1.jp/

しまなみ海道サイクリングコース
https://shimanami-cycle.or.jp/

DATA

イベント名:CYCLE MODE TOKYO 2023
開催日:2023年4月15日(土)〜16日(日)
会場:東京ビッグサイト
主催:サイクルモード実行委員会

執筆:岩田淳雄

愛知県出身、千葉県在住。
自転車雑誌「サイクルスポーツ 」「バイシクルクラブ」の編集長を歴任。現在は「ペダルプッシャー」を主宰し、サイクリングの啓発活動を展開しています。
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太平洋岸自転車道実走調査⑯ 1400kmを走り切るための装備と携行品

太平洋岸自転車道実走調査⑯ 1400kmを走り切るための装備と携行品

 

2022年秋にナショナルサイクルルートである太平洋岸自転車道を全ルートを実走調査した経験をもとに、その全容を紹介していくシリーズ。前回ついに実走レポートは和歌山市加太港にゴールしたわけだが、今回から装備や持ち物、費用、宿での過ごし方などを紹介する実用編(?)に突入。今回は実際に使用した機材や装備、携行品を紹介していこう。
岩田(筆者)は全行程を2回に分けて走破した。前半は10月に銚子から浜松まで。後半は11月に浜松から和歌山まで。それぞれ8日間、計16日間で走り切った。

ウエア:やっぱりサイクリング用が機能的で快適

荷物を少なくなるため、走るときのウエアの着替えは持たない。毎晩宿で洗濯して対応した。ほかには洗濯をするときに着るTシャツなどを持った。

前半のウエアはサイクリング用の上下セット

季節がよかったせいで、防寒着など多くの衣類を持つことがなく、比較的身軽に走れた。前半の10月はまだ暖かく、基本的には半袖ジャージにビブショーツで走れる気温。寒いときは薄手のウインドブレーカーで対応した。

洗濯を考えるとTシャツよりジャージ

上衣はサイクリング用のジャージがベスト。Tシャツなどでも走れるが、吸汗速乾性を考えると専用ウエアが適している。また洗濯しても乾きやすいというメリットも。Tシャツならポリエステル100%のものがお薦め。なおジャージの下には専用のメッシュアンダーを着ている。汗をかいても快適で保温性もある。

またクルマからの被視認性を上げるために蛍光オレンジで反射材のついたベストを着用。これもある程度の保温性があった。

ショーツはパッド付きの専用品を

ショーツ(パンツ)はお尻が痛くなるのを防ぐため、パッド入りの専用品(サイクリングショーツ)を。ピチピチ感がいやならパッド付きの専用ショーツもあるのでそれを使いたい。その場合も上に履くパンツの素材は乾きやすいものを。洗濯をラクにするためだ。

ちなみに岩田はダブルレーパン派で、パッドを厚くするためサイクリングショーツを2枚重ね履きしている。内側はビブなし、外側がビブショーツだ。

アームカバー&レッグカバーで日焼け予防

季節的に長袖ジャージでもいいかと思ったが、気温によって調整できるようアームカバーとレッグカバーにした。日焼け予防効果もねらった。ただアームカバー、レッグカバーともズレやすいので、ときどき位置を直すのが少し面倒だった。

指部分が長めのサイクリング用グローブ

指ぬき(指部分のない)グローブか指付きのものか迷ったが、暑くなることを想定して指ぬきに。ただし少し指部分が長いものを用意した。日焼け対策もある。手が痛くなることを防ぐだけでなく転倒時のケガ防止も考えて、グローブはぜひ着用したい。

シューズは歩けるサイクリングシューズ

ペダリングにはシマノのSPD-SLなど専用クリート対応のシューズが適しているが、歩くことの多い泊まりがけのツーリングには不向き。輪行時はもちろん、宿に着いてからも洗濯や買い出しなど歩く機会は多いので歩行に対応するのは重要だ。
岩田が使用しているのはシマノのSPDというシステムのビンディングペダルに対応したシューズで、ペダリングしやすく歩きやすい。ただMTB用とうたうシューズにはレース用のものが多く、ソールが硬く歩行には適していない。スニーカーに近いルックスのものはソールが柔らかく歩きやすい傾向。

おまけ:脱いだベストの活用法

伊豆半島の山坂を上っているとき、暑くてベストを脱いだのだが、それをバックパックに巻いて被視認性をアップさせてみた。

後半は長袖のアウターとロングタイツで

後半は季節が1カ月進み気温が下がったことで上衣とショーツをロングタイプに変更。そのほかは10月と変わらない。

上衣はゴアテックスのインフィニアムという素材のもの。防水性も持つがそれより防風・透湿に重きを置いた製品。これの下にメッシュのサイクリング用アンダーシャツを着た。案の定上り坂では大汗をかいたが、下りで冷えることはなく、このあたりが正解だったと思う。

ショーツは少しだけ裏起毛されたタイプのビブなしタイツを下にはき、上からショート丈のビブショーツを重ねた。

グローブも指ぬきのままだが、もし寒ければコンビニで軍手でも買えばいいやと。装備や持ち物で迷った場合、途中で買えるものは持っていかなくても大丈夫。それより荷物の軽量化を考えるべきだと思う。

荷物とバッグ:とにかく荷物を少なくして身軽に走る

ロングツーリングだからと荷物を増やすと、その重さで走るのがつらくなる。伊豆半島や伊勢志摩、熊野あたりのアップダウンでは、少しでも装備を軽くしたい。使うものを厳選して必要最小限の荷物で走りたい。

貴重品と衣類を背負いあとは自転車に分散

サドルの後ろに付けるシートバッグがいいかと思ったが、それだと乗り降りで脚を高く上げなければならない。今回は全行程で2500枚も道路などの写真を撮りながら走ったので、乗り降りの負担は少なくしたかった。またコンビニなど自転車から離れるシーンが多いので、パソコンが心配。そこで今回はバックパックで行くことにした。重いのはパソコンとケーブル類だけで、あとは衣類なのでそれほど重くないだろうと。

そのほか自転車積載用にツールボトル、ハンドルバーバッグを使用した。この写真は後半のスタート前のホテルでのもの。

バックパックは30Lくらいまでが使いやすい

前半はノーブランドのバックパック(写真左)。オレンジ色で目立っていいのだが、ショルダーベルトが肩に食い込んで痛かったので、後半はモンベルのものに。後半は防寒着など少し荷物も増えたので、容量も前半の25Lから30Lにアップ。これ以上大きなバッグだと、肩や腰にかかる負担が大きくなるだろう。

できれば背中部分の通気性のいいものがほしかったが、安全のため被視認性の高い色のものを優先して探し、このモンベルに落ち着いた。ほんとうはもっと蛍光色のものが欲しかった。

重いものは自転車に装着

工具やスペアチューブを入れるツールボトルのロングタイプを使用。ウォーターボトルはロングタイプを使った。夏場だと2つボトルを持つ必要があるだろうが、秋だったのでこの組み合わせで大丈夫だった。

あとはハンドルバーに装着する小ぶりのバッグを取り付けた。また後半は雨予報があり雨具を持ったため、それをサドル部分にベルクロベルトでくくりつけた。

持ち物は割り切って必要最小限で

持っていったのに使わなかった、では意味がない。もちろんトラブルに対応するための工具などは仕方ないが、そのほかは使うものだけ持っていきたいもの。基本的には少なめの用意で出かけ、必要になったら現地で買うという気持ちで。太平洋岸自転車道では一部をのぞきコンビニなどがずっとあるし、都市部も通るので心配はない。事実、岩田も後半2日目にコインランドリーなどで宿から外に出るためのズボンが必要だと気づき、薄いスウェットパンツを買った。

バックパックの中はパソコンと衣類など

パソコン(MacBook Air)と電源ケーブル、輪行用品、宿での着替えなどをバックパックで背負った。パソコンは仕事用に持ったが(スマホでは原稿が書けないので)、フツーはスマホで事足りると思うので、もっと身軽になれると思う。また写真にはないが、後半は防寒用の薄手のダウンジャケットを携帯、宿からの買い出し時などに重宝した。

ソフトケースにパソコンを入れ、スマホやサイコン、ライトの充電用ケーブルやアダプターを持った。スマホ用のモバイルバッテリーはスマホにMAPを表示させながら走るために用意したが、そういう使い方はしなかったので不要だった

輪行用品。輪行袋はオーストリッチの超軽量ウルトラSL-100を購入。破れやすいかと思ったがていねいに扱えば全然問題ない。フロントフォークのエンドアダプターとか軍手はいらなかったかも。グチャグチャと丸まっているのはベルクロのゴムバンド。チェーンを引っ張ったり、ブレーキレバーを固定したりするのに使用。ほかに荷物固定用にも使える。ウエスが丸めてあるのはシートポスト(ISP部分)の保護。フレームサイズが大きいのでサドルを外さないと輪行袋に入らない

宿で着るための着替え。パンツ1枚、Tシャツ1枚、ソックス1P、極薄手のフリース、ペラペラの短パン。宿ではこれに宿の浴衣などですごす。買い出しなどもその格好で。宿にコインランドリーがある場合は下着もはかずに浴衣になって、このパンツやTシャツも洗濯する


常用薬やティッシュ、スペアのマスク、捨ててもいいタオルとブラシ(宿でもらったやつ)をポーチに入れて携行。このポーチをバックポケットに入れようかと思ったが、そうしなかったのでビニール袋でよかったな

フロントバッグにはワイヤー錠やミニ三脚

すぐに取り出すことことができるよう、鍵やメモ帳、撮影用の三脚などを入れた。が、メモも三脚も使わなかった。撮影は三脚を使うほど熱心にはせず、スマホ手持ちでバシバシ撮るだけだったし、メモもスマホの写真で事足りることがほとんどだった。コタツのコードみたいに見えるのは鍵。

ツールボトルには工具などを

ツールボトルの中身はふだんの日帰りサイクリングのものと変わらない。秘境の旅ではないので、ふだん以上の用意は不要。工具を貸してくれるサイクルステーションもあるし、自転車屋もルート上にたくさんある。

スペアチューブ2本、タイヤレバー、ミニポンプ、ミニホールディングツール、パッチセット、ウッズ→フレンチバルブ変換アダプター(このアダプターがあると家庭用の英式バルブの空気入れでスポーツ用のフレンチバルブに空気を入れられるので便利です)、交換用ハンガー(以前リヤディレーラーをホイールに巻き込みハンガーが曲がって走行不能になったことがあるので。このへん持つ持たないは考え方次第だが、ハンガーはなかなか手に入らないので持ったほうがいいと思う)、バルブエクステンダー(これは必要なかったな)

ウエアのバックポケットには財布、スマホ、ウインドブレーカー

サイフに現金、運転免許証、保険証、クレジットカード、交通系カード(PASMO)を入れ、あとは超薄手のウインドブレーカー、マスクなどを入れる。写真にはないがスマホと老眼鏡もバックポケットに。走っていたら鼻水が止まらなくなったので(鼻炎)、コンビニでミニタオルを買った。

自転車の装備:テールライトは強力なものを

次に実際に使ったライトとサイコンなどについて紹介しよう。太平洋岸自転車道にはトンネルがいくつもあるので、走行する際にはライトの装着がマスト。また昼間から点灯して周囲のクルマに対して存在をアピールしたい。

夜間走行の予定がなくてもライトは必ず装備

道交法的にベルの装着は必須だが、ライトは夜間走行やトンネル内走行をしなければ必要ない。だが太平洋岸自転車道にはトンネルが数多くあるし、スケジュールが遅れて夜間走行をせざるを得ない場面が訪れがち。しっかり「使える」ライト類を用意したい。

フロントライトは真っ暗な自転車歩行者専用道を走ることを想定して

じつはフロントライトに関しては、今回失敗したと思っている。夜間走行をする予定がなかったので、昼間の対向車に存在をアピールできる程度の光量があればいいと思っていた。明るいライトは重いのがイヤだった。用意したのは400ルーメンの光量をもつコンパクトなもの。都市部のナイトライドでは対向車へのアピールに十分な性能だった。しかし太平洋岸自転車道の自転車歩行者専用道には、街灯のない真っ暗な道が多い。そこでライトの明かりだけで路面を照らして走るには、400ルーメンでは心もとなかった。

また朝から点滅モードで周囲に注意喚起しながら走ると、夕方までに電池残量がなくなってしまうことも走ってみて気づいた。そこで後半では小さなサブライトを日中光らせておいて、メインのライトは夕方以降使用するにとどめた。

太平洋岸自転車道を連日走るのなら、800〜1000ルーメン程度の光量をもつフロントライトを、お守りだと思って用意したい。

リアライトはとにかく明るく目立つものを

リアライトはキャットアイのビズ300という最強モデルを使った。これを走り始めからフラッシュモードで点滅させ、後続車に存在を強烈アピール。このおかげでトンネルでも安心できた。また使用時間もフラッシュモードで10時間。休憩中は消すようにすれば、一日十分に使用できた。これはお薦めです!

サイクルコンピューターはGPSモデルがお薦め

あとからログを保存・確認できるGPS対応のサイコンが便利。ナビゲーション的に使うことはなかったので、走行中はスピードと距離の表示がメイン。

記録に残せるだけでなく、自分が走ったルートをあとから確認できるため、SNSなどで発信する際にも便利

前半はMAPを確認せずにルートミスすることがあったので、後半はスマホをハンドルに取り付け、確認しながら走ってみることにした。だが自分の位置を中心にどんどんMAPが動いていくような使い方ができず、ときどき見るだけになってしまった。

反射テープをあちこちに貼り付けて被視認性アップ

夜間やトンネル内での安全確保のため、ホームセンターで購入した反射テープをあちこちに貼り付けた。ヘルメットの後方、ペダル、クランク、シューズのかかと、バックパック、さらにフレームのシートステーやシートポスト部分など、後方から見える部分にじゃんじゃん貼り付けた。

以前、大阪から東京まで550kmを走ったことがあり、そのときも同様の反射材を使用したのだが、そのときに取材伴走してくれたクルマのドライバーが「後方から追い上げていくと、まずリヤライトの明かりが見える。でもクルマが近づいてヘッドライトの照射範囲に入ると、自転車のリヤライトよりも反射テープのほうが強烈に目立つ」と言っていた。さらに「シューズのかかとに付けた反射テープは、上下に動くのですごく目立った」とも。

反射テープは安いものなので、気楽に活用したい。自分の命は自分で守るのだ。


写真にはないが、フレームにも反射テープを貼った

自転車:太いタイヤのロードバイクがベスト

最後に自転車の話を。結論からいうと、どんな自転車でも太平洋岸自転車道は走れる。ミニベロでもクロスバイクでもMTBでもそれぞれに楽しめる。だが太平洋岸自転車道はほぼ全線舗装路なので、軽快に走りを楽しみたいなら快適性を重視したエンデュランス系のロードバイクがベストだろう。ただしタイヤは25〜30C程度の太めのものをお薦めする。歩道を走ることも多く、段差や荒れた路面、海岸の自転車歩行者専用道に堆積した砂などに対応するためだ。

しかしそんなアドバイスをしている岩田はというと、エアロロードにカーボンディープリムホイール、しかも細い23Cタイヤという、ツーリングには到底不向きな自転車での走行となった。機材のやり繰りの都合でこうなってしまったのだが、結果どんな自転車でも走れるということを証明することになったのかも。

何日にもわたって走る場合、やはり乗りなれた自転車がいいし、何より自分の「相棒」と走る道のりは最高の思い出になるだろう。


ディープリムホイールで横風にあおられるのが不安だったが、幸いにして強風にはあわなかった


タイヤはパナレーサー・アジリストのデューロをチョイス。軽量でありながら耐パンク性に優れているのが決め手になった。おかげでパンクは一度もなかった。25Cにしたかったが、フレームとのクリアランスなどの関係で23Cに

次回は太平洋岸自転車道全走破の家計簿大公開!

太平洋岸自転車道実走調査⑰ 全ルート走破家計簿 1,400km走っていくらかかったか?
2022年秋にナショナルサイクルルートである太平洋岸自転車道を全ルートを実走調査した経験をもとに、その全容を紹介していくシリーズ。今回は岩田(筆者)が1,400kmを走破して実際いくらかかったのかを公開していく。それと...

執筆:岩田淳雄

愛知県出身、千葉県在住。
自転車雑誌「サイクルスポーツ 」「バイシクルクラブ」の編集長を歴任。現在は「ペダルプッシャー」を主宰し、サイクリングの啓発活動を展開しています。
https://pedalpusher.jp/

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太平洋岸自転車道実走調査⑮和歌山県:新宮から和歌山までのサイクリングレポート

太平洋岸自転車道実走調査⑮和歌山県:新宮から和歌山までのサイクリングレポート

2022年秋にナショナルサイクルルートである太平洋岸自転車道を全ルートを実走調査した経験をもとに、その全容を紹介していくシリーズ。和歌山県ルート解説に続き、今回はいよいよゴールとなる和歌山市の加太港までの実走レポート。

実走調査日:2022年11月18日〜22日

DATA
新宮→和歌山(加太港)
距離:311km、獲得標高:3420m、最大標高:153m

  出典:「太平洋岸自転車道」(国土交通省 近畿地方整備局)

新宮から那智勝浦まで

新宮市内に入り、ブルーラインとの遭遇。ついに和歌山まで来た。

WAKAYAMA800と太平洋岸自転車道の表示が合体している。

この小さい矢印はWAKAYAMA800のもの。

国道42号の大狛子トンネルは分岐を左へ行き旧道の大狛子隧道を通ってみた。ルートは国道のほうだが、こっちのほうが安全。


道の駅なちは那智駅に併設。サイクルステーションを示す大型の看板は、太平洋岸自転車道のナショナルサイクルルート指定に向けて設置されたもの。

雰囲気のいい那智駅。

黄色いポスト。有名らしい。

ここはサイクルステーションなので工具の貸し出しなどがある。

先ほどのサイクルステーションの大型看板とは違い、こちらはWAKATYAMA800のコース(起点)を示すもの。あとから太平洋岸自転車道のマークを貼追加してあるようだ。

勝浦漁港にぎわい市場。YouTubeやブログでよく見かける場所だ。

那智勝浦から太地まで

湯川トンネル。正しいルートはこのトンネルを行くが、ここにも旧道のトンネルがあり、「歩行者・自転車は左側専用道へ」という表示もあるのでそちらへ。この旧道はグーグルマップには出ていない。

太地新宮自転車道線への入り口。WAKAYAMA800のルートはここを直進するのだが、なぜか路面の矢印は自転車歩行者専用道へ。

ブルーラインも引いてある。

この太地新宮自転車道線は名前のとおり太地町と新宮市を結ぶ計画延長25kmの自転車歩行者専用道だが、現在はこの800mほどの区間しか完成していない。

途中に階段区間も。

森浦湾の景色が美しい。

草が覆いかぶさる部分も。

三軒屋トンネル。1992年に完成したがそのまま整備が中断し打ち捨てられた状態になっていたものを、ナショナルサイクルルート指定に向けて再整備したもの。

道の駅たいじにあった案内。余談だがWAKAYAMA800は大きく川のサイクリングロード、山のサイクリングロード、海のサイクリングロードと3つに分けられ、それぞれR、M、Sのイニシャルと番号の組み合わせで路線を表示していて、この案内にもそれが記されている。
しかしじつは現在HP上でこの表記は使われておらず、「太平洋岸自転車道クライマックスルート」、「絶景の海岸線を走る白浜・すさみサイクルトレインルート」といった10のコースで表記されている。県の観光振興課によれば、アルファベットと数字を組み合わせたコース表記は、すでに行政的に使われているだけでユーザーを対象にしていないとのこと。
しかしこの案内看板もそうだが、路面標示にもまだ「S-1加太」など旧表記が用いられている。

太地くじら浜公園に近づくと、前方に大きな船が見えてくる。捕鯨船の第一京丸だ。1971年竣工で、2007年に引退した船を展示してある。

太地漁港を左手に見て急坂を上る。ここもかなり厳しい上りだった。

太地からすさみまで

串本町の古座川をすぎたあたり。

伊串漁港の入り口。無人販売所がたくさん並んでいて、このときは菊の花などを売っていた。季節によっていろんなものを売っているということだ。

「道の駅くしもと橋杭岩」のテラスからみた橋杭岩。

道の駅に貼ってあったポスター。WAKAYAMA800とのコラボだが、加太の太平洋岸自転車道モニュメントが描かれていて、おおっ!と声が出た。

橋杭岩はホントは朝や夕方がきれい。

串本市街で国道42号を離れ潮岬方面へ。その先でこの表示。左へ行くとループ橋を経て紀伊大島へ。直進すると潮岬。矢印は両方を指している。
この小さい矢印はWAKAYAMA800のものなのだが、そのルートは紀伊大島方面と潮岬方面の両方がある。だが太平洋岸自転車道は潮岬方面。ここが唯一、太平洋岸自転車道とWAKAYAMA800の表示の混在でわかりにくかった部分。

潮岬の本州最南端モニュメント。
撮影スポットでほとんどの人は潮岬の位置を指差して写真を撮っていたが、筆者は千葉と和歌山を指した。撮ってくれた人が「なんでそこを指すのか」と聞くので「ここからここまで自転車で走っているんです」と言ったら驚かれた。

潮岬灯台。灯台好きにはたまらない。

潮岬のある半島をぐるっとまわる。

周参見駅近く、ルート沿いにあるFRONT110という観光案内施設で、すさみの観光振興に関わる方々が迎えてくれた。
ここはもと警察署。津波対策で移転した跡地を利用した観光拠点となっていて、サイクリストの休憩にもお薦め。

ここは警察署の跡地だけあって、実際に使われていた留置所が観光用に一般公開されている。ぜひここで写真を。

日置川を渡る手前。川を渡ると白浜町。日置の集落が見える。

すさみから白浜まで

ルートは国道42号のトンネルを回避して旧国道(県道243号)を通る。

日置の集落で矢羽根が消え、道に迷いルートミス。白浜日置川自転車道線の入り口を見逃して直進してしまった。

すぐ先の道の駅志原海岸でルートに復帰。海岸沿いの自転車歩行者専用道だ。

そこから先の自転車道に入っていく。この自転車道はグーグルマップには載っていない。

ここまでは横道からクルマも入ってこられる。だがこの先は通行止めで国道42号で迂回する。

自転車歩行者専用道の国道への出口。通行止めでなければここまで自転車歩行者専用道で来られた。
自転車なら入れそうだが、県の道路局によれば地権者などが立ち入るために完全封鎖してないだけで、自転車も通ってはいけないということだ。

国道42号を行く。ブルーライン。

おおっと! ここに左折指示が!

ブレーキングして左の歩道へ入ると先にラバーポールが。

そしてその先は階段。そうですここが有名(?)な天国への階段。
以前はここに車止めがなく、そのまま階段に突っこみそうになっていたそうだがすでに改善されている。
たしかにスピードを出していて勢いよく歩道に入って車止めがなかったら、そのまま天国行きかも。ちなみにすぐ先に普通の坂で下りられる道がある。

そしてその先はまさに天国のような自転車歩行者専用道。ここは先ほどの白浜日置川自転車道線の続き。

ゴールまであと190km!

こ、この表示は!? どっちへ行けばいいんだ?と思ったが、ここが白浜のダブルルートの起点。左折すると白浜の半島部分をまわり、まっすぐ行くと半島をショートカットする。当然左折。

白浜は観光名所が多い。ここは千畳敷。アップダウンが厳しいかと思ったが、それほどでもなかった。

ゲートウェイになっているシラハマキーテラス ホテルシーモア。ジャイアントストアがあり、レンタサイクルも。変速の調子が悪かったのでみてもらった。
ほかにもオーバーホールしたほうがいい箇所などを教えてくれて、料金は「いいですよ」と。神対応ありがとうございました!

メジャーな景勝地が連続する。白良浜。

円月島。

入り江の湖面に映る空が美しかった。

白浜から有田まで

田辺市に入り、天神崎への入り口。

切り通しを抜けて海岸へ。

天神崎はクルマも少なく、景色もいい。
サイコーのサイクリングルートだと思うのだが、なぜかWAKAYAMA800のブルーラインがない。なんでだろうと思って聞いてみたら、じつはここもWAKAYAMA800のルートにはなっているのだが、道幅が狭いため太平洋岸自転車道の矢羽根といっしょにブルーラインを引くと煩雑になり景観を壊すので引いていないということだった。
矢羽根もブルーラインもサイクリストにとってはありがたいものだが、景観保護の観点からは問題視されることもあるのだということを考えさせられる。

みなべ町の海岸線の国道42号は交通量が多く、ルートのわきに堤防上の道があったので、そちらを通った。

印南町の国道42号。ゆるやかなアップダウンが続く。並行して走る紀勢自動車道の無料区間が終わったせいか、交通量が増えている。

このあたりから国道42号の路面には、ところどころ謎の3桁番号がペイントされている。これは国道42号の起点である浜松市からの距離。三重県を山ルートでくると、実際の走行距離と近いはず。

御坊市をすぎて日高町でルートを外れて紀伊日ノ御埼灯台へ寄ってみる。灯台が丘の上にあるのですごい激坂で、ついに自転車を押した。でもこのタイル張りの珍しい灯台を見られたので満足。

由良町へ向かう県道24号。交通量は少ない。

白崎海岸手前の立巌岩。

由良町のダブルルート区間。左へ行くと山越え、直進が2010年にできた海岸線のトンネルを行くルート。
もともとの太平洋岸自転車道が山を越えるルートで設定されていたが、そこにバイパスができたのでそちらもルートに、ということだ。交通量も少ないのでトンネルルートを選択。

ダブルルートが終わった先、県道23号。ここが和歌山県の最高標高地点だ。標高約150mで、ふもとの衣奈漁港からの平均勾配は5%程度。眼下にこれから走る道が見える。

海岸線をとことこ走り湯浅町を経て有田市へ。須佐神社の鳥居をくぐって左へ。

有田から和歌山まで

海南市で国道42号からそれて細い道に入る。ここもまっすぐ行くとトンネルなので、ルートになっているほうが旧道なのだろう。

すぐに立体交差。

海南市の加茂川沿い。太平洋岸自転車道とWAKAYAMA800のマークだけが入った珍しい案内看板。通常は次のサイクルステーションやゲートウェイまでの距離案内が入る。

海南市の大崎漁港から始まる激坂。画面奥に見える道の勾配に卒倒。

ここで自転車を押した。伊豆半島では坂がキツくて押しまくっていたが、三重、和歌山はなんとか押さずに来ていた(ルート外の紀伊日ノ御埼灯台への道を除く)。だがついにここでギブアップ。

その後も断続的に上りが現れる大崎。遠く和歌山市のマリーナシティが見える。

キンチョーの工場があった。まだ上りは続く。この大崎の上りを「キンチョー坂」と名付けよう。

このあたりはミカンの産地。

ルートは海南市の温山荘園前で国道42号を横切るが、その直前にこんな場所が。この横断歩道の先を左折の指示になっている。

そして左折して現れるのはこんな道。ここは道なの?一応自歩道(自転車歩行者道。自転車歩行者専用道と表記は似ているが、自転車も通っていい歩道という解釈が近い)の標識が出ているから公道なんだろうけど、空き地みたいな私道みたいな。

そしてムーンブリッジを渡ると和歌山市のマリーナシティ!さらにサンブリッジを渡る。

和歌川を渡り、その先。左折の指示があるが、よく見ると横断歩道の先にも直進を示す矢羽根が。これはストリートビューで確認すると和歌山市の中心部、和歌山城の前まで続いている。つまり太平洋岸自転車道の矢羽根ではないってこと。都市部ではよくあることだ。

日本のアマルフィとも呼ばれる雑賀崎。ゴールを前に早く先に進みたいと気持ちははやるが、うねうねと雑賀崎のなかを走らされる。もちろん上りあり。

ゲートウェイになっている「わかやままるしぇ」に到着。
ここで2021年に太平洋岸自転車道を9日間で走破した和歌山市職員であり太平洋岸自転車道繋げちゃえプロジェクト発起人のニシバこと西林孝紘さんと合流。加太港まで残り14kmほどとなった残りのルートを案内してもらうことに。

そしてついに加太に到達!やったーーーーーー!! 1480kmを走り抜いた!

ニシバさんが手作りの完走認定証書を読み上げてくれた。一生の宝物だ。

連載はまだまだ続く!

次回は自転車の装備と持ち物チェック編

太平洋岸自転車道実走調査⑯ 1400kmを走り切るための装備と携行品
 2022年秋にナショナルサイクルルートである太平洋岸自転車道を全ルートを実走調査した経験をもとに、その全容を紹介していくシリーズ。前回ついに実走レポートは和歌山市加太港にゴールしたわけだが、今回から装備や...

執筆:岩田淳雄

愛知県出身、千葉県在住。
自転車雑誌「サイクルスポーツ 」「バイシクルクラブ」の編集長を歴任。現在は「ペダルプッシャー」を主宰し、サイクリングの啓発活動を展開しています。
https://pedalpusher.jp/

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太平洋岸自転車道実走調査⑱ ルートミスを防ぐ技術

太平洋岸自転車道実走調査⑱ ルートミスを防ぐ技術


2022年秋にナショナルサイクルルートである太平洋岸自転車道を全ルートを実走調査した経験をもとに、その全容を紹介していくシリーズ。今回は1,400kmをルートミスせずに走り切るためのテクニックを紹介する。ルートからそれて道に迷ってしまうことがないよう、矢羽根や路面標示の役割を知り、MAPの使い方などをマスターしておこう。

ルート表示の三種の神器

太平洋岸自転車道のルート案内で頼りになるのが、矢羽根、路面表示、案内看板だ。この3つを確認しながら走ることになるのだが、まずはそれぞれの役割を確認していこう。この3つのサインの呼び方は、太平洋岸自転車道サイクリングマップ(以下サイクリングマップ)でも使われているもので、当連載でもそれを踏襲している。


路面のシンボルマークは案内看板といっしょに設置されることが多い

矢羽根

サイクリングマップでの正しい呼称は矢羽根型路面標示だが、当連載では矢羽根と略して呼称してきた。長さ150cm、幅75cmとサイズが定められた矢印型の路面表示で、自転車の通行位置を示すものとされている。
太平洋岸自転車道統一ルールにより、単路部(分岐などのない場所)での設置はおよそ100mに1カ所と定められている。また分岐部(交差点などで曲がる場所)手前200mからは50m間隔、50m手前からは路面標示を混ぜながら10m間隔で設置、また急カーブにおいても密に設置することになっている。しかし実際にはほかの表示同様ここまでの整備がされている場所はまだ少ない。


サイズや色、設置する間隔などが定められている

路面標示

太平洋岸自転車道の統一ロゴと方向指示の矢印を組み合わせた長さ120cm、幅40cmの路面ペイント。同じ路面標示の一種である矢羽根と区別して誘導サインと呼ばれることもある。分岐部の200mと40m手前に距離入りのサインが、分岐部直前には距離表示のないサインが設置されることになっている。


40m先で右折の分岐があることを示している

案内看板

路肩や歩道上に立っている縦45cm、横15cmの標識。次の分岐までの距離を表すものと、次のサイクルステーションまでの距離を表示するものの2種類がある。

分岐を表す看板は、分岐部では200m手前と分岐直前、直後に現れ、誘導サインとともにルートの方向を指示する。

またサイクルステーションなど主要施設までの距離を表すものは、5kmに1カ所設置され、次の施設の名称とそこまでの距離が日本語と英語で表示されている。また施設に差し掛かったところにも設置され、これにはその施設の名前だけが表示される。

ちなみにこの案内看板に出てくる、施設名の前に記されたアルファベットと数字の組み合わせは、主要地点番号と呼ばれ、県名の頭文字(千葉ならC、神奈川ならK)と、その県内で千葉側から順に設定された番号(最初の施設が01、次が02)からなっていて、サイクリングマップの表記とリンクしている。


分岐を表す案内看板。千葉県の案内看板はチーバくんの図案入り


サイクルステーションなど次の施設までの距離を示す案内看板

そのほかルート上に見られる表示

そのほか目にする表示は太平洋岸自転車道の統一ロゴと、ナショナルサイクルルート・ロゴマークがある。


路面標示と組み合わされたナショナルサイクルルート・ロゴ

太平洋岸自転車道統一ロゴ

太平洋の波を青海波(せいがいは)としてデザイン。太平洋岸自転車道が6県にまたがることから波の数も6つだ。自転車のシルエットとともに、太平洋岸を走るサイクリングロードのイメージがわかりやすく表現されている。一般公募により横浜美術大学の学生によるデザインが選ばれた。
路面標示される場合は5kmに1カ所の割合で設置するとされている。


路面に表示する場合の直径は60cmと定められている

ナショナルサイクルルート・ロゴ

こちらは現在国内で6ルートが指定されているナショナルサイクルルートのシンボルマーク。自転車と日の丸、漢字の「和」を組み合わせてデザインされていて、「和」は「輪」ともかけられている。このロゴは路面標示として太平洋岸自転車道統一ロゴといっしょに設置されていることがほとんどだ。


こちらは1辺が60cmの正方形

矢羽根を頼りに走ってはいけない

まだ整備が完全に終わっていない太平洋岸自転車道では、矢羽根や路面表示が設置されていない部分もある。だから路面のサインや案内看板だけを頼りに走っていると、思わぬ落とし穴がある。ここでは、走っていて出合った要注意項目を紹介する。

分岐の手前に路面標示がない

矢羽根を頼りに走っていて、T字路などの分岐に差し掛かり、どっちに進んでいいのか迷ってしまうことがある。これは分岐の手前にあるべき路面標示が未整備である場合に起こりがち。案内看板があってもそれを見落としたような場合にも起こりうる。そんな場合は交差点(分岐)の中に入って左右を見渡すと、その先の矢羽根を発見できるはず。


神奈川県の例。分岐(交差点)直前に路面表示などの方向指示がない

矢羽根と路面標示の方向が違う

実際に走っていて何箇所かあったのが、たとえば矢羽根は左へ、路面標示は右へ、というようなパターン。これは、その分岐にある矢羽根が、太平洋岸自転車道を走る人に向けて設置されたものではないことに起因している。

太平洋岸自転車道の水先案内である矢羽根は、全国的に統一された自転車の走行空間を示す矢羽根型路面標示と同じ色とサイズ。そのためとくに都市部において混乱が生じているのだ。つまり都市交通整備として自転車の走行空間を示すために設置された矢羽根と、太平洋岸自転車道の矢羽根が混在していて、太平洋岸自転車道の利用者にはわかりにくい場合がある。

そのため都市交通整備として設置された矢羽根の方向を頼りに走ると、ルートミスする場合がある。走るときは矢羽根ではなく路面標示や案内看板に注意しながら走るのが鉄則だ。


静岡県の例。矢羽根は右へ、路面標示は左へ

矢羽根が消えた

それまで続いていた矢羽根が消えてしまった場合。まずは路面標示や案内看板の見落としによるルートミスを疑うべきだが、そうではない場合もある。

大規模自転車道などの自転車歩行者専用道(いわゆるサイクリングロード)では、路面標示などの設置が後回しになっている。これは、すでに整備され供用されている自転車歩行者専用道は道に迷う可能性も少ないことから、ほかの一般道部分を重点的に整備しているために起こっている現象。また自転車歩行者専用道では自転車の走行空間を示す必要がないことから、基本的に矢羽根は設置されていない(一部例外あり)。なので自転車歩行者専用道を走りながらなんとなく不安になる、ということが起こりがちなのだ。

車道の舗装をやり変えた後、まだ路側帯や横断歩道などの表示がされていない、というケースもある。この場合当然矢羽根や路面標示も上書きされておらず、「矢羽根が消えた」となる。


静岡県。自転車歩行者専用道に入ると矢羽根がなくなり、不安になることも


千葉県には自転車歩行者専用道に矢羽根がある場所も。かなりレアだ

交差点内に路面標示がある

ふつうは交差点(分岐)の手前に路面標示があり、右左折を指示されるのだが、交差点の中に右折表示があって慌てることがあった。2段階右折を指示したものと思われるが、わかりにくい。


静岡県内。右へのT字路交差点。直進の表示がある

ところがその交差点を抜ける手前に右折の指示が

オフィシャルの地図を活用しよう

矢羽根や路面標示だけを頼りに走るのはルートミスを誘う。なのでしっかりルートを地図で確認して走ることが必要になってくる。太平洋岸自転車道ナショナルサイクルルート指定推進協議会が提供している太平洋岸自転車道の地図には大きく分けて3種類がある。それぞれをうまく使い分けて快適にルートをたどろう。

①グーグルのマイマップで作られたMAP

太平洋岸自転車道ナショナルサイクルルート指定推進協議会による太平洋岸自転車道HP(https://www.kkr.mlit.go.jp/road/pcr/index.html)から、サイクリングマップがダウンロードできる。

①上に並んだタブから「アクセス・ルートマップ」を選んでクリック

出典:「太平洋岸自転車道」(国土交通省 近畿地方整備局)

 

②「Google Map」の表示の下に並んだ県名から、必要なエリアのタブを選ぶ(全体での表示も可能)

ゲートウェイやサイクルステーション、サイクリストにやさしい宿などのアイコンが表示されたMAPは、見たい場所を拡大できるので便利。ただしこのMAPは全体と各県で、同じように見えてもルートが一部異なっているので注意が必要だ。各県のもののほうが修正が新しいようだ。

またこのMAPと実際の路面標示が異なる場合もあり、これまでの連載で指摘してあるので参照してほしい。

この地図のことを当連載ではMAPと呼称している。


全体版には全ルートの情報が表示される


各県版にはその県の情報しか表示されない


通常のグーグルマップように拡大できるのでコース詳細を確認するのに便利だ

②ルートパンフレット(データ版)

この連載ではサイクリングマップと呼んでいるのがこれ。先ほどの太平洋岸自転車道HPの「アクセス・ルートマップ」ページを下にスクロールすると「ルートパンフレット」という項目があり、そこから各県別のサイクリングマップがダウンロードできる。

大きくエリア分けした「千葉県・神奈川県版」「静岡県・愛知県版」「三重県・和歌山県版」と、各県詳細版がある。各県詳細版は県によって複数エリアに分かれていて、全部で15のサイクリングマップを用意。

すべて表面は太平洋岸自転車道全体のインフォメーションとサイクリングマップのエリア区分を表示。裏面はそのエリアの詳細情報が記されている。事前にスケジュールを立てるときはもちろん、これをスマホにダウンロードしておけば、休憩中にこれからのルートなどを確認するときに、さっと見られるので便利だ。


必要なエリアのボタンをクリックするとこのような画面に。右上のダンロードボタンで保存する


表面はすべて共通でエリア区分などを表示


裏面はそのエリアの詳細情報を盛り込む

ただしこのサイクリングマップの制作は2020年12月。情報が古くなっている場合もあるので注意が必要だ。細かいルートの確認は①のMAPでして、周辺の情報などをこのルートパンフレットで入手するという使い分けがいいだろう。

③ルートパンフレット(紙版)

②のルートパンフレットの紙版もある。内容はまったく同じで、雨にも強い紙で作られている。サイズはA2で両面印刷。一部エリアを走る場合は、これをバックポケットに入れておけば、さっと取り出せて便利。

この紙版はゲートウェイやサイクルステーションで無料配布されているが、置かれているのはそのエリアのものだけで、全部を一度に入手するのは難しい。各地のサイクリング関連イベントに国土交通省(ナショナルサイクルルート)のブースが出展されていれば、そこでまとめて入手することができる可能性があるので要チェックだ。


雨や汗に強い素材でできているので、バックポケットにそのまま入れておける

MAPに自分の位置を表示させる方法

HPのMAPは拡大して詳細が確認できるのでいいのだが、自分の位置が表示されない。このMAPのなかで自分の位置を表示できたらすごく便利。うれしいことに、この国土交通省の太平洋岸自転車道HPからはルートのKMLデータがダウンロードできる。そこでこのルートデータを自分で作ったグーグルマイマップにインストールして、自分の位置を表示させることができる。

HPからKLMデータをダウンロードする

先ほどの太平洋岸自転車道HPの「アクセス・ルートマップ」に入り、下にスクロールすると「ルートデータ(KLMファイル)ダウンロード」が出てくる。各県別に分かれているので、必要な県のボタンをクリック。

ダイアログが出てくるので「保存」をクリックするとデスクトップ上にKMLデータが保存される。次に自分のグーグルアカウントにログインしてからグーグルマップを開く。マイマップは各アカウント別に保存されるので、複数のアカウントを持っている人は、保存したいアカウントでログインする。

以降はマイマップを開いて、画面左上から「保存済み→マイマップ」と進み、いちばん下にある「地図を作成」をクリック。左上の「インポート」をクリック。そこにダイアログが出てくるので、そこにデスクトップに保存されたKMLファイルをドラッグアンドドロップする。これでファイルが保存できる。

詳細は「グーグルマイマップ KMLデータ インポート」などで検索して方法を調べてほしい。

自分の位置を確認する

このMAPを位置情報をONにしてあるスマホに表示させると、自分の位置をルートとともに確認できる。同じアカウントでログインすることを忘れずに。違うアカウントでログインすると、先ほど作ったマイマップが表示されない。スマホのグーグルマップ画面から下にある「保存済み」をタップ。下の方にある「マイマップ」から先ほどのMAP名をタップ。これで制作したマイマップ上に自分の位置が表示されるようになった。


※ただしこの方法だと自分の位置を中心に自動的に地図がスクロールしていくような使い方はできない。
休憩や信号待ち、迷いそうな場所で自分がコースから外れていないかと確認するような使い方に向いている。
自分の位置を中心にスクロールするナビゲーション的な使い方は、グーグルのマイマップではなくガーミンやストラバなど別アプリで可能だと思うので、そちらにトライしてほしい。

実際にどうやって走ったか

では実際にどのようにルートを確認しながら走るか。じつは岩田は走破の前半(浜松まで)は、マイマップにKMLデータを落としていなかった。そのためルートを見失ったときにはまずスマホのグーグルマップで自分の位置を確認し、それから画面を切り替えて太平洋岸自転車道HPのMAPを見比べながら自分がコースのどこにいるのかをチェックしていた。これだと時間がかかり正確な位置が瞬時にわからない。

そこで後半はここまでに紹介した方法で、マイマップをチェックしながら走った。これによって見る地図がひとつですみ、時間が節約できた。


後半はMAPを表示させたスマホをハンドルに装着してみたが、あまり使い勝手はよくなかった

おかしいなと思ったらすぐにMAPチェック


矢羽根が消えたら、ルートミスを疑うのは鉄則だが、矢羽根だけではなく、路面標示や案内看板をチェックしながら走る。少しでもおかしいなと感じたら、自分の位置をMAPで確かめ、コースから外れていないかチェックする。結局はこの繰り返しがルートミスを防ぐ方法だ。

事前におおまかなルートをチェックして、間違いやすい場所などを頭に入れておくことも大切。たとえば伊豆半島を回るルートなどは、基本的に海岸沿いなので間違えてもほとんど問題ない。また愛知県の渥美半島のように国道からそれて自転車歩行者専用道がある場合、そのまま国道を走ってしまっても方向さえ間違えなければ問題ない。静岡県の清水市内などはごちゃごちゃした市街地の自転車歩行者専用道をたどるより、国道を抜けたほうがはるかにスムーズだ。

要は太平洋岸自転車道を寸分違わずトレースしようとするのでないかぎり、多少ルートを間違えてもあらぬ方向に走ってしまわなければオーケーだということ。そんなふうにおおらかに考えて太平洋岸自転車道を楽しんで走ってほしい。

次回は太平洋岸自転車道なにコレ珍百景&おもしろ新名所!

太平洋岸自転車道実走調査⑲ ルート上の珍百景&おもしろ名所
2022年秋にナショナルサイクルルートである太平洋岸自転車道を全ルートを実走調査した経験をもとに、その全容を紹介していくシリーズ。お待たせしました、今回はルート上で見つけた珍しいスポットや、なんだこりゃ?なもの...

執筆:岩田淳雄

愛知県出身、千葉県在住。
自転車雑誌「サイクルスポーツ 」「バイシクルクラブ」の編集長を歴任。現在は「ペダルプッシャー」を主宰し、サイクリングの啓発活動を展開しています。
https://pedalpusher.jp/

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太平洋岸自転車道実走調査⑰ 全ルート走破家計簿 1,400km走っていくらかかったか?

太平洋岸自転車道実走調査⑰ 全ルート走破家計簿 1,400km走っていくらかかったか?

2022年秋にナショナルサイクルルートである太平洋岸自転車道を全ルートを実走調査した経験をもとに、その全容を紹介していくシリーズ。今回は岩田(筆者)が1,400kmを走破して実際いくらかかったのかを公開していく。それとともに、どんな宿でどんなふうに過ごし、どんなものを食べながら走ったのかも紹介しよう。

岩田は全行程を2回に分けて走破した。前半は10月に銚子から浜松まで。後半は11月に浜松から和歌山まで。それぞれ8日間、計16日間で走り切った。

宿泊費:全国旅行支援に助けられて約8万円

最初に断っておくと、岩田が走ったときはコロナで減少した観光客数の回復を支援するための「全国旅行支援」事業実施のまっただ中。キャンペーンに参加している宿に泊まると、宿泊費が40%(最大5.000円)割り引きされ、かつ買い物などに使えるクーポンが3,000円ぶんもらえた。この恩恵はデカく、食事とあわせてかなりの節約となった。これがあったからこの旅に出ようと思い立ったと言ってもいい。


千葉県の旅行支援クーポン。もらった日の翌日までに使わなければならない

旅行支援参加宿泊施設は対応ウェブサイトで探した

宿泊費の内訳は上記の表のとおり。前半スタート前泊の銚子、後半スタートの浜松、ゴール後の和歌山の3泊をあわせ、全部で17泊となった。それで合計81,230円。
平均すると4,778円という激安ぶり。しかも2食付きの宿も2件あった。またずいぶん高級な温泉ホテルに安く泊まれたりもした。
キャンペーン参加の宿は半分くらいだと思う。5,000円以下の宿はだいたいキャンペーン価格だ。もしキャンペーンがなければ、おそらくトータルで4〜5万円多くかかっていたことだろう。

全国旅行支援(実際には各県でキャンペーン名が違う)に参加している宿とそうでないところがあるので、それを調べて予約するにはじゃらんや楽天トラベルといった、旅行支援に対応する旅行ウェブサイトで探すのが手っ取り早い。
同じ予約サイトでも全国旅行支援に対応していないサイトもあるので注意。
岩田は基本的に楽天トラベルで予約していった。検索条件の支援対応欄にチェックを入れて探すと、いくつも宿が出てくる。基本的にはビジネスホテルが好き(コインランドリーがあって、コンビニも近い。大浴場があればなおよし)なので、安いビジホ優先で探した。


銚子のホテルサンライズ銚子。ふだんなら素泊まり6,000円以上する宿に3,300円で泊まれた

予約が取りにくい週末の宿は事前に確保

予約は基本的に前日にとればいいかと思っていた。
だが2回に分けて走破したとはいえ、8日間も走れば必ず週末がからみ、予約がとりにくくなる。しかも旅行支援キャンペーン中で出かける人も多い時期だった。そのため金曜と土曜の宿に関しては目処がついた時点で探して予約しておいた。
また安い宿が少ない場所も先手を打った。宿がなくて走行距離が長くなったり短くなったりするのを避けたかったからだ。最悪キャンセルすればいいという覚悟。実際週末に関しては5日くらい前に予約しようとしても、希望する安宿がない場合もあった。


鳥羽の扇芳閣。土曜日の安宿はすべていっぱいで、こんな豪華な温泉ホテルに泊まることに。でも全国旅行支援で素泊まり6,800円

食費:昼食以外は基本的にコンビニで

岩田はじつは食にこだわりがないので、コンビニ飯でかまわないタイプ。
朝は前日に買っておいたパンとヨーグルト、野菜ジュースをコーヒードリンクで流し込む。
昼は頃合いのいい時間に食堂があれば入るし、なければコンビニでやはりパンやおにぎり。
夕食は宿の近くに手頃な定食屋などがあればいいが、なかなか高いこともあって、これまたコンビニで買った惣菜をつまみにノンアルコールビール、というパターンが多かった。

コンビニは全行程で40回以上利用した

走行中のコンビニ休憩でエネルギー補給

スタートまでの移動日、ゴールからの帰宅日などの食費まで入れて、全体としては表のような支出。
見ればわかるとおり、コンビニの利用が異様に多い。毎日3〜4回コンビニを利用している。これは走行中の立ち寄りもあるが、夜の買い出し(夕食と翌日朝食分)も含めてのものだ。
またコンビニがない場所では飲み物の自販機も使った。ざっくりの計算だが全体で66,000円、1日平均で3,700円ほどかかっている。しかもこれは後述する全国旅行支援のクーポンを使っての金額。このクーポンがなければ全体であと20,000円くらい多くかかったのではないか。

ずいぶん食べた。食べずにエネルギー切れになるのが怖かったからだ(言い訳)。どうりで1,400km走ってもやせなかったはずだ。

コンビニのパンやおにぎりを食べながら走っていた

タイミングが合えば昼食は土地の名物を

食事にこだわらないタイプなので、ファミレスでもなんでもかまわないわけだが、できれば土地の名物を食べてみたい。
写真的にもそういうシーンがほしい(編集者目線)。だが太平洋岸自転車道は文字通り太平洋岸沿い。基本的には魚介類が多くなったが、カレーや焼肉定食、中華定食やラーメンなども食べた。

茅ヶ崎で食べたブリの漬け丼1,540円


東伊豆町のねぎトロ丼1,400円


戸田の丸吉食堂で食べた金目鯛の煮付け定食。勢いで注文してしまった2,860円!


由比の名物桜エビを使った桜えびしらすかきあげ定食1,200円


大王崎で食べた海鮮の定食2,500円


橋杭岩の「おざきのひもの」で食べた干物定食1,580円


わかやままるしぇ土屋食堂の和歌山ブラック800円

旅行支援のクーポンを可能な限り使った

全国旅行支援に参加している宿に泊まると、クーポンをもらえた。ほとんどは3000円分なのだが、これが泊まった翌日までに使わなければいけない、というパターンが多くて困った。
数日使えるものもあったが、県単位の事業のため、もらった県で使わなければならない。翌日には次の県に入ってしまう、という場合には期間が長くても当日か翌日に使わなければならない。

コンビニで使えるといいのだが、使えないコンビニも多かった。そのため夕食で使える店をパソコンで探すのだが、なかなかなかったり。
三重県の志摩市では、前日と当日にもらったあわせて6000円分のクーポンを握り締め、食べ物屋を探して駅付近を1時間も歩きまわり(どこも閉店時間が早い)、最後にたどりついた焼肉屋で6,000円ぶん特上カルビなどを食べまくった。
何度も言うが食べ物にこだわりがないので、疲れただけだった。


千葉で余ってしまったクーポン。誰かにあげればよかったのかな


志摩市で焼き肉を食いまくった

交通費:スタート&ゴールの移動費とフェリー代がメイン

自転車で走るのだから交通費なんてかからないと思うかもしれないが、家からスタート地点までとゴールから家までの交通費はかかる。それに加えて2カ所のフェリーは人と自転車の運賃が必要だ。

11月の浜松駅。後半戦のためにまたやってきた

移動は新幹線+JRを使って

全ルートを2回に分けて走破した。
前半はスタートの銚子から浜松まで。これには銚子までと浜松からの交通費がかかる。また後半は浜松までとゴールの和歌山からの移動費。
岩田は千葉在住なのだが、新幹線を使った移動で表のような計算になった。
フェリーを除き33,964円。このあたりは住んでいる地域によって変わるものだ。


新幹線の特大荷物スペースつき座席は券売機でも買える

フェリーは2回利用

太平洋岸自転車道には東京湾を横断する東京湾フェリー、静岡県の土肥から清水までを結ぶ駿河湾フェリー、伊勢湾をわたる伊勢湾フェリーの3航路が公式ルートとして指定されている。
今回使ったのは東京湾フェリーと伊勢湾フェリー。それぞれ人と自転車あわせて1,500円と3,100円だった。混雑期でなければ乗れないことはないだろうと、予約はせずに時刻表を頭に入れてそれに間に合うように走った。


東京湾フェリーのほうが安い

そのほか:コインランドリーは毎日利用

宿泊費、食費、交通費以外にかかる費用。ほとんどはコインランドリー関連だ。
コインランドリーは洗濯が300〜400円、乾燥が15分100円といったパターンが多い。なかには宿の洗濯機を無料で使わせてくれるところや、利用代金100円を入れる、なんてものも。
洗濯は毎日した。ジャージ類の換えを用意せずに荷物を減らして走ったからだ。

この乾燥機は10分100円。機械によって10分で乾くものと、30分くらい回さないと乾かないものがある

そのほか入場料など

そのほか今回は大王埼灯台に寄って入場料を払ったのと、後半寒くて宿での外出用にホームセンターで薄手のスウェットパンツを買ったのも計上した。
それで7,398円。高いのか安いのかわからない。


大王埼灯台の入場料300円。安い

合計:全ルート走破の総費用は約20万円

すべての費用を合計すると、ざっと20万円かかっている。
これに前述した全国旅行支援の宿代、クーポンでまかなった食費を入れると、おそらく25〜26万円かかっていたと思う。ざっくり結論としては東京発で全ルートを2回に分けて走ると25万円!というところ。
いやあ、太平洋岸自転車道、しっかりお金落とさせるなあ。経済効果ありありだ。

宿での過ごし方は?

一日の走行を終えて宿にチェックイン。一息つきたいところだが、明日の走行に備えてやらなければならないことはいろいろある。
最初は段取りが悪くてムダな時間を使うこともあったが、しだいに慣れてシステマチックに順序よく準備ができるようになった。
そのあたりのことを紹介しておこう。


宿に着いてもやることはたくさんある

入浴、洗濯、充電、食事などを効率よくこなす

宿に着いてまずやらなければならないのが充電だ。とにかくライトやサイコンを充電器でコンセントに差す。
そして次は買い出し。夕食と翌日の朝食をコンビニで調達する。
洗濯をする前にジャージ姿のままで買い物をすませる。ホテルに帰ったら次は洗濯。ホテルのコインランドリーは台数が少ない場合があるので、とにかくほかの人より先に放り込むこと。その日に着たウエア全部と、昨日の夜に着たTシャツやパンツも全部ブチ込む。
ホテル内ではホテルの浴衣などですごす。パンツははかない。つまり使った衣類を全部洗濯するのだ。ホテル外のコインランドリーを使う場合は浴衣の下にペラペラのショートパンツを履く。


くれたけイン焼津駅前(写真上)と白浜の素泊まり土佐屋。自転車を部屋まで持ち込める宿は少なく、ロビーや玄関先に入れて施錠というパターンが多かった。建物の裏に停めてくれなんてことも

コインランドリーの洗濯はだいたい40分くらいかかる。そのスキに風呂だ。
風呂から出たらそろそろ洗濯が終わっているので、今度は洗濯物を乾燥機にブチ込む。ここで洗濯機や乾燥機が空いてない場合は時間がずれ込むことになる。先手必勝だ。

風呂から出たら乾燥機が回っているあいだに食事だ。
部屋の冷蔵庫で冷やしてあった風呂上がりのノンアルビールで乾杯!
食べている間に乾燥が終わるので、それを取りに行く。洗濯と乾燥の時間はスマホのタイマーでピックアップを忘れないように管理する。


すさみの海のお宿は「洗濯機は自由に使ってください。洗剤も置いてあるのを使っていいですよ」のパターンだった。ありがたい


土肥の椿荘。乾燥機がなかったがハンガーを貸してくれ、一晩軒下に干したら乾いた

そして食事が終わったらパソコンでメールをチェックしたり、少し仕事の連絡をしたり。
撮影した写真をバックアップするためにパソコンに移す作業もある。フェイスブックで発信しながら走っていたので、そこに掲載するGPSの走行軌跡データもサイコンで表示させてスクショを保存。
さらにその日の写真を選んでコメントを付けてアップする。それが終わったら明日以降の宿を予約したり、ルートをMAPでチェックして昼食の場所のアタリをつけておく。
あとルートの標高差をチェックして覚悟を決める(笑)。


クインテッサホテル伊勢志摩。ホテルでもやることが多くてなかなか寝られない

そんなことをしているうちに23時をまわるので、充電していたライト類を引っこ抜いて代わりにスマホとパソコンを充電状態にして朝までおいておく。
それでやっと一日が終わる。ああ、慌ただしい。

次回は太平洋岸自転車道でルートミスを防ぐ技術

太平洋岸自転車道実走調査⑱ ルートミスを防ぐ技術
2022年秋にナショナルサイクルルートである太平洋岸自転車道を全ルートを実走調査した経験をもとに、その全容を紹介していくシリーズ。今回は1,400kmをルートミスせずに走り切るためのテクニックを紹介する。ルートからそれ...

執筆:岩田淳雄

愛知県出身、千葉県在住。
自転車雑誌「サイクルスポーツ 」「バイシクルクラブ」の編集長を歴任。現在は「ペダルプッシャー」を主宰し、サイクリングの啓発活動を展開しています。
https://pedalpusher.jp/

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太平洋岸自転車道実走調査⑳ 国土交通省担当者に直撃インタビュー!

太平洋岸自転車道実走調査⑳ 国土交通省担当者に直撃インタビュー!


金籠事務局次長(右)と筆者

2022年秋にナショナルサイクルルートである太平洋岸自転車道を全ルートを実走調査した経験をもとに、その全容を紹介していくシリーズ。今回はついに最終回!
太平洋岸自転車道そしてナショナルサイクルルートの総元締めである自転車活用推進本部の金籠事務局次長に、この太平洋岸自転車道の成り立ちなどについて聞き、これまでの取材のなかで感じた疑問をぶつけてみた。

初めての国土交通省訪問

東京・霞が関にある国土交通省に初めて足を踏み入れた。ずっと自転車メディアの仕事をしてきたが、案外こういうおカタいところに来る機会はないものだ。目指すは霞が関合同庁舎3号館にある道路局。どんなところだろうと思っていたが、意外にフツーのオフィスビル。厳重な警備をくぐり抜けて、いやちゃんと手続きして館内へ。中はやはりお役所っぽい感じ。この道路局に事務局を置くのが自転車活用推進本部だ。

案内された会議室で待っていると、にこやかに現れたのが金籠史彦さん。ナショナルサイクルルートを牛耳る、いや統括する自転車活用推進本部の事務局次長であり、道路局の参事官という肩書きも持つ。金籠さんとは業界のイベントやサイクルモードの取材などで何度かお目にかかっていて、「太平洋岸自転車道のことでインタビューさせてもらえませんか?」と聞いたら、「いいですよ! メールでスケジュール調整しましょう!」と二つ返事で引き受けてくれた。気さくでいい人だー。

ではさっそくインタビュー開始!


金籠史彦(かねこ ふみひこ)さん。自転車活用推進本部事務局次長、国土交通省道路局参事官。1976年東京都生まれ。東京大学経済学部卒業。大学時代にアメリカ大陸横断をするなど根っからのサイクリストである一方、熱心な鉄道マニアとしても知られる。愛車はアンカーのロードバイク、RS9

自転車には人を動かすチカラがある

岩田:太平洋岸自転車道は昭和の時代に大規模自転車道のひとつとして計画されて、一部区間で供用されながらも全線がつながることはなく最近まで来ました。そして平成の最後になってナショナルサイクルルートの指定を受けるべく再整備を進め、現在に至っています。そもそもいつ誰がこの太平洋岸自転車道ってものを考えたんでしょう?

金籠:太平洋岸自転車道は歴史が長くて、昭和40年代からその動きが具体化してきたものです。その発端まではわかりませんが、マイルストーン的なところでいうと、昭和44年に財団法人自転車道路協会が当時の建設大臣に「太平洋岸自転車道建設に関する陳情書」という要望書を提出した。
当時はモータリゼーションが右肩上がりで進んでいる世の中でしたが、それでも欧米の事例を参考に、青少年の健全な育成のために、サイクルツーリズムを通じて学びながら楽しみ、地域とつながっていかなければならない、ということを考えていた方々がいたんです。そういう方々が熱い思いを陳情書にのせて訴えた。
今は自転車活用推進法もできて、サイクルツーリズムの普及なんてことが少なくとも異端扱いはされない世の中ですが、当時はすごく斬新な考え方だったと思います。

岩田:そのころって第1次自転車ブーム、バイコロジーブームって言われてたころですね。

金籠:まさしくそのころだと思うんです。メディアや市民活動でも盛り上がったサイクリングブームのなかで、やはりインフラもしっかりしなければということで、それが発露したのがこの陳情書です。

そしてそれが実を結んだのが、その翌年、昭和45年にできた「自転車道の整備等に関する法律」。これが大規模自転車道を事業として進めていく根拠となった法律なんです。これを推し進めたのが自転車道路促進議員連盟という、いまでいう自転車活用推進議員連盟と同様の、やはり超党派の国会議員で構成された組織。当時の建設大臣だった遠藤三郎先生が会長でした。

記録によると法案は全会一致で決まったそうですよ。政局ではなくて国民の健康や文化、青少年の健全な育成といった崇高なテーマに、議員立法として党派をまたいで取り組んでいった。これは今と同じ状況です。50年の時を超えて、自転車を通じてまだまだやらなきゃいけないねという同じ思いがあるというのは、すごいなと感じますね。自転車には多くの人を動かすチカラがある。

ちなみにこの遠藤三郎先生の秘書だったのが現在自転車活用推進議員連盟会長の二階俊博先生。つまりこの「自転車道の整備等に関する法律」の策定のために奔走されたのが二階先生だったんです。ですから今の太平洋岸自転車道に関してもすごく応援していただいていますし、ここには先生の魂が入っているんですよね。

岩田:おおー。なぜ二階先生は自転車にそんなに熱心なんだろうと思っていましたが、そういう経緯なんですね。

金籠:太平洋岸自転車道は二階先生のライフワークとも言えます。そして昭和45年に日本中にサイクリングロードを作っていくぞという、そういう法律ができて、そこに理念と枠組みを作って予算をつけていった。その結果、昭和48年に大規模自転車道整備補助事業として結実した。そしてペダルがしっかりと回りだした。ここから太平洋岸自転車道の具体的な整備が始まったんです。


インタビューは国土交通省内の会議室で行われた

サイクリングロードではなくサイクルルート

岩田:大規模自転車道って昭和の時代に作られて、そのまま打ち捨てられてたイメージがありました。草が生え放題だったり、砂が溜まっていたり。そのあたりのケアができずに、なかなか使いづらい道だった。それが今になってナショナルサイクルルート目指して再整備されて、すごく活性化しました。

金籠:当時大規模自転車道としてやろうとしていたのは、いわゆるサイクリングロード。今もありますよね、海岸沿いなんかにある自転車歩行者専用道。でも独立した道路を建設して維持管理し、それを全線でやっていくのはかなりの体力が必要だし財政負担力も必要。ということで岩田さんが言われるような現実になっていた。

岩田:サイクリングロードってそういうもんだと思ってました。

金籠:新しいナショナルサイクルルートの考え方ってのは、大規模自転車道整備事業のものとは違うんです。新しいサイクリングロードをこれから作るってことではなくて、シェア・ザ・ロードの考え方で歩行者もクルマも共存しながら、たとえば矢羽根(矢羽根型路面表示)、たとえば自転車専用通行帯といったインフラを使って、ソフトもハードも最大限整備していくというもの。
そういう考え方の中でブランディングと合わせてやっていくという、つまりサイクリングロードではなくサイクルルートという考え方。

岩田:なるほど、新しく道を作るってことじゃないんですね。


太平洋岸自転車道はサイクリングロードではなくサイクリングルートなのだと再認識させられた

時空を超えてロマンの轍をつなぐ

金籠:今は新しいサイクリングロードをたくさん作るために多額の公共投資をするのは難しい時代になってきています。それはクルマも同じで、当時は道路はどんどん作る時代だった。自転車に関しても専用道路を作るという考え方があったと思うんです。でも今は新しいものをゼロから作るのが難しいなかで、現在ある資産を生かしてソフトで整備していく、そしてPRしていくというように、考え方が50年を経て変わってきた。

そこで一時期メンテナンスやPRが必ずしも十分ではなかった太平洋岸自転車道というものに、ナショナルサイクルルートというブランドの魂を入れることによって、今までメンテナンスなどが追いついていなかったところをもう一度し直す。あとは国道も県道も市道もうまく使って、クルマとうまく共存できるように矢羽根を敷いたり注意喚起の看板を設置したり。そういう形で共存共有していく。でも轍は、ルートはつなごうと。かつてのロマンをトレースするような形で。

岩田:ロマンの轍ですか!

金籠:太平洋岸自転車道は壮大なロマンなんです。政治家も行政もサイクリストも、みんなのロマンなんです。構想は50年前からあって、ここにある「太平洋岸自転車道の魅力」という古い資料に書かれている言葉を読むと、表現は昭和チックなんですけど、そこに書かれていることって今私達が思い描いていることとまったく同じなんです。びっくりするくらい。

今私たちがパワーポイントで作っているような資料の内容を、この古い明朝体の活字で50年前に表現している。そしてそのロマンの道はずっと続いているんです。

岩田:時空を超えてつながっているんですね!

金籠:そう。でも一方で”旧”太平洋岸自転車道と”新”太平洋岸自転車道は、ルートこそ同じだけど考え方は変わってきている。その歴史がおもしろいんですよ。そのストーリー性の部分を感じてほしいですね。政治と行政と市民活動。それらが太平洋岸自転車道というひとつの長いルートのなかに、脈々と流れている。50年前にまさに日本をリードしていた方々が、今と同じ精神性で熱い思いをもっていた。それが形を変えながら1400kmというルートに結実したというのは、感動的だなと思います。そういうストーリーを走りながら感じてもらうのも、おもしろいんじゃないかと思います。こういうインフラ整備にはいろいろな人の汗と涙と、そして思いがその裏にあるんだってことを、少しでも知っていただけるとうれしいですね。


「太平洋岸自転車道の魅力」(財団法人日本自転車道路協会編)。1972年3月発行。A5判160ページ。関係者界隈では「古文書」と呼ばれている書籍。歴史小説「徳川家康」などで有名な作家の山岡荘八が2代目の自転車道路協会会長として巻頭言を記し、遠藤三郎も祝辞を寄せている。ただ遠藤はこの本の発刊も太平洋岸自転車道の着工も見ることなく1971年12月に没している

全日本一周自転車道構想

岩田:太平洋岸自転車道の起点は千葉県の銚子市、終点は和歌山市です。これはどうやって決まったんでしょうか。太平洋岸っていうことなら、北は仙台とか青森とか。なんなら北海道でもいいはずです。南も海を渡って四国を通って鹿児島まで行ってもいい。なぜ現在のルートになったんでしょう?

金籠:もともと昭和44年に提出された陳情書に書かれていた構想が、千葉県の銚子から和歌山の加太だったんです。そこから始まっています。

岩田:ナショナルサイクルルート指定に向けて終点を加太港にしたのは、地元で検討していくつか候補があって、そのなかから選んだというのはわかっているんですが。

金籠:こういうのは行政で一方的に決めるわけではなく、関係者でいろんな調整をしながら決めていくものです。もちろん利用者にとってわかりやすい場所にしたほうがいいですよね。銚子は千葉県のなかでも地理的にわかりやすいし、加太もゴール地点らしい要素や雰囲気を持っている。ルートをどうやって決めていくのかというのは、行政もそうですけど地域のユーザーの方などの思いや意見を聞きながら決めていくんです。当時の陳情書もそういうことでこのルートになったんではないかと思います。


「太平洋岸自転車道の魅力」にはルートの概略計画図が掲載されている。これによると伊豆や三重県はこのときからダブルルートで設定してある。また静岡県焼津市の手前はすでに大きく迂回したルート、和歌山県白浜は半島を回らないルートが設定されているほか、三重県の尾鷲から熊野は海岸沿いの国道311号が計画されていたことなどがわかり興味深い

岩田:「全日本一周自転車道構想」という言葉が、この「太平洋岸自転車道の魅力」に出てくるんです。そんな伸延計画やネットワーク化は予定されているんですか?

金籠:今のところ具体的な計画にはなっていませんが、大規模自転車道のときもそうだしナショナルサイクルルートもそうなんですけど、制度を作ったときに全国的なネットワークをきっちり作っていきたいねという思いはある。だから現状で打ち止めというわけではありません。ナショナルサイクルルート全体として、全国のネットワークを形成していくということは、方向性としては持っています。

岩田:全日本一周自転車道構想、すごく壮大なロマンだなと思っているんですが。

金籠:サイクリングルートはネットワークになってさらなる魅力を発揮するという部分があります。そういった意味ではこのロマンは今も脈々と生きているんです。各ルートの協議会のみなさんがハードとソフトとあとは連携をしっかりやって、どんどん広がっていくものだと思います。


50年前の壮大な夢が、今も時空を超えて続いている


太平洋岸自転車道はロマンの道だと力説する金籠さん。ますます太平洋岸自転車道に興味がわいてきました

矢羽根はルート案内ではない!?

岩田:昨年全線を走ったときに、エリアによって矢羽根が小さかったり、色が変わっていたり、連続したミニ矢羽根があったりしました。こういう「珍種」の矢羽根が存在している理由を知りたいんですが。

金籠:道路の構造や道路標示っていうのはもともと法令で決まっているんです。でも法令で決められた道路標示などをよりわかりやすくするために法定外の路面表示というものもあって、それらは法令でガチガチに決めているんじゃなくて、道路を作るうえでのガイドラインがあるんです。自転車道などの自転車の通行空間に関しては「安全で快適な自転車利用環境創出ガイドライン」ってのがあって、そのガイドラインのなかに矢羽根(矢羽根型路面表示)やピクトグラムなどの基本的な考え方を示しているんです。色とか形とか大きさとか。ただそれは、道路や交通の状況、地域の実情に応じて表示内容などに工夫を加えることで、より一層の効果が期待できる場合には、それらの取組を妨げるものではなく、さまざまな応用もあり得るんです。

道路の基準については今でも標準的な考え方は国で決めているんですが、基本的には各地域の実情に応じて、県や市町の道路管理者のルールにおいて決められるようになっているんです。それと同様、太平洋岸自転車道も各地域の多様性をある程度ふまえた形になっている。矢羽根がすべて同じではないというのは、そういうところにも起因しているんです。


全国にはさまざまな矢羽根がある。これは太平洋岸自転車道から少しそれた静岡県湖西市の新居関所跡付近にある茶色の矢羽根。環境配慮型の色変わり矢羽根だ

岩田:太平洋岸自転車道の矢羽根って、全国で使われている一般的な矢羽根との見分けができなくて、コースミスする可能性があるんですよ。どうして同じ矢羽根にしちゃったのか、その理由が知りたいです。

金籠:もともと矢羽根型路面表示というのは、ルート案内のためのものではないんです。あくまで「ここは自転車が走るところですよ」ということをドライバーにも視覚的に注意喚起するものなんです。自転車は車道を走るものですが、それを確認的にドライバーに知らせる、もう一度認識してもらうという効果が矢羽根にはあります。だから矢羽根だけを頼りにしてずーっと沿って行けば迷わないという趣旨ではないんです。

岩田:ええっ!?

金籠:矢羽根はルート案内の機能を担わされているものではないんです。ルート案内は、たとえばここで曲がりますよとか、この先でこっちのほうへ行きますよとか、そういうのは路面の表示とか案内看板でやっています。だから矢羽根だけをたどっていけばずっとルートを行けますというシステムではないんです。

岩田:矢羽根に沿って行けばいいんじゃないのかー。

金籠:そうなんです。


矢羽根に沿って行けばいいというわけではなかった。矢羽根に罪はない

なぜダブルルートの部分があるのか?

岩田:伊豆半島のショートカットや紀伊半島の「山ルート」「海ルート」とは別に、三重県の紀伊長島のあたりや愛知県の渥美半島や伊良湖などでルートが2つになっている部分が見られます。今後こういったダブルルートは増えていくんでしょうか?

金籠:増えるかどうかはわかりませんが、ダブルルートという選択肢はあります。みんなにそこを走ってほしいから1本のルートにするのか、両方のルートが魅力的だから両方設定するのか。いずれにせよ協議会で地域性や、公共交通とのアクセス性などを考えて設定していくものです。

岩田:たとえば愛知県の渥美半島は国道を行くルートと自転車歩行者専用道を行くルートがダブルになっていて、利用者にはどう違うのかがわかりにくいです。

金籠:そのあたりは引き続きご意見をいただいてそれをできる限りシェアして、よくしていきたいと思っています。

岩田:三重県の志摩エリアもダブルルートになっていますよね。でも志摩半島は御座白浜港から浜島港の間の航路がなくなり、志摩半島は往復しなきゃいけない。このルートに関して今後変更する可能性はありますか?

金籠:指定する我々の方から、これを変えてくださいとか変えるべきだとか言うことは基本的にはありません。たとえば、航路がなくなっていることを認識したうえで、じゃあこのルートをなくすかどうかというのはまず協議会のご判断になります。ここを往復してゆっくり楽しんでいただくとか、賢島へ行く別の定期航路もありますのでそちらを使っていただくとか、そういう楽しみ方もありますからね。


志摩半島先端の御座白浜港は航路がなくなり、ルートは行き止まりになっている

岩田:静岡県の掛川市の海岸沿い部分の自転車歩行者専用道がずっと工事中で、迂回路が正規ルートとなり、そこにも矢羽根が敷かれています。この迂回ルートは工事が終わると正規ルートではなくなるのか、それともダブルルートにして併用するんですか?

金籠:そこはサブルートとして残すかどうか、いま協議会で検討中です。基本的には整備が終われば本来想定されていたルートに戻ると思うんですけど、迂回路上の矢羽根を消すかどうかというのはまた別のご判断ですね。


この工事が終われば快適なサイクリングロードが整備されるはず


掛川の迂回路。ここはサブルートとして残されるのか?

危険なトンネルの対策は?

岩田:伊豆半島はトンネルが狭く、非常に危険な箇所が見られます。とくに東伊豆エリア。このあたりの対策は考えていますか?

金籠:太平洋岸自転車道は道が険しい部分にはトンネルも多く、我々も課題として認識しています。現状はトンネルの入り口に注意喚起の看板を置いたり、トンネルの照明を明るくするなどの対策をしています。照明はLED化することで明るくなるし、省エネにもなりコストも下がる。明るくなればクルマからの被視認性も上がるし、サイクリストも路面を見やすくなる。これが安心感と実際の安全につながる。そういうことを道路管理者の責任において少しづつ進めているという状況です。


伊豆半島東海岸には幅の狭い危険なトンネルが多い

岩田:以前、広島県の尾道から島根県の松江を結ぶ「やまなみ街道」ってとこを走ったときに、こんなトンネルがありまして。トンネルの入口にボタンがあって、それを押すと「自転車通行中」っていう電光表示が一定時間ピカピカ点滅するんです。これは素晴らしいなと思って。

金籠:おおーっ! ありがとうございます。勉強になっちゃいました。これなら道路を広げるよりお金もかからないし。

岩田:使うときだけ光るのでスマートだし。ご検討いただければ(笑)。


やまなみ街道の赤名峠にあるトンネル


「通行される方は下のボタンを押してください」とあり、上の電光掲示板に注意喚起の表示が点滅する

どんどん話題作りをしていくのが大切

岩田:最後に、これは個人的な感想でけっこうなんですが、太平洋岸自転車道のルートで好きなのはどこですか?

金籠:太平洋岸自転車道でおもしろいのは、ルート上にフェリー航路があることだと感じています。
サイクリストはルートを自分の轍でつなぐのが好きな人が多いけど、じつは船などを使うのも楽しいと思っていまして。走っていてだんだんフェリー乗り場が近づいてきて、そしてきれいな海でフェリーに乗って、着いた先でまた新しい旅を始めるというリセット感というか、そういうのが好きで。


東京湾フェリーが金谷港を出る。サイクリングの途中で船に乗るという特異な体験が心を躍らせる

岩田:ああ、わかります。サイクリングの途中で船に乗るのって非日常感があっていいですよね。

金籠:そう、高揚感があるんですよ。太平洋岸自転車道のまさに太平洋を全身で感じながら、その前後の海岸線の景色とかグルメとか人との出会い、そういうものを多様な交通モードを組み合わせながら楽しめるっていうのは、自分的にはハイライトだったりしますね。またそれができるのが太平洋岸自転車道のひとつの特徴ではないかなと思います。

岩田:フェリー会社に協力してもらって、フェリーの中に太平洋岸自転車道のマークとかつけましょうよ!

金籠:そういうことを協議会でどんどんやっていただくのはいいことですし、私もそういうのはうれしいです。ルート上で交通事業者さんと協力していくというのは非常に大事。そういうアイデアをどんどん放り込んでいただいて、各ルートの協議会が反映させていくようにしたいです。

岩田:フェリーが港に着いて、クルマ用のタラップがガーッて降りてきて、そこに矢羽根があったら感激しますよ。

金籠:はははは! そうです、そういうユニークな取り組みも、それをもって話題になればいいと思うんですよね。そうするとみなさんそこで写真を撮りたがる、すると情報が拡散されて利用促進につながる。そういうことを継続的に、矢継ぎ早にやるのが大事ですね。

岩田:走ってみて気がついたんですけど、太平洋岸自転車道やナショナルサイクルルートのマークがまっすぐになっていないところが2カ所あって。

金籠:え、ホントですか?

岩田:ひとつが富士川の橋の上。これはそのマークを正立方向から見ると、バックに富士山が見えるようになっている。もうひとつは袋井で、ナショナルサイクルルートのマークと太平洋岸自転車道のマークが海バックで写真を撮れるように並んでる。こういうのも話題としていいですよね。


静岡県の富士川を渡る新富士川橋。太平洋岸自転車道のマークが横を向いている。右手に富士山。これはここで写真を撮れってことだよね


静岡県袋井市にある撮影不可避スポット。後ろの柵をなんとかしてほしい

金籠:なるほど! それこそその地域が独自に話題作りをしているわけで。そういうところを取材してもらえれば、当該の担当者もニヤッとするんじゃないですか?

岩田:ははは! あと海沿いのルートで砂が溜まってる場所があるじゃないですか。そこで文句を言う人もいますけど、俺的には、おもしろい!って思うんです、こんなに溜まってるぞー!って。

金籠:堆砂問題ですね。我々としては申し訳ありません、という思いなんですけど、そういうふうに言っていただけると、それはそれでおもしろいのかもと思いますよね。であればそれをあえて魅力としてSNSで発信していただくのも良いと思います。実際にこの太平洋岸自転車道を知ってもらい、走ってもらって、それぞれの楽しみ方をしてもらい、それを発信していってもらう。そうすれば裾野がどんどん広がっていくと思うんです。我々も頑張ってPRしていきますが、全部網羅できるわけではないので、いろいろな人に発信していただきながら、その中から改善点なども吸い上げていければと思っています。


千葉県匝瑳市の海岸沿い 写真協力:太平洋岸自転車道をタンデムでつないじゃえプロジェクト

岩田:TABIRINも全力で協力させていただきますので、いっしょに太平洋岸自転車道を盛り上げていきましょう!

金籠:よろしくお願いします!


みんな太平洋岸自転車道を走りに来てねー!!

まとめ

TABIRINとしては異例の20回にもおよぶ連載の最後に、金籠参事官にインタビューするという、これまた異例の企画。編集者的には全体の構成として違和感があるかなと思ったけど、お話をうかがってほんとうによかったと思う。
とくに、50年前の先人の熱い思い、壮大な夢が実を結んだのが今のナショナルサイクルルートそして太平洋岸自転車道なのだ、というお話は感動的ですらあった。それを教えてくれた金籠さんにはほんとうに感謝です。6県をつないだ1400kmというロマンの旅路。それを味わいながら、またいずれ太平洋岸自転車道をじっくり走ってみたいと思う。

連載はこれで終了です。これまで読んでいただいたみなさん、ありがとうございました。このアーカイブがこれから太平洋岸自転車道を走る人たちの道標になれば、これほど幸せなことはありません。

執筆:岩田淳雄

愛知県出身、千葉県在住。
自転車雑誌「サイクルスポーツ 」「バイシクルクラブ」の編集長を歴任。現在は「ペダルプッシャー」を主宰し、サイクリングの啓発活動を展開しています。
https://pedalpusher.jp/

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太平洋岸自転車道実走調査⑲ ルート上の珍百景&おもしろ名所

太平洋岸自転車道実走調査⑲ ルート上の珍百景&おもしろ名所


2022年秋にナショナルサイクルルートである太平洋岸自転車道を全ルートを実走調査した経験をもとに、その全容を紹介していくシリーズ。
お待たせしました、今回はルート上で見つけた珍しいスポットや、なんだこりゃ?なものを紹介していくおもしろ総集編、名付けて「太平洋岸自転車道珍百景」。お楽しみください。

おもしろ珍矢羽根ベスト5

太平洋岸自転車道を走るときに頼りになるのが路面標示。自転車の走行空間を表す矢羽根や、方向を示す路面標示は統一基準が定められていて、どこでも同じもの……のはずが、そうでもない。そのエリアならではの事情や経緯により、さまざまな「珍種」が存在する。
そんな変わり種たちベスト5を第5位から紹介していこう。

5位:三保半島のミニミニ矢羽根

静岡県の清水区。三保松原で有名な三保半島にある超ミニサイズの連続矢羽根。小さいにもほどがある! これはナショナルサイクルルート指定前からあったもので、今後は規定のサイズに変更していくという。同様のものは神奈川県の湘南エリアなどでもも見られる。

「三保の小矢羽根」とマニアに珍重されるミニ連続矢羽根


湘南エリアにも見られる「サザン・オール小矢羽根ーズ」

4位:サイクリングロードに矢羽根!?

矢羽根は「自転車の走行空間を示す」ものとされている。
つまりクルマと混走する場所にはあるが、すべてが自転車の走行空間である自転車歩行者専用道にはないはずのもの。
ところが千葉県匝瑳市の海岸沿いを走る自転車歩行者専用道には堂々とした矢羽根が!なんでだ!?

散歩する歩行者などに「ここは自転車が通るんだね」と思わせる効果はある

3位:伊豆半島のミニ矢羽根

伊豆半島に入ると出現する、サイズの小さい矢羽根。これは太平洋岸自転車道がナショナルサイクルルートに指定される前に敷設されたもので、路肩の狭さなど伊豆の道路事情を考慮しての措置だという。
今後も伊豆はこれでいく!ということだ。

路面標示や路側帯と比べると、その小ささがわかる。標準のものとくらべ半分程度の大きさだ。伊豆半島はすべてこの大きさ。伊豆半島を回って沼津に入ると標準タイプに変わり「矢羽根デカッ!」と思う

2位:蒲原・由比の薄紫矢羽根

太平洋岸自転車道が静岡市清水区の蒲原に差し掛かるところで現れる、ビミョーに色の違う矢羽根。
聞いてみたら「工事の時期の関係などで多少色が変わることはある」ということだが、そんな馬鹿な!?と岩田は思っている。またこのあたりには「薄い」矢羽根もある。

個人的には環境に配慮したものだろうと睨んでいる


由比にある薄型の矢羽根。いすれにせよこれらは太平洋岸自転車道用の矢羽根ではないことは判明しているのだが

1位:鬼ヶ城の鬼曲がり矢羽根

ナンバーワンはぶっちぎりでコレ!
三重県熊野市の景勝地、鬼ヶ城の前を通過する歩道橋の先、鬼ヶ城歩道トンネルの前にある、90度曲がった珍矢羽根。いや、もう矢には見えないから矢羽根でもない。これはトンネル内の歩道部分を通らせるために苦肉の策として採用されたもの。わかりやすい!

もう矢羽根とは言えない


トンネルは一方通行、その手前まで対面通行という複雑な交通規制がこの芸術を生んだ

ここってホントに太平洋岸自転車道!?

日本が世界に誇るサイクリングルートであるナショナルサイクルルート。
その指定を受けた太平洋岸自転車道だが、そのルートにはなかなか楽しい場所が登場する。

階段自転車道

ルートには階段を通るところもある。青森県の竜飛岬にはクルマが通れない「階段国道」があるが、こちらも自転車が走れない「階段自転車道」だ。
しかしPCRサイクリストたるもの、こんなことでひるんではいられない。担いだり押したりして難所をクリアするのだ。

愛知県田原市戸越町の階段自転車道


静岡県磐田市の浅場海岸近くの階段自転車道。自転車をスムーズに押せるようにスロープが設けられている


静岡県吉田町にも


こんな地下自転車道もある。静岡県牧之原市

由比ワンダーロード

交通標識も路側帯もない、なんとも不思議な道路。
いや、道路じゃなくて空き地を走っているような気分にさせる道路。静岡市清水区の由比から興津へ抜ける区間にある、名付けて「由比ワンダーロード」。
この「ここってホントに道路なの?」感は、ぜひ走って確かめてほしい。

ここがワンダーロードへの入り口


なんだか高速道路と国道の間にできちゃった空き地、って感じの道。標識や路側帯がないのは警察による規制がされていないから。規制されてないってことは警察的には道路と認識してない、ってことらしい。

歩道橋自転車道

太平洋岸自転車道は歩道橋もガンガン渡る。
静岡県駿河区や三重県熊野市にある歩道橋はルートを通じて珍しい歩道橋自転車道だ。もちろんSNS映えスポット。

三重県熊野市の歩道橋自転車道。スロープがあるので自転車を押しやすい

グラベルさんいらっしゃい

ほんの短い区間だが太平洋岸自転車道には未舗装路も存在する。
富士川を渡ったところと三保松原にあるが、こういうのは舗装したりせず、ぜひ「名所」として残してほしい。

静岡県の新富士川橋を渡った先にある短いグラベル区間


静岡市清水区の三保半島にあるグラベル区間。松林を抜ける場所だ

すれ違えない太平洋岸自転車道

こ、ここがホントに日本が世界に誇るナショナルサイクルルートかっ !?と岩田も目を疑った。
静岡県の太平洋岸自転車道にはこんなに細い歩道がルートになっている場所があるんです。静岡県、ワイルドだー。

静岡市駿河区にある国道150号。この場所は和歌山方面行き、銚子行き両方がこの狭い歩道を走る。この写真、ランドナーマニアはトラックの「TOEI」に激しく反応


ここもかなり狭い。静岡市清水区


ここもすごい!静岡県磐田市、太田川を渡ったところ、太平洋岸自転車道狭い道選手権1位かも

砂に書いたラブレター

海岸沿いのサイクリングロードは砂が堆積しやすい。そのためタイミングによってはこんなに砂が堆積していることも。
千葉県、神奈川県、静岡県の海岸沿いではありがちな風景。ここはサハラ砂漠か!?

千葉のサハラと呼ばれる千葉県匝瑳市吉崎浜付近


神奈川の辻堂海岸付近もこんな状態のことが。砂まじりの茅ヶ崎♪どころではない 写真協力:pressports.com

大磯プリンス自転車道

ホテルの敷地内(?)に敷設された矢羽根。ここってホテルの敷地内では!?と誰もが思うおもしろポイント。

こんなとこが太平洋岸自転車道だったなんて。どう見てもホテル内の私道

自転車は横断歩道を渡りましょう

横断歩道も太平洋岸自転車道の一部。道路交通法的には歩行者がいない場合は乗って通れるはすだが、まあ降りて歩くのがいいよね。

静岡県富士市。このあたりはかなりテクニカルにルートが作ってある


静岡県清水区の「由比ワンダーロード」入り口の西倉沢の信号。ここで国道1号をわたる

自転車は右側通行。ええっ!?


写真を反転したわけではない。三重県の紀北町長島にあるダブルルート分岐部分。和歌山川から走ってきて長島トンネル(ルートは歩行者用トンネル)を出ると、こんな路面表示が!

こんな珍スポットを見逃すな!

ほかにもまだまだ楽しいスポットはいっぱい。こんな場所に出合ったら、ぜひ写真におさめて発信しよう!

天国への階段

以前はここに車止めがなく、うっかり突っ込むとそのまま天国行き、ということで名付けられた「天国への階段」。
今はしっかり対策されています。利用者が声を上げることでしっかり改善されていくという、太平洋岸自転車道改善における記念碑的な場所。

和歌山県白浜町の国道42号から自転車歩行者専用道に入る場所にある

出会いの矢羽根

双方向の矢羽根がいちばん接近しているのはどこだ問題。
いくつかの候補があるが、まだ決着はついていない。メジャーを持って計測しながら走る太平洋岸自転車道マニアの出現を待っている!

2021年に全ルートを走破した「和歌山サイクルプロジェクト」が推すのがここ。和歌山県由良町の白崎海洋公園手前にある。写真左がメンバーのGONZAさん、右が野地教弥さん


岩田が推すのはこちら。静岡県吉田町


これもかなりのもの。千葉県匝瑳市。不毛な戦いに終わりはない

ガングロな案内看板

三重県の志摩エリアにだけある、茶色の案内看板。屋外広告物条例による配慮だという。パールロードなどにあるので、見つけたら記念写真を!

同じ志摩市内でも青いものもある。これは三重県志摩市浜島町にある

もうどうにも止まらない

なぜそんなに止まらせたいのか。まったく意味がわからないがゆえに笑ってしまう表示。この「止マレ 一時停止」が連続して登場するからたまらない。「またかよー!」と叫びながらブレーキングするのが正しい走り方。

愛知県田原市には、こんな「止マレ 下車」の指示が多い。きっちり止まって楽しむのが正しい

大磯の関

こんなにも多くの表示を用いながら、それでも旅人を迷わせる、人呼んで「大磯の関」。
作った人は一生懸命ルートを案内しようとしているのだが、それでも初めての人は必ずここで迷ってしまうという呪われた場所。

神奈川県大磯市の大磯港近くにあるワンダースポット。独特の結界が張られた場所で、看板の「太平洋岸自転車道右折してください」という悲痛な呼びかけが、さらに利用者を迷わせる。あなたも事前情報なしで挑戦してみては?

キミの行く道は……そっちじゃない!

矢羽根と路面標示が違う方向を指示する。そんなトラップをかいくぐって走るのが太平洋岸自転車道サバイバー。正しくは路面標示に従う、です。

名所となりつつある静岡市清水区のJR新蒲原駅手前のY字路。路面表示に従い左折が正解です


静岡県沼津市街。この案内看板を見逃したら、矢羽根とともに果てしなく直進できます

キミの行く道は……こっちだ!

矢羽根は自転車の走行空間を明示するもので、進行方向を示すものではない、と国土交通省も明言している(次回の連載にインタビューを掲載)が、どう見ても方向を指示している矢羽根もある。
いいじゃないか、わかりやすければ。

車道から堤防上の道へと力づくで誘導する矢羽根。千葉県旭市


三重県熊野市の鬼ヶ城前にある歩道橋。鬼ヶ城ゴーイングマイウェイ


歩道から車道へ誘導する矢羽根。なぜここで車道に出なければならないのか。矢羽根は黙して語らず

キミの行く道は……どっち?

太平洋岸自転車道にはルートが2方向に分かれる場所がいくつもある。この表示だけではどっちへ行けばいいのかわからない。だからMAPをしっかり確認して走りましょう、ということを教えてくれる案内表示。

三重県の紀北町長島にあるダブルルートの案内看板。どちらに行ってもその先どうなるかはわからない。人生の岐路と同じだ


和歌山県由良町の分岐。危険なトンネルを行くか、険しい山道を選ぶか。自転車人としての生き方を問われる分かれ道

もうどうにでもして!

快調に矢羽根とともに走ってきたのに、急にその矢羽根が信じられなくなるのは沼津市街。どっちへ行けっていうんだ!?

初めてここに出くわしたときは驚いた。もう驚かない。矢羽根なんてそんなもん

太平洋岸自転車道激坂選手権!

ルート上の上り坂(銚子から和歌山方向)のキツさをランキング。個人的な感覚と、データ計測による勾配のキツさで選んだが、距離的にハードな上りも入れてみた。(協力:太平洋岸自転車道をタンデムでつないじゃえプロジェクト)

5位:太地の鯨坂

千葉の銚子にあるドーバーラインの手前「地球の丸く見える展望館」への坂と争って栄えある5位を獲得。
和歌山県太地町の太地港を左手に見ながら上る勾配9%の坂。道の駅たいじの先、くじらのモニュメントやくじらの博物館をすぎて、油断したところに現れる。景色はサイコーだが見る余裕はない。

左手に小さくなっていく太地漁港を見ながらの苦行

4位:潮見坂

道の駅潮見坂をすぎてすぐの、国道1号潮見バイパスの横を走る上り。本来の潮見坂は別の場所にあるが、太平洋岸自転車道サイクリスト的にはここが潮見坂。最初は5%くらいの坂が、最後は瞬間最大勾配12%に!

地元サイクリストが「走るたびにキツいと思う」という潮見坂。じわじわと勾配が増していく

3位:亀石峠

伊豆半島をショートカットするルートにある亀石峠は、海岸から峠まで6.7kmの上り。
6〜7%の上りが続き、瞬間最大勾配は10%。これに匹敵するビッグクライムは三重県尾鷲市の大又トンネルまでの上りだが、勾配で亀石峠の勝ち。

2023年5月にタンデムで太平洋岸自転車道を走破した「太平洋岸自転車道をタンデムでつないじゃえプロジェクト」もここがキツかったと太鼓判

2位:キンチョー坂

和歌山県海南市の大崎漁港からキンチョーでおなじみ大日本除虫菊の和歌山工場までの坂。
とくに上り口の250mは10%超えの激坂。途中下り部分もあるが、たたみかけるように続く上りに心が折れるサイクリスト多数。

上り口からキツいが、その奥に見える坂の勾配に絶叫。岩田は早々にあきらめて押しまくった


キンチョーの工場があるからキンチョー坂

1位:伊良湖のドーナツ坂

勾配でダントツ1位になったのは愛知県の伊良湖岬手前にあるこの坂。
なんと路面がコンクリートのドーナツ(Oリング)模様になっていて、これは全ルートでここだけ。距離は短いが勾配はなんと15%!

アスファルトが流れてしまうような急斜面にコンクリートの舗装がされるんだそうだ


激坂を上り切って見られる絶景

岩田的「映え写真」10選

最後に岩田が撮影した写真のなかから、映えスポット紹介を兼ねて10カット選んでみた。撮影はすべてスマホで、走りながら適当に撮ったものや立ち寄り先で撮ってもらったもの。
天候や時間帯がよくて偶然撮れたものも多いが、太平洋岸自転車道には映えスポットが多いので、ぜひカッコいい写真をねらってみてほしい。


和歌山県串本町の橋杭岩。有名なスポットだが、この写真は道の駅駐車場の先を左に入ったところで撮れる。ほんとうは岩に朝日が当たる早朝がキレイ


愛知県田原市赤羽根町の太平洋ロングビーチに下りていく坂道。通称アカフォルニア(赤羽根のカリフォルニア)


静岡県の菊川にかかる自転車歩行者専用道の橋、潮騒橋。ここで走り写真を撮るとバックに海と風力発電の風車が入ってキレイ


静岡県伊豆市の土肥港。こういう夕暮れの写真は天気とタイミングが合えばどこでも撮れる


和歌山県すさみ町にあるFRONT110は元警察署を改装した観光案内施設。昔使われていた留置場などが残されていて、記念撮影できる


愛知県田原市の自転車歩行者専用道沿いにあった、ビーチハウスか何かの残骸。なぜか雰囲気がある


三重県鳥羽市。生浦湾越しにパールロードの入り口である麻生の浦大橋を望む


静岡県伊東市で見かけた温泉の巨大看板。怖いほどの迫力


三重県鳥羽市の大王埼灯台。ルート上にはカッコいい灯台がたくさんあるので、それを巡るのもおすすめ


静岡市清水区の三保半島にある清水三保海浜公園から見た富士山。光学望遠で画質が荒いが、うまく望遠系のレンズを使えば富士山を大きく入れられる。天気がよければもっとキレイだったろう

次回最終回!

ついに国土交通省へ乗り込む!担当者に「ホントのとこ」を直撃インタビュー

太平洋岸自転車道実走調査⑳ 国土交通省担当者に直撃インタビュー!
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執筆:岩田淳雄

愛知県出身、千葉県在住。
自転車雑誌「サイクルスポーツ 」「バイシクルクラブ」の編集長を歴任。現在は「ペダルプッシャー」を主宰し、サイクリングの啓発活動を展開しています。
https://pedalpusher.jp/

※写真・取材協力:太平洋岸自転車道をタンデムでつないじゃえプロジェクト

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